物流業界入門

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【税関手続きは2030年に完全電子化へ】――本当に問われるのは、点ではなく「面」の再接続です

政府は、2030年をめどに空港での税関手続きを完全電子化する方針を示しました。

現在もスマートフォンなどを利用した電子申告は利用できますが、今後は紙による申告を廃止して完全電子化へ移行。訪日外国人6,000万人目標に伴う入国手続きの円滑化や、急増する航空貨物への対応を急群考えです。さらに、大規模空港には新たな検査センターを整備し、「厳格な税関検査」と「物流のスピード」を両立させる体制づくりを進めるとしています。

人の流れも、モノの流れも今後さらに増加することを考えれば、この取り組みは避けて通れない政策と言えるでしょう。

しかし、私は「電子化=物流改革」という単純な話ではないと考えています。


■ デジタル化とは「紙をスマホに置き換えること」ではない

今回のニュースを見て、私は非常に前向きな取り組みだと感じると同時に、現在の運用にある「ある違和感」を思い出しました。

実は現在でも「Visit Japan Web」を利用すれば税関申告は電子化できます。しかし、実際の空港での流れを見ると、利用者は事前にスマートフォンで必要事項を入力しているにもかかわらず、日本へ到着すると今度は専用端末でアプリのQRコードとパスポートを読み込ませ、その後に自動ゲートへ進むという流れになっています。

本人確認やデータ照合という目的があることは理解できます。しかし利用者の立場からすると、「アプリで全部入力したのに、なぜまた端末に並んで手順を踏まなければならないのだろう」という疑問が生まれるのも自然です。

デジタル化とは、本来であれば手続きや手数を減らすためのものです。ところが現状では、紙を電子に置き換えただけで、新しい手順(端末操作)が追加されてしまっている。

システムを導入した結果、かえって業務が複雑化する。これは空港の入国手続きに限らず、日本の物流DXが各地で引き起こしている「接続不良」の典型例です。


■ 実際の現場で起きている、システム同士の「二重入力」

航空貨物は、税関だけで完結する仕事ではありません。一つの貨物に対して、荷主、フォワーダー、通関業者、航空会社、グランドハンドリング会社、上屋会社、倉庫会社、トラック運送会社など、膨大なプレイヤーがバトンを繋いでいます。

つまり、税関のシステムだけが最新の「点」になっても、それを取り囲むプレイヤー間のシステムがバラバラでは、本当の意味で物流は速くなりません。

事実、現在の物流現場ではそれぞれの会社が独自のシステムを導入しているため、

  • 同じ貨物情報を何度も手入力する
  • 別システムへデータを転記する
  • CSVを手動で取り込む
  • 結局、確認のために紙を印刷し、FAXを送る

といった二重、三重の作業が珍しくありません。これは「電子化されていない」のではなく、「電子化されたシステム同士が繋がっていない」という構造のバグです。

近年、物流業界でもスマートフォンによる受付システムや配送管理アプリなど、便利なツールは増えました。しかし現場からは「会社ごとに違うアプリを使わされてログイン管理だけでも大変」「アプリが増えすぎて操作が複雑」という悲鳴も上がっています。

DXの本質とは、新しいアプリを増やすことではありません。バラバラに分断されたシステム同士を円滑に連携させ、現場の作業をシンプルにし、情報が止まらず流れ続ける「再接続」を行うことのはずです。


■ 人手不足はデジタルだけでは解決できない

航空貨物は今後さらに増加すると予想されていますが、現場ではフォークリフトオペレーター、グランドハンドリングスタッフ、通関士、大型トラックドライバーなど、あらゆる職種で深刻な人材不足が続いています。

デジタル化や電子化は作業効率を高める大きな武器になりますが、人を完全に置き換えるものではありません。最後に安全を確認するのも、貨物を積み付けるのも、フォークリフトを操作するのも、最終的には「人」だからです。

だからこそ、DXと「人材への投資(教育)」は車の両輪で進める必要があります。

近年、先進的な物流企業では、自社でフォークリフト教習所を立ち上げて自ら人を育てる動きが出始めています。これは単なる資格取得の支援ではなく、デジタル化された仕組みを現場で最大限に使いこなせる「強い人材」を内製化するための投資です。

教育によって現場の底力を上げ、デジタルによってその力を組織の資産に変える。この両方が揃って初めて、日本の物流は持続的な成長が可能になります。


■ 日本の物流は「点」ではなく「面」で改革する時代へ

今回の税関手続き完全電子化は、日本の物流にとって大きな一歩です。しかし、本当に目指すべき姿は、税関という一つの「点」だけが効率化されることではありません。

実務目線で考えるなら、たとえばVisit Japan Webで事前申告を済ませた利用者はそのままノンストップで税関ゲートへ進めるようにし、アプリ未利用の人のみを通港内の端末へ誘導する。このように入口を分けるだけでも、安全性を維持したまま、到着後の混雑は劇的に緩和できるはずです。

物流も全く同じです。荷主から配送先まで、すべてのプレイヤーがデータで繋がり、現場の実務に即したシンプルなシステム設計が進んでこそ、本当の意味での構造改革と言えます。

システムを増やすだけの「頑張る物流」から、現場が本当に使いやすい「設計された物流」へ。

今回のニュースを単なる行政手続きの電子化として終わらせず、利用者・事業者・行政が一体となって、日本の物流全体の接続を面で再設計する契機とすることを期待しています。