【脱炭素×輸送品質】三井化学と山九がバイオアドブルー導入、物流現場に広がる環境対応の新潮流
2025年10月、三井化学と山九が連携し、化学製品輸送用タンクローリー車に「バイオアドブルー(尿素水)」の使用を開始しました。
この取り組みは、環境負荷低減と輸送品質の両立を目指すものであり、物流現場における脱炭素対応の新たな一手として注目されています。
バイオアドブルーとは何か
バイオアドブルーは、従来の石油由来の尿素水に代わり、バイオマス由来の原料を活用した環境配慮型の尿素水です。
ディーゼル車の排ガス中のNOx(窒素酸化物)を分解するSCR(選択触媒還元)システムに使用されます。
特徴:
- 原料にバイオマス由来成分を使用
- CO₂排出量の削減に貢献
- 従来のアドブルーと同等の性能を保持
三井化学は「マスバランス方式」により、バイオ由来成分の配分を管理し、環境価値を製品に反映しています。
導入の背景と目的
山九は、化学製品輸送において「安全・品質・環境」の三軸を重視しており、今回の導入は以下の目的に基づいています。
この取り組みは、単なる燃料変更ではなく「輸送品質と環境価値の両立」を目指す戦略的な選択です。
意外な論点①:化学品輸送だからこそ環境対応が求められる
化学製品輸送は、環境負荷が高いと見なされがちです。
そのため、輸送手段や資材における環境配慮は、荷主企業のCSR・ESG評価に直結します。
注目ポイント:
- 荷主企業の調達基準に「環境対応」が含まれるケースが増加
- グリーン物流認証取得のための加点要素になる可能性
- 化学品業界全体での「脱炭素競争」が始まっている
山九のような輸送事業者が先行して対応することで、荷主との関係強化や新規案件獲得にもつながります。
意外な論点②:バイオアドブルーは「物流ブランディング」にも活用可能
環境対応は、単なる義務ではなく「企業ブランディング」の一部として活用できます。
特に物流業界では、目に見えにくい価値をどう伝えるかが課題となります。
活用例:
- トラック車体に「バイオアドブルー使用車両」ステッカーを掲示
- 荷主向け提案資料に環境対応項目を追加
- 採用活動で「環境に配慮した物流企業」として訴求
物流企業が「環境価値を伝える力」を持つことで、荷主・求職者・地域社会との関係性が強化されます。
現場への影響と対応策
バイオアドブルーの導入は、現場にも一定の対応が求められます。
必要な対応:
- 給水設備の確認と対応(従来品との互換性)
- ドライバーへの教育(使用目的・メリット)
- メンテナンス体制の整備(SCRシステムの保守)
導入初期はコストや手間がかかるものの、長期的には環境規制対応や企業評価の向上につながります。
今後の展望:物流業界全体への波及効果
三井化学と山九の取り組みは、以下のような波及効果を生む可能性があります。
- 他の輸送事業者による導入検討の加速
- 荷主企業による「環境対応要件」の明文化
- バイオ燃料・EV・水素車両との連携による脱炭素戦略の拡張
特に「マスバランス方式」による環境価値の可視化は、今後の物流契約や認証制度において重要な要素となるでしょう。
まとめ:環境対応は「品質戦略」の一部である
物流業界における環境対応は、単なる規制対応ではなく「品質戦略」「企業価値向上」「荷主との信頼構築」に直結します。
三井化学と山九のバイオアドブルー導入は、こうした価値を体現する先進事例であり、今後の物流戦略において参考となる取り組みです。
まずは、自社の輸送手段や資材における環境対応状況を棚卸しし、荷主・地域・従業員に向けた「環境価値の見える化」から始めてみてはいかがでしょうか。