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【国際物流の新ルート】中央アジア経由の実証実験で見えた課題と可能性

【国際物流の新ルート】中央アジア経由の実証実験で見えた課題と可能性

2025年10月、国土交通省は「国際物流代替輸送ルート実証実験」の結果を公表しました。
この取り組みは、アジア〜欧州間の輸送において、従来の中国経由ルートに代わる選択肢として、中央アジアを経由する鉄道・陸路ルートの有効性を検証するものです。


実証実験の背景と目的

近年、地政学リスクや国際情勢の変化により、既存の国際物流ルートに不安定要素が増しています。特に中国経由の輸送ルートは、政治的・制度的な制約を受けやすく、企業のサプライチェーンに影響を与えるケースも増加。

そこで国交省は、以下の目的で代替ルートの実証を開始しました:

  • 中央アジア経由の輸送ルートの実用性検証
  • 輸送コスト・所要時間・制度対応の課題抽出
  • 荷主・物流企業・行政の連携体制構築

実証ルートの概要

今回の実証では、以下のルートが対象となりました:

日本 → 中国 → カザフスタンウズベキスタン → トルコ → 欧州各国

このルートは、鉄道とトラック輸送を組み合わせた複合輸送で構成され、従来の海上輸送に比べてリードタイム短縮が期待される一方、制度面やインフラ整備の課題も多く残されています。


実証結果から見えた課題

国交省の報告によると、以下のような課題が浮き彫りになりました:

1. コスト面の課題

  • 複数国を経由するため、関税・通関費用が高騰
  • インフラ未整備地域での積み替えコストが発生
  • 輸送量が少ないため、スケールメリットが出にくい

2. 時間面の課題

  • 国境通過時の検査・手続きに時間がかかる
  • 一部区間で鉄道の接続が不安定
  • トラック輸送区間で渋滞・道路事情の影響あり

3. 制度面の課題

  • 各国の通関制度が統一されておらず、書類対応が煩雑
  • 輸送中の品質管理(温度・湿度)に関する基準が不明確
  • 保険・補償制度の整備が不十分

荷主・物流企業の反応

実証に参加した企業からは、以下のような声が寄せられています:

  • 「輸送時間は短縮できたが、コストが割高だった」
  • 「制度面の不確実性がネック。安定運用には時間がかかる」
  • 地政学リスクを回避できるルートとしては有望」

一方で、将来的な活用に向けて、以下のような期待も高まっています:

  • 中央アジア諸国との協定による制度統一
  • インフラ整備による輸送効率の向上
  • 複数企業による共同輸送でコスト分散

今後の展望と国交省の方針

国交省は、今回の実証結果を踏まえ、以下のような方針を打ち出しています:

  • 中央アジア諸国との物流協定の締結を推進
  • 輸送インフラ整備への支援策を検討
  • 荷主・物流企業との情報共有会合を継続開催
  • 複合輸送における品質管理基準の策定

また、2026年度以降には、第二フェーズの実証実験も予定されており、より実用的なルート構築に向けた取り組みが加速する見込みです。


まとめ

中央アジア経由の国際物流ルートは、地政学リスクを回避し、輸送の多元化を実現する可能性を秘めています。
今回の実証実験では多くの課題が明らかになりましたが、それは同時に改善の余地があることを意味します。

物流業界にとって、安定・効率・持続可能性を兼ね備えた国際輸送ルートの確立は、今後の競争力強化に直結するテーマです。
国交省の取り組みと民間企業の連携が、次世代の国際物流ネットワークを形作る鍵となるでしょう。

物流は国境を越えて進化する。今こそ、新たな道を切り拓く時。