【物流×スマートスーツ】作業負荷を軽減する新技術とは？現場導入の実態と効果を徹底解説
はじめに──物流現場の「腰痛リスク」と「人手不足」に挑む
物流業界では、EC需要の拡大や少子高齢化により、現場作業者の身体的負担と人材確保の難しさが深刻化しています。
特に、荷役作業における「腰への負担」は、労災や離職の大きな要因となっており、企業にとっても無視できない経営課題です。
そこで注目されているのが、スマートスーツ（アシストスーツ）の導入。
本記事では、物流現場におけるスマートスーツの導入事例・効果・選定ポイントを、現場目線で深掘り解説します。
スマートスーツとは？──物流現場における役割と種類
スマートスーツとは、作業者の身体的負担を軽減するために開発された装着型の補助機器です。
物流現場では、以下のような用途で活用されています。
- 重量物の持ち上げ・運搬時の腰部サポート
- 長時間の立ち作業・中腰姿勢の筋肉疲労軽減
- 高齢作業者や女性作業員の作業継続支援
主なタイプ
| タイプ | 特徴 | 電源 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 空気圧式 | 筋力補助が強力 | 必要 | 重量物の持ち上げ |
| サポーター式 | 軽量・着脱が簡単 | 不要 | 中腰・立ち作業 |
| 電動モーター式 | 精密制御が可能 | 必要 | 医療・介護現場など |
導入事例①：日本ロジテムの「マッスルスーツSoft-Power」導入【出典：RoboStep】
日本ロジテムは、東京理科大学発スタートアップ「イノフィス」が開発したマッスルスーツSoft-Powerを、5拠点に80台導入。
EC需要の拡大により増加した荷役作業の負担軽減を目的としています。
導入背景
- 荷主企業からの業務委託による仕分け・出荷作業が中心
- パレット積み替えや台車からの荷下ろしなど、腰に負担が集中
- 少子高齢化により若手確保が困難、ベテラン作業者の負荷が増大
効果
- 腰への負担を最大35％軽減
- 作業者の離職防止・労災リスク低減
- 作業環境改善による人材定着率向上
導入事例②：日本通運の相模原拠点での活用【出典：ロボスタ】
日本通運では、相模原オペレーション課にて電源不要のサポーター型アシストスーツを導入。
こちらもイノフィス製の「Soft-Power」を採用し、腰部の筋力補完を目的としています。
現場課題
- ICTやロボット導入が進む一方で、人力作業が依然として多い
- 段ボール開封・パレット結束など、細かな作業が残存
- 腰痛による労災・離職リスクが高まっていた
評価ポイント
- 電源不要で軽量、導入コストが低い
- 作業者の装着負担が少ない
- 腰痛予防としての効果が高い
定量評価：多摩地域での実証実験【出典：多摩イノベーション】
多摩地域の倉庫・配送センターでは、イノフィスの「Soft-Power」を用いた定量的な効果検証が実施されました。
実証結果
- 筋電系センサーによる測定で、最大60％の腰負荷軽減
- ABテストにより、作業時間が平均6％短縮
- 作業者の70％以上が「今後も使用したい」と回答
スマートスーツ導入のメリットと導入手順
メリット
- 作業者の身体的負担軽減
- 労災リスクの低減
- 人材定着率の向上
- 採用広報での差別化（福利厚生アピール）
導入手順
- 現場課題の明確化（腰痛・離職・作業効率など）
- 対象作業の選定（荷下ろし・仕分け・積み替えなど）
- 製品比較・選定（電源有無・重量・補助力）
- 試験導入・評価（ABテスト・作業者アンケート）
- 本格導入・教育訓練（装着指導・メンテナンス体制）
導入時の注意点とコスト感
注意点
- 装着に慣れるまでの教育が必要
- 作業内容によっては効果が限定的
- メンテナンス・衛生管理の体制整備
コスト感（参考）
| 製品名 | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| マッスルスーツSoft-Power | 約15〜25万円／台 | 電源不要・軽量 |
| 電動アシストスーツ | 約30〜50万円／台 | 精密制御・高補助力 |
まとめ──スマートスーツは「人材確保」と「現場改善」の両輪
スマートスーツは、単なる作業補助機器ではなく、人材確保・労災防止・作業効率化を同時に実現する戦略的ツールです。
✅ 腰痛・離職リスクの軽減
✅ 採用広報での差別化
✅ 作業効率の定量的改善
物流現場の未来を支える「スマートスーツ導入」は、現場改善と経営戦略の交差点にあるといえるでしょう。
