【物流共同輸送の最前線】ロート製薬・ミルボン・ヘイリオンが3社共同輸送を開始|CO₂削減と積載率向上の両立へ
はじめに──「競争」から「協調」へ。物流の新たな潮流
2025年10月8日、ロート製薬・ミルボン・ヘイリオンジャパンの3社が、共同輸送の本格運用を開始したと発表しました。
東陽倉庫が物流オペレーションを担い、ルート共通性のある製品を混載輸送することで、積載率向上とCO₂排出削減を同時に実現する取り組みです。
✅ 本記事では、この共同輸送プロジェクトの背景・仕組み・効果・今後の展望を、物流業界の視点から深掘り解説します。
1. 背景──なぜ今、共同輸送なのか?
1-1. 物流2024年問題の本格化
- トラックドライバーの時間外労働規制が強化
- 輸送能力の不足=“運べないリスク”が顕在化
- 荷主企業にも「物流確保責任」が問われる時代へ
1-2. ESG・GX対応の加速
- CO₂排出量の可視化と削減が企業評価に直結
- Scope3(間接排出)への対応が求められる中、物流領域の脱炭素化が急務
1-3. 積載率の低迷とコスト高騰
- 平均積載率は40%台にとどまり、空気を運ぶ非効率
- 燃料費・人件費の上昇で、物流コストの圧迫が続く
2. 共同輸送の仕組み──3社の製品を“混載”で運ぶ
2-1. 参加企業と製品特性
| 企業名 | 主な製品 | 特徴 |
|---|---|---|
| ロート製薬 | 医薬品・化粧品 | 常温・軽量・高頻度出荷 |
| ミルボン | 美容室向けヘアケア製品 | 小口多品種・定期配送 |
| ヘイリオン | オーラルケア・OTC医薬品 | 全国展開・販路共通性あり |
2-2. 東陽倉庫の役割
- 3社の製品を同一倉庫で集約・仕分け
- 配送先(ドラッグストア・量販店)ごとに混載ピッキング
- 共通ルートでの積載率最大化を実現
3. 物流効果──CO₂削減・積載率向上・コスト最適化
3-1. 定量効果(初期試算)
| 指標 | Before(単独輸送) | After(共同輸送) | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 積載率 | 約45% | 約80% | +35pt |
| CO₂排出量 | 100% | 約65% | ▲35% |
| 配送コスト | 100% | 約75% | ▲25% |
3-2. 定性効果
- ドライバー不足リスクの緩和
- 納品先との関係強化(納品回数削減)
- ESGレポートでの開示価値向上
4. 成功の鍵──“競合”ではなく“共創”のマインド
4-1. 情報共有と信頼構築
- 製品情報・配送ルート・納品条件の相互開示
- 東陽倉庫が中立的なオペレーターとして調整役を担う
4-2. システム連携と可視化
- WMS・TMSの連携により、在庫・配送状況をリアルタイム共有
- KPI(積載率・CO₂排出量)を共通指標として管理
4-3. 契約設計とコスト配分
- 配送コストは積載体積・重量・配送頻度に応じて按分
- 契約は3社+倉庫会社の四者協定型
5. 今後の展望──“共同輸送2.0”への進化
5-1. 参加企業の拡大
- 同業他社・異業種(食品・日用品)との連携も視野に
- 「物流連携プラットフォーム」構想の実現へ
5-2. モーダルシフトとの融合
- 幹線輸送は鉄道・船舶へ、ラストワンマイルは共同配送
- CO₂削減とBCP強化を両立
5-3. GX・DXとの統合
- CO₂排出量の自動計測・可視化ツール導入
- AIによる積載率最適化・配送ルート自動生成
まとめ──物流の未来は「共創」にあり
✅ 共同輸送は、積載率・CO₂・コストの三方良しを実現する戦略
✅ 成功には、信頼・情報共有・中立的オペレーターが不可欠
✅ 今後は、GX・DXと融合した“共同輸送2.0”が主流に
物流は「競争」から「共創」へ。
この取り組みは、持続可能な物流ネットワーク構築のモデルケースとなるでしょう。