【物流BCPの新潮流】日本通運×SMCが国際輸送協定を締結!現場・戦略・DXの視点で読み解く
2025年10月17日、日本通運(NXグループ)は、FA機器大手のSMC株式会社と「国際輸送BCPサービス」に関する協定を締結したと発表しました。物流業界におけるBCP(事業継続計画)の制度化が進む中、今回の協定はその象徴的な事例です。
本記事では、物流現場・戦略・DX・サステナビリティの観点から、この協定の本質を深掘りします。
なぜ今、物流BCPなのか?
サプライチェーンの脆弱性が顕在化
近年、地震・台風・パンデミック・地政学リスクなど、サプライチェーンを揺るがす事象が頻発しています。特に国際物流においては、以下のような課題が浮き彫りになっています:
- 輸送ルートの遮断:港湾閉鎖・空港制限・通関遅延など
- 納期遵守の困難化:ジャストインタイム方式の崩壊リスク
- 在庫の偏在:一極集中型の拠点運営がリスクに
BCPは、これらのリスクに備え、「止めない物流」を設計するための戦略的手段です。
SMCの事業構造と物流依存
SMCは、空気圧制御機器を中心としたFA機器の世界的メーカー。製品は自動車・半導体・医療機器など、納期厳守が求められる業界に供給されており、物流の安定性が企業の信頼性に直結しています。
- グローバル拠点:製造・販売拠点を世界中に展開
- 高精度・高頻度輸送:部品・製品の国際輸送が日常的
- BCPの必要性:災害時でも供給責任を果たす体制が不可欠
協定の中身を現場目線で読み解く
1. 輸送ルートの多元化
- 海上・航空・鉄道を組み合わせた代替ルート設計
- 災害時の迂回ルートや緊急輸送手段の事前確保
- 輸送シミュレーションによるリスク評価
👉 現場の示唆:Plan Bだけでなく、Plan C・Dまでの輸送設計が求められる。特に港湾・空港の閉鎖リスクに備えた陸路・鉄道の活用が鍵。
2. 情報連携と可視化
- リアルタイムな輸送状況の共有
- 在庫・通関・スケジュールの見える化
- IoT・AIによる予測型物流管理
👉 現場の示唆:「見える化」は前提条件。重要なのは“予測精度”と“判断スピード”。現場が迷わず動ける情報設計がBCPの成否を分ける。
3. 緊急対応体制の構築
👉 現場の示唆:「非常時こそ平常運転」。そのためには、事前の訓練とプロトコル整備が不可欠。現場の“初動力”が問われる。
業界へのインパクト
BCP協定のモデル化
この協定は、物流BCPを企業間で制度化する先進事例。今後、医療・食品・半導体などの業界でも標準化が進む可能性があります。
- 医薬品:命に関わる製品の安定供給
- 食品:賞味期限・温度管理が厳しい商品群
- 半導体:供給不足が世界経済に影響する重要部品
DXとの融合
AIによるルート最適化、IoTによる温度管理など、DXがBCP強化に直結。物流現場のデジタル化が「守り」から「攻め」へと進化しています。
- 予測型輸送:天候・災害・混雑を事前に回避
- 自動化支援:ロボティクス・AGVによる拠点運営の安定化
ESG・サステナビリティ対応
鉄道・内航船など環境負荷の少ない輸送手段へのシフトも含まれており、BCPとサステナビリティの両立が求められる時代に合致しています。
編集者の視点:物流は「止めない力」が価値になる
物流は「運ぶ力」だけでなく、「止めない力」が問われる時代に突入しました。BCPはその象徴であり、物流現場の戦略性・柔軟性・連携力が企業価値を左右する。
今回の協定は、物流が単なる裏方ではなく、企業の競争力を支える「戦略部門」であることを示す好例です。
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出典:日本海事新聞