🧭 はじめに:“言及なし”は必ずしも無視ではない
高市総理の所信表明で「物流」が明示されなかった。業界では不安の声もある一方で、これを前向きに解釈すると「政策の設計段階が進んでいる」「実行に向けた慎重な準備だ」と読むことができます。
今回はその肯定的な理由を取り上げ整理し、現場が今すぐ取り組めるアクションまで掘り下げます。
■ ポイント要約(先に結論)
- 言及されなかった=政策が“裏側で準備中”の可能性が高い。
- 政治的演説は「メッセージ優先」なので、実務的・技術的なテーマは後工程で公式化される。
- 現場は「準備期」に入っていると捉え、原価の見える化や契約整備を急ぐべき。
① 戦略的メッセージ設計:演説は“旗振り”で、詳細は別枠で出す習慣
■ なぜ言わないのか(ポジティブ解釈)
- 所信表明は国民・市場に向けた大きな旗であり、細部(技術的・業務的)を並べても伝わりにくい。
- 物流は制度設計や業界調整が複雑で、演説で即断できるような簡単なテーマではない。
- よって「演説外で法案・ガイドライン・実証事業を進める」ほうが、現場にとって実効性が高い。
■ 何を意味するか
- 政策は“順番を守って”出る。まずは概念(GX、DX、成長)を掲げ、その後に物流向けの実務パッケージが公表される流れ。
② 合意形成と利害調整の時間を確保している
■ ポジティブな読み:対立回避ではなく「実効性の担保」
- 物流には荷主・運送事業者・倉庫・運輸業界団体など多様な利害関係者がいる。
- 演説で強く打ち出すと反発や混乱を招く恐れがあるため、まずは関係者との協議→実証→段階的導入が選ばれている。
■ 現場への示唆
- 合意形成が進むということは、事前に適用基準や補助策が整備される可能性が高い=準備すれば恩恵も受けやすい。
③ 技術的・データ準備の必要性(見える化の前提)
■ ポジティブな読み:制度はデータを重視する方向
- 「適正原価」などの制度は、正確なコストデータがないと運用できない。
- 国はまずデータ基盤や算定手法、支援ツールを整備した上で制度化することを選んでいる可能性が高い。
■ 今できる現場アクション
- 自社で「配送1件あたりの原価項目」を洗い出し、簡易的な原価表を作る。
- ITなしでも良いのでCSVでデータを貯めておく(燃料、人件、車両、倉庫、待機時間など)。
④ 法制度の段階的導入モデルを採るため(実証→本導入)
■ ポジティブな読み:実証フェーズの確保
- 多くの政策は実証実験→評価→本導入で進む。いきなり全体に適用するより、まず地域・業種で試す方がリスクが小さい。
- 所信表明に触れないのは「まずは実務ベースで制度の有効性を確かめる」狙いとも読めます。
■ 現場への利点
⑤ メッセージ優先の政治運営——“政治の言葉”と“政策の肉付け”は別物
■ ポジティブな読み:演説は国民に安心感を与え、実行は役所が担う
- 演説で細々した制度を語るよりも、大きな方向性を示す方が政治効果が高い。細部は官僚・省庁が政策化するため、現場は省庁の動きを注視すべきです。
■ チェックポイント(現場が見るべき)
具体的に今やるべき“現場の準備リスト”――短期(今〜3ヶ月)/中期(3〜12ヶ月)
短期(今すぐ)
- ■ 原価の簡易算出シートを作る(1配送あたり)
- ■ 契約書の保存・交渉履歴を電子化(メール・PDF管理)
- ■ 社内で「DX・コスト検討」担当を1名指名
中期(3〜12ヶ月)
■ 最後に:前向きに読むということは“先行者利益”を取ること
所信表明で物流が触れられなかったのは、政策が裏側で設計中であるポジティブなシグナルとも捉えられます。
要は「知っているか、準備しているか」が差を生みます。今、地道にデータと交渉履歴を整えておく事業者こそ、次の制度で優位に立てます。
ーー政治の言葉を待つだけではなく、現場から“準備”していきましょう。