群馬〜北海道間で重軽混載の共同輸送が始動──物流2024年問題への実践的解答
2025年10月、日本通運が主導する形で、伊藤園・森永製菓との三社による共同輸送がスタートしました。対象区間は群馬県から北海道までです。異業種間での「重軽混載」という輸送方式を採用し、積載効率の最大化と環境負荷の低減を両立する取り組みとなっています。
この事例は、物流2024年問題に直面する業界にとって、単なる効率化を超えた「構造的な解決策」として注目されています。
物流2024年問題──構造的課題の顕在化
2024年4月に施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されました。これにより、以下のような課題が浮き彫りになっています。
- 長距離輸送の運行回数が減少
- 納期遅延やコスト増加
- ドライバーの確保難・離職率の上昇
- 積載率の低下による非効率化
特に、群馬〜北海道間のような遠距離輸送では、従来の単品大量輸送では荷室の空間と重量制限のバランスが取れず、空積み・偏積み・非効率な運行が常態化していました。
重軽混載とは?──積載効率の再定義
重軽混載とは、重量物(例:飲料)と軽量物(例:菓子)を同一便で輸送する方式です。今回の事例では、以下のような工夫が施されています。
- 伊藤園の飲料をトラックの下段に積載(重量物のため2段積み不可)
- 森永製菓の菓子類を上段の空きスペースに積載(軽量物)
- 荷台容積の隙間を埋めることで積載率を最大化
- 日本通運が群馬県内の出荷倉庫を集約し、積地を1カ所に統一
このような積載設計は、単なる物理的な工夫にとどまらず、物流設計・運行管理・荷役効率の最適化を含む高度なオペレーションとなっています。
定量的な成果とインパクト
| 指標 | 従来 | 重軽混載後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| トラック使用台数 | 100便 | 約76便 | 約24%削減 |
| CO₂排出量 | 100t | 約94t | 約6%削減 |
| 積載率 | 約65% | 約90% | +25pt向上 |
| ドライバー拘束時間 | 平均12時間 | 平均9時間 | 約25%短縮 |
これらの数値は、単なる効率化ではなく、持続可能な物流体制の構築に向けた重要な指標といえます。
GX(グリーントランスフォーメーション)との接続
この取り組みは、GX(グリーントランスフォーメーション)にも直結しています。CO₂排出量の削減はもちろん、以下のような環境対応が進んでいます。
- 輸送回数の削減による燃料消費量の抑制
- 荷室設計の最適化による空積み率の低減
- 倉庫集約による電力・人員の効率化
GXは単なる環境施策ではなく、企業価値・ブランド力・採用力の向上にもつながります。物流現場におけるGXの実装事例として、この重軽混載は非常に示唆に富んでいます。
異業種連携の可能性──サプライチェーン再構築へ
伊藤園と森永製菓は、業種も製品特性も異なります。しかし、共通するのは「全国規模の配送網」と「群馬県に拠点を持つ」という点です。これにより、以下のような連携が可能となりました。
- 出荷拠点の統一による積地の効率化
- 荷物特性の補完関係(重い×軽い)
- 輸送先の共通性(北海道方面)
このような異業種連携は、今後の物流戦略において重要な選択肢となります。医薬品×日用品、アパレル×雑貨、食品×資材など、組み合わせ次第で無限の可能性が広がります。
今後の展望と課題
展望
- 他地域・他業種への展開(例:医薬品×日用品)
- AIによる積載設計の最適化
- サプライチェーン全体でのCO₂削減モデル構築
課題
- 積載設計の標準化と教育
- 荷主間の調整コスト
- 法制度との整合性(積載重量・安全基準)
まとめ:物流の未来を創る「重軽混載」という選択肢
この共同輸送は、物流業界が直面する2024年問題に対する「現場発の解答」であり、GX・DX・人材戦略・業界連携といった複数のテーマを内包しています。
こうした事例を単なるニュースとして消費するのではなく、現場改善・戦略設計・業界変革の素材として活用する視点が求められます。
今後も、物流の未来を創る「選択肢」として、重軽混載のような実践的な取り組みに注目していきたいと思います。
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