2025年10月、NXホールディングス(NXHD)は立て続けに2つの重要な発表を行いました。
- 東南アジアの生鮮EC企業「SECAI MARCHE」への出資
- 以前の記事で取り上げた、台湾・桃園市における最新鋭物流拠点「NEXT8倉庫」の開設
(以前の記事☛ 【東アジア物流戦略】 NXHDが台湾に新倉庫「桃園NEXT8」開設 - 物流業界入門)
一見別々の動きに見えるこれらの施策は、実はアジア全域における食品・生鮮物流網の再構築という大きな戦略の一環です。本記事では、両者の時系列的な関係と戦略的意義を深掘り解説します。
■ 時系列で読み解くNXHDのアジア戦略
| 年月 | 出来事 | 解説 |
|---|---|---|
| 2022年〜2023年 | 東南アジアの生鮮EC市場が急成長 | 中間層の拡大と都市化により、食品のオンライン購入が一般化。物流品質への要求が高まる。 |
| 2024年 | NXHDがASEAN地域でのコールドチェーン強化を構想 | 日本産食品の輸出拡大と現地EC支援を両立する戦略が始動。 |
| 2025年9月 | 台湾・桃園NEXT8倉庫の開所式を実施 | 台湾北部の物流需要に対応する最新鋭拠点。自動化・冷蔵対応を備える。 |
| 2025年10月 | SECAI MARCHEへの出資を発表 | 東南アジアの生鮮EC企業と連携し、現地の食品物流網を共同構築へ。 |
■ 出資先:SECAI MARCHEとは?
- 本社:マレーシア・クアラルンプール
- 事業:産地直送型の生鮮品ECプラットフォーム
- 特徴:農家・漁師と消費者を直接つなぐモデルで、鮮度と価格競争力を両立
- 課題:配送品質のばらつき、温度管理の不安定さ
NXHDはこの企業に出資することで、自社のコールドチェーン技術を現地に展開し、食品流通の高度化を図ります。
■ 桃園NEXT8倉庫の概要と戦略的意義
◆ 基本情報
- 所在地:台湾・桃園市蘆竹區
- 延床面積:13,060㎡(鉄骨造3階建て)
- 設備:
- 自動倉庫(AS/RS)
- AGV(自動搬送ロボット)
- 高床プラットフォーム
- 冷蔵・冷凍対応
- 24時間セキュリティ
◆ 戦略的な立地
この立地により、台湾全土およびアジア域内への迅速な食品配送が可能になります。
■ 両施策の共通点と相乗効果
| 観点 | SECAI MARCHE出資 | 桃園NEXT8倉庫 |
|---|---|---|
| 対象地域 | 東南アジア(マレーシア・シンガポール等) | 台湾北部・アジア域内 |
| 対象商品 | 生鮮食品・農水産物 | 食品・医療・精密部品など |
| 主な課題 | 鮮度保持・配送品質 | 在庫精度・繁忙期対応 |
| NXHDの役割 | コールドチェーン技術の提供 | 自動化・集約による物流効率化 |
| 共通目的 | 食品物流の品質向上とSC最適化 | アジア域内の食品流通網の再構築 |
両者は「現地の需要に応えるラストワンマイル」と「域内をつなぐ中継拠点」という補完関係にあります。
■ アジア食品物流網の再構築とは?
NXHDは、以下の3層構造でアジア食品物流網を再構築しようとしています。
✅ 1. ラストワンマイル:SECAI MARCHEとの連携
- ECプラットフォームと連携し、現地配送品質を向上
- 冷蔵・冷凍配送網の整備
- トレーサビリティ強化(IoT温度管理)
✅ 2. 中継拠点:桃園NEXT8倉庫
- 台湾北部の集約拠点として機能
- 日本からの輸出品の一時保管・仕分け
- アジア各国への再配送ハブ
✅ 3. 上流支援:日本国内の産地物流支援
- 日本の農水産品の輸出支援
- 産地から港・空港までのコールドチェーン整備
- 輸出入通関の効率化
■ 今後の展望と注目ポイント
◆ ASEAN全域への展開
◆ 日本産品の輸出拡大
- 日本政府の「農林水産物輸出5兆円目標」に貢献
- 地場ECとの連携で販路拡大
◆ サステナブル物流の推進
■ まとめ:物流は「つなぐ力」で進化する
NXHDの今回の2つの動きは、単なる設備投資や資本提携ではありません。
それぞれが「現地の需要」と「域内の流通」をつなぐ役割を担い、アジア全体の食品物流を再設計する壮大なプロジェクトの一環です。
物流は単なるモノの移動ではなく、産地と食卓、企業と消費者、地域と地域をつなぐ社会インフラ。その進化の最前線が、今まさにアジアで動き出しています。
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