物流業界入門

物流業界の基礎から最新トレンドまで、現場経験を活かしてわかりやすく解説!

【OEMで切り拓く】ユニ・チャーム海外戦略と物流の未来

🌏 はじめに:物流は“国境を越える”時代へ

日本の物流業界は、いま大きな転換期を迎えています。
人手不足、制度改革、燃料費の高騰…。
これらの課題に加えて、「グローバル物流」という新たな地殻変動が起きています。

その象徴ともいえるのが、ユニ・チャームの海外展開です。
アジア・中東・アフリカなど、すでに80カ国以上に拠点を持つ同社は、単なる輸出企業ではありません。
生産・物流・販売のすべてを“現地で完結”させるビジネスモデルを構築してきました。

そして近年、この流れの中で注目されているのが OEM(他社ブランド製造) です。
この仕組みは製造だけでなく、物流の在り方そのものを変えつつあります。


🧩 OEMとは何か──「ブランドの裏側で動く物流」

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、他社ブランド製品を自社で製造する仕組みのことです。
つまり、ブランドはA社、実際の製造はB社という関係が成り立ちます。

一見すると製造業の話のようですが、実は物流がOEMの成否を左右する最重要要素です。

原材料の調達から、製造工場への搬入、完成品の保管、各国への配送に至るまで、
全ての段階をスムーズに連携させる必要があります。
つまりOEMの拡大とは、物流ネットワークの拡大そのものなのです。


🧭 ユニ・チャームの海外展開とOEMの関係性

ユニ・チャームは「ムーニー」や「ソフィ」などのブランドで知られていますが、
海外ではOEMを通じて現地ブランド製品の製造も手掛けています。
このOEM供給体制こそが、同社のグローバル物流を支える大きな柱となっています。

① 「輸出」から「現地OEM」への転換

かつては日本国内で製造した製品を輸出するスタイルでしたが、
輸送コストやリードタイム、為替リスクなどの課題が浮上しました。
そこでユニ・チャームは、現地で生産・供給を行うOEMモデルへとシフトしました。

「作ってから運ぶ」のではなく、
「現地で作り、現地で運ぶ」──この発想の転換が物流の形を変えたのです。

OEMを活用することで、現地企業と提携しながら資材調達から製造・包装・配送までを一貫管理。
地域密着型のサプライチェーンを確立することで、コスト削減と迅速な市場対応を実現しています。

OEMで物流効率を最適化

現地生産によって輸送距離が短縮され、以下のような効果が生まれます。

  • 輸送コストの削減
  • CO₂排出量の削減
  • 在庫回転率の向上

これにより、サステナブルかつ効率的な物流体制が整いました。
いまや「ローカル生産×ローカル配送(現地完結型物流)」は、世界の主流になりつつあります。

③ 「OEM+自社物流」で品質を守る

OEMでは品質管理が難しいという課題がありますが、
ユニ・チャームは物流面でも独自の監査体制を整え、品質の一貫性を徹底しています。

倉庫内の温湿度管理、配送精度、在庫管理システムの標準化──
こうした日本品質の物流オペレーションが、世界中でブランド価値を支えているのです。


🚛 ロジスティクス視点で見るOEM戦略の本質

物流の専門的な視点から見れば、ユニ・チャームOEM戦略は次の3つの層に分けられます。

  1. 製造物流(Procurement Logistics)
     原材料や資材の調達ルートを最適化する段階です。

  2. 生産物流(Factory Logistics)
     工場内やライン間でのジャストインタイム配送など、製造現場における効率化です。

  3. 販売物流(Distribution Logistics)
     完成品を小売店ECサイトへ届ける最終段階の物流です。

つまりOEMは単なる製造委託ではなく、物流設計の再構築そのものと言えます。


🌍 日本物流へのフィードバック:OEM時代の新たな挑戦

ユニ・チャームの海外戦略は、国内物流業界にも多くの示唆を与えています。

🔹 1. 「物流ノウハウの輸出」という新しいビジネス

日本企業の物流ノウハウを海外OEMパートナーへ提供する機会が増えています。
倉庫管理システム(WMS)や在庫精度管理、ピッキング技術など、
国内で培ったノウハウがそのまま海外で活かされています。

🔹 2. 物流が「ブランド価値」を支える時代

OEM取引では、納期の遅延や品質トラブルがブランド信用に直結します。
つまり物流の安定性そのものが、ブランドの信頼を決定づける時代になりました。

🔹 3. 倉庫・輸送人材に求められる“国際対応力”

海外と連携する物流現場では、ISO基準対応や国際的な品質監査など、
より高度なスキルが求められています。
倉庫オペレーションも単なる国内業務ではなく、グローバル視点が欠かせません。


✏️ まとめ:OEMが描く“物流の未来地図”

OEMは製造業だけの仕組みではなく、物流の再構築に直結する重要な要素です。
ユニ・チャームが進める現地生産・現地配送モデルは、
「日本品質を世界に届ける」ための最適解といえるでしょう。

そしてこの動きは、 「物流政策」「現場課題」「人材育成」などのテーマとも密接にリンクしています。

これからの物流は、国境を越えて“価値”を運ぶ時代です。
フォークリフトが動く現場から、世界市場へ。
日本の物流が描く未来は、確実にグローバルへと広がっています。

🔍 参考・出典リンク