今更気付いたのですがトラック新法についてまだ取り上げてなかったです。 非常に重要なのに抜けていました。 というわけで今日はトラック新法について深堀解説します。 担当の方はチェックリストも活用してみてください。
■ トラック新法の概要
2025年4月1日より施行されている「トラック新法」は、物流業界における働き方改革の一環として、ドライバーの労働環境改善や運賃の適正化、安全対策の強化などを目的とした制度です。
慢性的な人手不足や長時間労働、安全事故の多発といった課題に対応するため、国が本格的な規制強化に乗り出したものとなります。
■ 新法の主なポイント
① 時間外労働の上限規制
- 年間960時間までに制限されます
- 月80時間、2ヶ月平均65時間が上限です
- 休憩時間は労働時間に含まれません
② 荷主責任の明確化
- 荷役や待機時間、納期指定による拘束の是正が求められます
- 荷主による費用負担の義務が強化されます
- 荷主指導ガイドラインが整備されます
③ 運賃の適正化
- 契約内容の書面化が義務付けられます
- 運賃の内訳を明示する必要があります
- 不当な値引きや一方的な条件変更が抑止されます
④ 安全・車両管理の強化
- 点検記録の電子保存が求められます
- 衝突被害軽減装置などの導入が促進されます
- 過積載対策が強化されます
⑤ デジタル化の推進
- 運行・労務データの電子化が進められます
- 電子契約やEDI連携の標準化が図られます
- データ連携による監査対応と業務効率化が期待されます
■ 中小運送事業者への影響
● コスト増加への対応
安全装置や電子化システムの導入、労務管理体制の再構築などにより、初期投資や運用コストが増加する可能性があります。特に中小零細事業者にとっては資金繰りへの影響が懸念されます。
● 人材確保の難しさ
労働時間の制限により運行本数が減少するため、採用や定着施策の強化が急務となります。
● 荷主との交渉力強化
運賃交渉においては、価格以外の付加価値(納期の柔軟性、荷役効率化など)を提示することが重要です。契約条件の見える化と標準化が求められます。
● 経営再編の加速
非採算路線の撤退や、専門化・共同配送・外注化といった選択肢を検討する必要があります。
■ 現場で取り組むべき5つの対応策
運行管理の再設計
休息時間の確保や連続運転の制限をルール化し、違反リスクを低減します。電子化の段階的導入
出発・到着記録、点検ログ、労務実績などの電子化を進め、将来的な運賃算定や請求連携に備えます。契約書の標準化
運賃の内訳や待機費用、荷扱い条件などを明記した契約書を整備し、荷主に提示します。安全投資の優先順位付け
衝突軽減装置や車載カメラの導入を計画的に進め、費用対効果を見ながら段階的に対応します。荷主交渉の強化
時間指定や荷役負荷の改善提案を行い、必要に応じて追加費用を明示することで、短期的な値引きに頼らない交渉を実現します。
■ 経営判断の視点
価格競争から価値競争へ
安全性や確実性、データ連携などの付加価値によって差別化を図ることが重要です。外部資源の活用
共同配送や地域ハブの共同運営、物流スタートアップとの連携などにより、単独での負担を軽減します。財務構造の見直し
適正な運賃水準での黒字化を基準に、事業規模の再設計を行うことが求められます。
■ 今後の展望と注意点
- 制度は段階的に施行されるため、早期対応が競争優位につながります
- 監督強化により、コンプライアンス違反へのリスクが高まります
- 運行・労務データの品質が将来の競争力となります
- 都市部と地方、一般貨物と専門貨物では影響度が異なるため、自社の事業構造に応じた戦略設計が必要です
■ 実務編集者からの提言
短期:運行管理と契約書の整備を最優先で進めましょう
中期:安全投資と荷主との交渉力強化を図りましょう
長期:量から質への転換を目指し、データを活用した付加価値サービスで収益基盤を強化しましょう
■ チェックリスト(現場実務用)
- [ ] 労務・運行データの電子化状況を確認しましたか?
- [ ] 標準契約書に運賃・待機・荷扱い条件を明記していますか?
- [ ] 安全装置導入の優先順位を策定していますか?
- [ ] 荷主別の収益性テーブルを作成していますか?
- [ ] 協業・共同配送の候補先をリストアップしていますか?