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【物流最新ニュース】ヤマト運輸、メルカリとAPI連携|Amazon縮小の過去を経て、EC物流の再構築へ

■ ニュース概要

2025年11月4日、ヤマト運輸株式会社と株式会社メルカリは、法人向け配送サービス「メルカリBiz配送」の提供を開始したと発表しました。
このサービスは、メルカリの法人向けEC支援プラットフォーム「メルカリShops」や「メルカリBiz」と連携し、ヤマト運輸の配送網をAPI経由で直接利用できる仕組みです。
出荷業務の自動化、配送ラベルの一括発行、追跡情報の連携などを通じて、EC事業者の業務効率化と物流最適化を支援する狙いがあります。


■ 背景にある物流戦略の転換

Amazonとの取引縮小という過去

ヤマト運輸は2017年以降、Amazonとの取引量を段階的に縮小してきました。
背景には、急増する配送量によるドライバーの過重労働問題や、低単価契約による収益性の悪化がありました。
この決断は、物流業界における「量から質への転換」を象徴するものであり、ヤマト運輸は以降、収益性と持続可能性を重視した取引方針へと舵を切っています。

● メルカリとの連携強化の狙い

今回のメルカリとのAPI連携は、ヤマト運輸が「選ばれる物流パートナー」として再構築を進める中での重要な一手です。
メルカリは国内最大級のCtoC・BtoCプラットフォームを有しており、個人・法人の出荷ニーズが急増しています。
ヤマト運輸は、メルカリの成長を物流面から支えることで、安定した取引基盤と高付加価値サービスの提供を両立させようとしています。


■ サービスの主な機能

  • 配送ラベルの一括発行
    出荷件数が多い法人事業者でも、複数件の配送ラベルを一括で発行可能です。

  • 追跡情報の自動連携
    ヤマト運輸の配送ステータスがメルカリBiz上に自動反映され、顧客対応がスムーズになります。

  • 出荷業務の自動化
    API連携により、受注から配送までの業務フローを自動化。人的ミスや作業負荷を軽減します。

  • 料金体系の法人向け最適化
    法人契約に基づく運賃体系が適用され、コスト管理がしやすくなります。


■ 業界へのインパク

● EC物流の標準化が加速

API連携による配送業務の自動化は、EC物流の標準化を促進します。
特に中小事業者にとっては、物流の内製化や専任人材の確保が難しい中で、外部連携による効率化が現実的な選択肢となります。

● 荷主責任の可視化と改善

2025年4月に施行されたトラック新法では、荷主による拘束時間や荷役指示の改善が求められています。
API連携による配送指示の明確化は、荷主責任の可視化と改善に直結します。

● 物流DXの実装モデルとして注目

メルカリ×ヤマトの連携は、物流DXの実装モデルとして業界内で注目されています。
今後、他のECプラットフォームや物流企業にも同様の連携が広がる可能性があります。


■ 今後の展望

  • API連携の拡大
    今後は他の配送会社や倉庫管理システムとの連携も進み、物流業務の完全自動化が視野に入ります。

  • EC物流の競争力強化
    物流の効率化は、顧客満足度やリピート率にも影響するため、EC事業者の競争力強化に直結します。

  • GX・DX対応の融合
    配送効率だけでなく、CO₂排出量の可視化や環境対応も含めた物流戦略が求められる時代へと移行しています。


■ まとめ

ヤマト運輸がかつてAmazonとの取引を縮小した背景には、持続可能な物流体制の構築という明確な戦略がありました。
今回のメルカリとのAPI連携は、その延長線上にある「選ばれる物流パートナー」への進化を示すものです。
トラック新法施行後の物流現場では、荷主責任の明確化と配送指示の標準化が求められており、今回の連携はその対応策としても有効です。
今後は、物流DXの実装モデルとして業界全体に波及する可能性が高く、EC事業者・物流企業ともに戦略的な対応が求められるでしょう。


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※参考:LNEWS 2025年11月4日掲載