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【共同輸送の新章】サッポロ×JT系TSネットワーク×NX日本通運 31フィートコンテナで始まる“脱トラック”実装フェーズの本質を深掘り

はじめに|2024年問題の「その先」で始まる本当の勝負

2025年12月、サッポロホールディングスの物流子会社であるサッポログループ物流
JTグループの物流子会社 TSネットワーク
そしてNIPPON EXPRESSホールディングス傘下の 日本通運(NX日本通運 の3社が、
31フィートコンテナを活用した鉄道共同輸送を開始します。

トラック不足が構造的に進む中で、
“共同輸送”と言えば一見よくある施策に見えるかもしれません。
しかし今回の取り組みは、実務現場の「本気度」がまったく違うのです。

  • 31ftコンテナ(鉄道最大級)の採用
  • メーカー横断・業界横断での共同輸送
  • 消費財×たばこ×酒類という異業態の連携
  • 長距離トラックから鉄道への本格的シフト
  • 「年間計画ベースの安定した輸送力確保」という明確な狙い

これらが重なると、単なる「共同輸送をやってみました」というレベルでは収まりません。
物流2024年問題が“ピーク”を迎えた後、業界が次に向かうべき方向性が非常に鮮明に見えてきます。

本記事では、今回のプロジェクトの本質を、
現場目線×政策目線×SCM目線 で徹底的に深掘りしていきます。


第1章|31フィートコンテナ共同輸送の意味:なぜ今なのか?

● 31ftコンテナは「鉄道輸送の主戦力」

31フィートコンテナはJR貨物が扱う中で最大クラスの大型コンテナです。
積載量が大きく、飲料・たばこ・酒類の“かさ高い”貨物をまとめて運ぶには極めて相性が良い。

特に以下のメリットは大きいです。

  • 大量輸送で輸送効率が段違い
  • 長距離輸送のCO₂排出を大幅削減
  • ドライバーの拘束時間がゼロ(鉄道区間は不要)
  • 到着時刻の安定性が高い(高速道路渋滞の影響なし)

2024年問題で「長距離トラックの持続性」が崩れ始めた今、
“大量・安定・予測可能”という鉄道の特性は再評価どころか必須化しています。

● 異業種が組む理由:1社だけでは列車を抑えられない

貨物鉄道のネックはただ一つ。

ある程度の貨物量を確保できないと列車枠を抑えられない

サッポロ単独でも、TSネットワーク単独でも、
「年間を通じて安定的に列車枠を維持できるほどの量」を確保できるかは微妙です。

しかし、3社が組めば話は変わる。

これらを同一路線で“束ねる”ことで、鉄道が最も求める
「安定的な積載率」を実現できるわけです。

つまり今回は、
鉄道輸送を“使いたい”ではなく“使い続けられるレベルにする”ための共同
なのです。


第2章|輸送力確保という“喫緊の課題”に対する実務的回答

● ドライバー不足はもう「未来の話」ではない

物流業界では「ドライバー不足が深刻になる」と10年以上言われてきました。
しかし2024年以降はもう未来ではなく現在進行形の現実です。

  • 運転時間規制の強化
  • 高齢化による離職増
  • 若手採用の困難
  • 長距離運行の敬遠
  • 地方〜都市部間輸送の担い手減少

この構造問題に対し、単独企業の努力だけでは限界があります。

今回の取り組みは、
“鉄道”という外部のインフラをうまく使い、輸送力の下支えを確保する
という、非常に現実的な解決策になっているのです。


第3章|環境負荷低減:物流の「義務」から「戦略」へ

● CO₂削減は物流企業にとっても競争力そのもの

鉄道はトラック輸送に比べて CO₂排出量を約1/8~1/6程度 に抑えられると言われます。
これはメーカー側(サッポロなど)にとっても大きな価値があります。

特に:

  • ESG投資の増加
  • 取引先からのサプライチェーン排出削減要求
  • Scope3削減の圧力
  • 小売からの「脱炭素物流スコア」提示要求

これらが強まっている今、
鉄道を使っている企業=環境配慮型サプライチェーンを持つ企業
というブランディングが極めて重要です。

サッポロ・JT系TSネット・NX日本通運という「全国配送を担う企業」が合同でやることで、
業界全体に「脱トラックの成功モデル」を示す効果が期待されます。


第4章|“異業種共同輸送”の真の価値

消費財物流の統合がいよいよ本格化

今回の共同輸送は、物流業界でよく言われる

「異業種混載を進めよう」
と言いながら、実際にはなかなか進まなかった理由を突破しています。

その最大要因は 受け渡し条件の違い・温度帯・包装仕様・配送頻度・保管方法
酒類・たばこ・食品は、実は物流特性がすごく異なります。

しかし今回は日本通運という“オールラウンダーの物流企業”が中核に入ることで、
荷姿調整・配車・鉄道発着・デポ運用・積み合わせ基準など
現場で起きる「細かいミスマッチ」を吸収できている。

つまりこれは、

メーカー同士の共同輸送ではなく
物流会社を軸にした“統合的・実務的共同輸送”

であり、成功しやすい形になっているわけです。


第5章|2025年の日中関係悪化の中での“鉄道強化”の意味

ここは特に関心の高い部分でもあるので、
政治経済視点で少し踏み込みます。

2025年現在、日本と中国の関係は経済・外交の両面で揺れています。
物流においても、
- サプライチェーンの遮断リスク
- 海上輸送ルートの変動
- 国際コンテナ不足の再燃
など、国際物流の不確実性はむしろ増しています。

その中で今回の 「国内幹線の鉄道利用強化」 は、
政治的リスクの高まりの中で
内需物流の安定化を優先する“守りの構え”
と解釈できます。

海外事情で海上輸送が揺らぐ中、
国内の荷物は国内で安定して運べる仕組みづくりが重要になるからです。


第6章|今回の取り組みで見えた「これからの物流の正解」

今回の共同輸送の本質をまとめると、次の4つに凝縮できます。

  1. 大量に集めて、まとめて運ぶ(共同輸送・幹線鉄道)
  2. トラックは“ラストワンマイルと集荷・出荷”に集中させる
  3. 異業種を束ねるのはメーカーではなく物流会社
  4. 輸送力は“買う”のではなく“維持できる仕組みを仲間と作る”

これはまさに、日本の物流が向かうべき
「幹線鉄道×都市部の効率配送」
という大きな構造転換

の典型例です。


まとめ|これは“新しいモデルケース”として語り継がれるプロジェクトになる

サッポロ、TSネットワーク、NX日本通運という
“中身の違う3社”が組んだ共同輸送は、
「国内幹線輸送の再設計」という点で極めて大きな意味を持ちます。

  • トラック不足
  • CO₂削減要求
  • 物流人材の枯渇
  • 国際情勢の不安定化
  • 消費財物流の複雑化

こういった課題を同時に解決する“多層的な答え”が、
まさに今回のプロジェクトなのです。

2025年12月以降、鉄道共同輸送の成果がどれだけ現場に浸透し、
どれだけ持続的にこなせるか。
今後の日本物流の未来を占う上で、非常に注目すべき取り組みだといえます。


📚 参考リンク