物流業界入門

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【清水港・物流GXの現在地】 ――FCV導入は「環境配慮」ではなく、港湾競争力を左右する現実的インフラ投資

はじめに|このFCV導入を“象徴的ニュース”で終わらせてはいけません

鈴与をはじめ、清水港(静岡市)に拠点を置く物流・倉庫業8社が、水素で走る燃料電池車(FCV)を社用車として導入しました。
一見すると「脱炭素に取り組んでいます」という分かりやすい話に見えます。

しかし物流の視点で見ると、この取り組みはもっと実務的で、
港湾の将来競争力に直結する“インフラ選択”だと分かります。

本記事では、
- なぜ港湾でFCVなのか
- 社用車は実際どう使われるのか
- 水素は本当に“グリーン”なのか

という点を整理しながら、清水港の動きを冷静に読み解いていきます。


まず事実整理|清水港で何が起きているのか

今回の取り組みの概要は以下の通りです。

  • 導入主体
    清水港に拠点を置く物流・倉庫業、海運関連事業者など8社
    (鈴与グループ3社を含む)

  • 導入時期
    2025年11月下旬

  • 導入車両

  • 燃料供給
    ENEOSグループが港内で運営する水素ステーション
    (圧縮水素を充塡)

清水港ではすでに、太陽光発電や非化石証書を活用した電力融通、水素バスの運行など、官民連携で脱炭素の下地が作られてきました。
今回のFCV導入は、その流れの延長線上にあります。


港湾物流における「社用車」のリアル

ここで重要なのは、
港湾における社用車は“飾り”ではないという点です。

港の社用車は、かなり酷使されます

港湾物流の現場では、社用車は次のように使われます。

  • 岸壁・倉庫・事務所間の頻繁な往復
  • 荷主・船社・行政担当者の視察対応
  • 突発的な現場確認やトラブル対応
  • 港内外の複数拠点をまたぐ打ち合わせ移動

距離は短くても、 - 稼働頻度が高い
- 待ち時間が許されない
- 「すぐ動ける」ことが前提

という、意外と厳しい使われ方です。


なぜEVではなくFCVなのか

この条件を踏まえると、FCVが選ばれた理由は明確です。

  • 充塡時間がガソリン車並みに短い
  • 稼働率を落とさずに使える
  • 電力ピークを発生させにくい
  • 既存の港湾設備への負荷が小さい

港湾物流において重要なのは、
「脱炭素のために業務効率を落とさない」ことです。

FCVは、現時点でそれを最も満たしやすい選択肢だと言えます。


車種の選び方にも意味がある

今回導入された車両構成も、実務的です。

  • クラウンZ(FCV)

    • 荷主・取引先・行政対応
    • 視察や打ち合わせなど“見られる場面”
  • MIRAI

    • 港内移動
    • 現場管理者の業務車両
    • 実運用における耐久性・利便性の検証

つまり、 「象徴としてのGX」と「日常業務で回すGX」の両立を狙っています。

ここが、単なるPR導入とは違う点です。


避けて通れない論点|その水素は本当にクリーンか?

一方で、冷静に見なければならない課題もあります。

現在の水素は「グレー水素」が中心

多くの水素ステーションで使われている水素は、

いわゆるグレー水素です。

使うときはゼロエミッションでも、
上流ではCO₂を排出しているという矛盾を抱えています。


それでも清水港の取り組みが評価できる理由

重要なのは、
清水港の取り組みが“ここで完結しない構造”を持っている点です。

  • 太陽光発電の活用
  • 非化石証書による電力の脱炭素化
  • 水素バスへの供給実績
  • 官民連携による港湾GXの継続

ENEOSグループも、水素事業では将来的に
- 再生可能エネルギー由来のグリーン水素 - CO₂回収を組み合わせたブルー水素

への移行を視野に入れています。

現時点で完全なグリーン水素ではなくても、
切り替え可能な場所にインフラを先に整えたこと自体が戦略的です。


物流GXの本質は「一気に完璧を目指さない」こと

物流や港湾のGXは、

  • 最初から100点を取る
  • 完璧でなければ始めない

という世界ではありません。

  • まず回る仕組みを作る
  • 次にエネルギーの質を高める

清水港のFCV導入は、
「利用(下流)」を先行させ、「製造(上流)」を後から進化させるGX」の典型例です。


結論|清水港は「動かせる港」になった

今回のFCV導入は、

  • 台数は限定的
  • 水素も発展途上
  • すぐに劇的な効果が出るわけではない

それでも意味は明確です。

清水港は、
「議論だけする港」から「実装して検証する港」へ一歩進みました。

物流GXは、
止まった港から脱落していきます。

清水港は今、
静かに、しかし確実に「次の標準」を作り始めています。