――JSA物流改革は“理想論”から“実装フェーズ”へ
はじめに|物流改革は「掛け声」から「結果」を問われる時代へ
物流業界では長年、
- 荷待ち時間が長い
- トラックが足りない
- 共同配送は理想論
と言われ続けてきました。
そんな中、日本スーパーマーケット協会(JSA)加盟社による
SM物流研究会の取り組みは、はっきりと一線を画しています。
なぜなら今回示されたのは、
思想でも計画でもなく、「数字」で裏付けられた改善結果だからです。
荷待ち時間「11.8% → 1.5%」が持つ意味
2024年12月23日の年末記者会見で、
JSAの岩崎高治会長は次のように述べました。
物流施設における2時間以上の荷待ち時間は、
2023年10月の11.8%から、
2025年10月には1.5%まで減少した。
物流現場にいる人間なら、この数字が異常なほど改善されていることが分かります。
荷待ち2時間超とは「最悪ライン」
物流において「2時間以上の荷待ち」は、
- ドライバー拘束時間の増大
- 労務違反リスク
- 運行効率の崩壊
を意味します。
それが1割以上存在していた状態から、1.5%まで圧縮された。
これは単なる改善ではなく、
オペレーション思想そのものが変わった証拠です。
なぜスーパー物流は改善できたのか
① 荷待ちは「努力」ではなく「設計」の問題だと理解した
多くの現場では、
- 早く来すぎたドライバーが悪い
- 混む時間帯だから仕方ない
とされがちです。
しかしJSAの取り組みは違います。
- バース予約の精緻化
- 入荷時間の平準化
- 検品・荷受け工程の標準化
人に我慢させるのではなく、流れを作り直した。
ここが決定的な違いです。
② 「待たせないこと」が業界全体の利益になると合意した
スーパー物流の特徴は、
- 荷主が強い
- 納品業者が多い
- 取引関係が固定化しやすい
という構造です。
本来なら、
荷待ちが発生しても「下請け側が我慢する」構図になりやすい。
それを、
荷待ちは業界全体の損失
と定義し直した。
この合意形成こそが、最大の改革ポイントです。
共同配送で「1日3台削減」が示す現実解
さらに注目すべきは、
ヤオコーのセンター帰り便を活用した共同配送です。
- 1日あたりトラック3台削減
- 既存便の有効活用
- 新規投資を伴わない改善
物流視点で見ると、非常に“現実的”です。
共同配送が進まなかった本当の理由
これまで共同配送が進まなかった理由は明確です。
- 誰が調整するのか
- 責任は誰が負うのか
- トラブル時はどうするのか
理屈では正しくても、運用設計が曖昧だった。
今回の事例は、
「帰り便」という既存資産を起点にした
点が秀逸です。
ゼロから組むのではなく、
すでに走っているトラックをどう使い切るか。
これは物流DX以前に、
物流を“経営資源”として見ている証拠です。
荷待ち削減 × 共同配送は「2024年問題」の模範解答
2024年問題では、
- 労働時間規制
- 輸送力不足
- ドライバー確保
が注目されました。
しかしJSAの取り組みは、
- 待たせない
- 空で走らせない
- 台数を減らす
という、最も本質的な対策です。
残業を減らせ、ではありません。
人を増やせ、でもありません。
構造を変えた結果、数字が改善している。
これこそ、他業界が学ぶべき点です。
「荷待ちゼロを目指す」という覚悟の重さ
岩崎会長は、
荷待ち時間がゼロになるまで改善を続ける
と述べています。
物流現場を知る人間ほど、
この言葉が簡単ではないと分かります。
- 繁忙期
- 天候
- 想定外の遅延
ゼロは理想論にも見えます。
それでもあえて掲げるのは、
荷待ちは「仕方ないもの」ではない
という、業界へのメッセージです。
物流は「改善できる」という成功例
物流業界はよく、
- 古い
- 変わらない
- 非効率
と言われます。
しかし今回のJSAの事例は、
やり方次第で、ここまで変えられることを示しました。
- 荷主が変わる
- 物流を数字で見る
- 全体最適を優先する
これが揃えば、
物流は“足を引っ張る存在”ではなく、
競争力そのものになります。
おわりに|この改革を「点」で終わらせないために
JSAの物流改革は、
スーパー業界だけの成功事例で終わらせるには惜しい。
- 小売
- 製造
- EC
- 外食
すべてに応用可能なヒントがあります。
荷待ちをなくすことは、
人を守り、コストを下げ、
そして産業全体を強くする。
物流は、変えられる。
今回の数字は、その事実を静かに、しかし力強く示しています。