2026年1月5日、日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)の御手洗安会長が年頭所感を発表しました。 2024年問題の激震を越え、2025年に矢継ぎ早に成立した「下請法改正」や「トラック適正化2法」といった法的枠組み。
これらが「ハンドルを握る現場」にどう突き刺さるのか。 物流現場のリアリティと、経営を司るCLO(物流統括管理者)の視点を融合し、称賛と批判の両面から深掘りします。
🧭 第1章|【称賛】ようやく整った「物流の主権」を取り戻す法的包囲網
今回の所感で最も評価すべきは、「物流を叩く側」への法的なブレーキが明確に示された点です。
● 「トラック適正化2法」が現場を守る盾になる
2025年に成立した新法により、ついに「許可更新制」や「適正原価を下回る運賃制限」が現実味を帯びました。 これまで現場が「無理です」と言えなかった荷主からの安値強要に対し、法的に「委託次数の制限」や「違法白トラの取り締まり」が強化されたことは大きな進歩です。
● 燃料高騰への対抗策「交付金の5年継続」
軽油引取税の旧暫定税率廃止に伴い、存続が危ぶまれていた「運輸事業振興助成交付金」の5年間継続が盛り込まれました。 燃料費の高騰に苦しむ現場にとって、この5年という猶予期間は、構造改革を進めるための貴重な「延命措置」ではなく「再建期間」となります。
⚠️ 第2章|【批判】WebKITと「多重下請け制限」の矛盾という急所
一方で、会長が掲げる生産性向上策には、現場を知る実務家として首を傾げざるを得ない「理論の危うさ」も散見されます。
● WebKITは本当に「現場」を潤すのか?
御手洗氏は、求荷求車ネットワーク「WebKIT」による実車率向上を強調しています。 しかし、現場の視点では、こうしたネットワークは「安値の叩き合い」の場になりがちです。
「委託次数の制限」を謳いながら、ネットワークを拡大すれば、結果として『顔の見えない多重下請け』をデジタルで助長するリスクはないか。
多重下請けが運賃停滞の一因であると認めながら、WebKITという「仲介」を推奨する矛盾。成約運賃を「標準的運賃」に近づけるためには、単なるマッチングではなく、中抜き構造そのものを破壊する抜本的な運用ルールが必要です。
🧠 第3章|現場とCLOが2026年に向き合うべき「3つの現実」
今回の所感を受け、我々が現場で実装すべきは以下の3点です。
- 「自動点呼」を道具ではなく、休息のために使う 本格運用が始まった自動点呼機器を導入する目的は、事務効率化だけではありません。点呼待ち時間を減らし、ドライバーの「確実な休息」を確保することに繋げるべきです。
- 高速道路「割引拡充」を待たずにルートを再設計する 大口・多頻度割引の拡充要望が出されていますが、現場では今の割引率でも「高速を使えば利益が飛ぶ」というジレンマがあります。割引を待つのではなく、高速利用を前提とした運賃交渉ができるかどうかが鍵です。
- 「委託次数の通知義務」を現場の武器にする 「この荷物は何次受けか」を通知する義務が周知徹底されることで、現場は初めて「自分たちの取り分」の妥当性を主張できるようになります。
🏁 おわりに|2026年は「制度の運用能力」が問われる年
日貨協連が示した方向性は、概ね正しい。 しかし、法や制度はあくまで「器」に過ぎません。
- 委託次数の制限をどう現場に定着させるか
- DXを単なる事務効率化ではなく、現場の給与向上の武器にできるか
物流は今、「制度に守られるフェーズ」から「制度を使い倒して現場を強化するフェーズ」に入りました。
物流現場の皆さん。所感を読んで「国が変わってくれる」と期待していませんか?
本当の戦いは、この新しいルールを使って「いかに自分たちの輸送価値を高く売るか」という現場の交渉力にあります。