――滋賀161号通行止めが暴いた「個人依存型道路制度」の限界
「四駆だから大丈夫」
「このくらいの雪なら問題ない」
2026年1月22日、国土交通省・滋賀国道事務所が公式SNSで発した
「慢心しないでください」という言葉は、交通安全を超えた“制度への警告”でした。
なぜなら、日本では毎年同じ場所で、同じ原因で、同じ事故が繰り返されているからです。
❄️ 現場で起きていたこと:雪ではなく「判断」が道路を止めた
2026年1月の寒波で、滋賀県内の国道161号・8号・北陸道が予防的通行止めとなりました。
理由は単純です。
ノーマルタイヤ車のスタックが、必ず起きると予測されたから。
実際、山口・広島・岐阜・北陸各地では、準備不足の車両が次々と立ち往生。
1台のスタックが、数千台の物流車両と除雪作業を止めました。
⚠️ 「慢心」は個人の問題ではない
行政が異例の言葉を使ったのは、雪よりも危険なものがあったからです。
それが、「個人判断に道路機能を委ねる制度」。
日本では、冬用タイヤの装着は努力義務。
守らなくても、原則として走行できてしまいます。
この制度設計こそが、毎年の再発の根源です。
🌍 制度比較:なぜ海外では同じ事故が起きないのか
ここで、日本と雪国の道路制度を比較します。
🇩🇪 ドイツ
- 冬季条件下では冬タイヤ装着が法的義務
- 未装着で事故 → 保険無効・罰金
- チェックは警察が随時実施
🇫🇮 フィンランド
- 11月〜4月は強制的に冬タイヤ
- 速度制限も季節で自動変更
- 進入時点で不適合車は排除
🇨🇦 カナダ(ケベック州)
- 冬タイヤ未装着は走行自体が違法
- 高速入口で物理的チェックあり
- 物流車両は優先除雪レーンを使用
🇯🇵 日本
- 冬タイヤは努力義務
- チェーン携行も自己判断
- スタックしてから通行止め
- 物流も一般車も同列扱い
🧩 日本の最大の問題:事後対応型インフラ
海外が「排除型制度」で事故を未然に防ぐのに対し、
日本は「発生してから止める制度」です。
だから、毎年同じことが起きる。
- スタック
- 渋滞
- 除雪車が入れない
- 物流が止まる
- 社会が止まる
これは自然災害ではなく、制度災害です。
🚛 物流視点で見ると、被害は指数関数的に広がる
1台のスタックは、個人事故ではありません。
- 工場のラインが止まる
- コンビニの棚が空く
- 医療物資が遅れる
- 代替輸送が間に合わない
つまり、道路制度の甘さが
サプライチェーンの脆弱性を増幅しているのです。
💡 解決策は「禁止」ではなく「設計」
必要なのは、罰則強化だけではありません。
- 大雪時の物理的進入規制
- 冬タイヤ未装着車の自動排除
- 物流車両の優先通行制度
- 事前通行止めの法的明確化
- SNSではなく制度で止める仕組み
これらを組み込んだ道路オペレーション設計です。
📌 まとめ:日本は「優しすぎる道路」を卒業すべき
善意に依存する制度は、災害時に必ず破綻します。
滋賀国道事務所の「慢心しないで」という言葉は、
私たちへのお願いではなく、制度の限界宣言でした。
個人判断に任せない
仕組みで止める
物流を守る
この視点がなければ、日本の雪害は来年も再来年も繰り返されます。
次に変えるべきは、タイヤではなく制度です。
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