マイボイスコムが実施した「宅配便サービスの利用に関する調査」は、一見すると穏やかな数字が並びます。
しかし、物流の視点で読み解くと、そこにはラストワンマイルが構造的な転換点に差し掛かっている兆候が、はっきりと表れています。
1|月1回以上が7割弱──「多い」のに、減っているという事実
直近1年間の宅配便受取頻度を見ると、
- 週2~3回以上:5.4%
- 週1回:12.5%
- 月2~3回:31.0%
- 月1回:20.6%
合計69.5%が「月1回以上」受け取っているという結果でした。
数字だけ見れば、依然として高水準です。
しかし重要なのは、2022年調査から約5ポイント減少している点です。
ここで考えるべきは、
「宅配は減っていない」のではなく、「伸びるはずだった需要が伸びていない」
という現象です。
コロナ禍で一気に加速したEC利用は、
生活必需品レベルではすでに“成熟フェーズ”に入りつつあります。
これ以上の成長を前提に、現場の輸送力や人員を積み増す設計は、すでに危ういと言えます。
2|若年層ほど「宅配を受け取らない」という違和感
注目すべきは、
男性10代・20代で「受け取りはしたことがない」比率が高いという点です。
これは決して、
- 若者が物を買っていない
という話ではありません。
むしろ、
- コンビニ受取
- 店舗受取
- フリマアプリでの直接手渡し
- デジタル完結型消費(サブスク・配信)
といった、「宅配を経由しない消費動線」が、若年層ほど定着している結果です。
物流にとってこれは、
未来の宅配需要が“世代交代で自然減する可能性”を示すシグナルでもあります。
3|利用事業者は横並びで減少──シェア争いの限界
直近1年間に利用した宅配便事業者は、
- ヤマト運輸:88.5%
- 日本郵便:75.5%
- 佐川急便:71.7%
いずれも2022年調査から減少しています。
これは、
- 特定社が負けた
のではなく、 - 市場全体が頭打ちになっている
ことを意味します。
にもかかわらず、
現場ではいまだに「量を取る」「件数を積む」前提の運賃設計・オペレーションが残っています。
このズレが、ドライバー不足・再配達問題を慢性化させています。
4|受け取る荷物の中身が示す「宅配の正体」
受け取った荷物の内訳は、極めて示唆的です。
- ネット通販で購入した物:83.6%
- 家族・親戚からの荷物:34.0%
- クール便:20.9%
- フリマ・オークション:19.2%
もはや宅配便は、
「物を運ぶインフラ」ではなく、「生活そのものを裏打ちする装置」
になっています。
一方で、
フリマ利用は若年層・女性30代で高いなど、
個人間物流(C2C)の存在感も無視できません。
これは、
再配達リスクが高く、単価が低く、要求水準は高いという
物流事業者にとって最も難易度の高い荷物構成です。
5|対面8割超えが意味する「置き配万能論」の限界
受け取り方法では、
- 対面受取:8割超
- 日時指定
- 置き配指定
という順でした。
置き配は確かに再配達削減の切り札ですが、
調査結果が示すのは、
「置き配を選べない層が、依然として多数派」
という現実です。
治安・住宅事情・商品特性。
すべてを無視して「置き配を増やせば解決」という議論は、
すでに限界に来ています。
結論|宅配は「増やす」時代から「設計し直す」時代へ
この調査が示しているのは、
宅配便の衰退ではありません。
宅配の前提条件が変わったという事実です。
- 世代ごとに異なる受取動線
- 伸びない需要と増え続ける制約
- 量ではなく、質と時間が支配するラストワンマイル
これから問われるのは、
「何を、誰に、どこまで宅配で担うのか」
という設計思想です。
宅配は、
“便利なサービス”から
“選別されるインフラ”へ移行しています。
その現実を直視しない限り、
人手不足も、再配達問題も、解決には向かいません。