【「違法ではない、でもおかしい」】── 流通加工現場で変形労働時間制が“死ぬ”とき - 物流業界入門
先に書いた記事で、私はこう述べました。
変形労働時間制は「回復の谷」が機能しなくなった瞬間に死ぬ
これは思想の話ではありません。
構造の話です。
そして今回、ダイセーグループの
ダイセーロジスティクス
が発表した「年間休日120日超」への制度改定は、
この構造を正面から理解している会社の判断だと言えます。
ダイセーロジスティクス/倉庫作業も年間休日120日以上に 「休み少ない」の声で改定 ─ 物流ニュースのLNEWS物流ニュースのLNEWS
これは「ホワイト化」でも「イメージ改善」でもない。
人手不足時代における、極めて冷静な経営判断です。
1. 鋭いのは「休日数」ではない。「前提」を切り替えたこと
多くの物流企業が陥る思考はこうです。
- 人が足りない
- だから回す
- 回らない分は現場が頑張る
ダイセーロジスティクスは、ここで逆をやりました。
「休めない設計のままでは、人が来ない」
2024年の社内アンケートで
「休日数が少ない」という声が多かった。
採用現場では
「年間休日120日以上」が足切りラインになっていた。
この時点で、多くの会社はこう言います。
「物流は特殊だから仕方ない」
ダイセーは言わなかった。
前提そのものを捨てたのです。
2. 本当の決断は「最終土曜日を捨てた」こと
注目すべきは数字ではありません。
- 113日 → 120日 → 126日
よりも、ここです。
「最終土曜日は出勤日」という業界の暗黙知を、切った
これは小さな変更に見えて、
現場設計としては極めて重い一手です。
なぜならこれは、
- 閑散期でも
- 何かあれば
- 土曜で吸収する
という逃げ道を自ら塞ぐ行為だからです。
つまりダイセーは、
「業務量を、休日で吸収する設計」をやめた
これをやった会社は、強い。
3. 「人手不足が心配だった」は、正直で、正しい
制度検討時に、
- 人が足りなくなるのでは
- 業務が回らないのでは
という懸念が出たと書かれています。
これは綺麗事ではない。
現実的な恐怖です。
それでも出した結論がこれ。
「働きやすい制度を整えることが、結果的に採用と定着につながる」
ここが、先ほどの記事との決定的な接点です。
変形労働時間制が死ぬ瞬間とは何か。
回復を、現場の根性で代替し始めたとき
ダイセーは、それをやらなかった。
4. 現場の変化がすべてを物語っている
制度改定後、現場ではこうした声が出始めたと言います。
「業務を効率化して、しっかり休もう」
これは重要です。
- 休みが増えたから効率化する
のではなく - 休める前提ができたから、効率化が意味を持つ
順番が逆なのです。
休めない現場にDXを入れると、
疲労が加速します。
休める構造にDXを入れると、
改善が回り始めます。
結論:これは「理想論」ではない。生存戦略だ
先の記事で私はこう書きました。
「違法ではない、でもおかしい」
ダイセーロジスティクスの判断は、
その「おかしさ」を制度の側から是正した例です。
- 人は減る
- 荷物は減らない
- ならば
先に休ませる設計にしない会社から、消えていく
これは思想ではありません。
市場の現実です。
物流は、もう
「回せた会社が勝つ」世界ではない。
「回復できる会社だけが、残る」
ダイセーロジスティクスの制度改定が鋭いのは、
それを数字ではなく、構造で理解しているからです。
そしてこの判断ができる会社は、
思っているより、ずっと少ない。
あなたの会社は、
どちら側でしょうか。