── CRE×estieレポートから読む、中長期の配置戦略
CRE(シーアールイー)と
estieが発行した
「2025年下期 物流マーケットレポート」は、
一見すると「堅調」「安定」という言葉で片付けられがちです。
しかし、CLO(物流統括管理者)の視点で読み解くと、
このデータはむしろ、静かな警告を含んでいます。
物流施設は、もう“余っていない”。
そして次に来るのは、選別のフェーズです。
1|空室率低下=安心、ではありません
まず事実関係を整理します。
首都圏
- 空室率:2025年下期にかけて低下
- 募集賃料:横ばい
需給は均衡し、表面上は安定市場です。
近畿
- 空室率:下降トレンド
- 募集賃料:2025Q2以降、上昇
需給逼迫が、価格に転嫁され始めた状態です。
東海
- 空室率:2025年下期に急低下
- 募集賃料:2025Q4で上昇
これは一過性ではなく、
立地と用途が評価され始めた兆候です。
2|CLO視点で見るべきは「賃料」よりも「柔軟性」
多くの議論は、
「賃料が上がるか・下がるか」に集中します。
しかし、CLOが本当に見るべき指標は別です。
- 拡張余地があるか
- レイアウト変更に耐えられるか
- 労働制約・時間規制に対応できるか
つまり、
その倉庫は、
5年後のオペレーション変更に耐えられるか
です。
空室率が下がる局面では、
条件の良い物件から先に埋まる。
残るのは、
- 人が集まらない
- 車両動線が弱い
- 将来改修が難しい
「使えなくはない倉庫」です。
3|賃料横ばいは「安定」ではなく「調整待ち」
特に首都圏の賃料横ばいは、
安心材料ではありません。
なぜなら、
- 人件費は上がっている
- 設備投資コストも上昇
- 法規制対応(労働・環境)は厳格化
にもかかわらず、
賃料だけが動いていない。
これは、
倉庫側が、
まだ価格に転嫁しきれていない
状態とも言えます。
転嫁が始まるときは、
空室率がさらに下がった後です。
CLOが気づいた時には、
選択肢はもう残っていません。
4|近畿・東海は「戦略拠点化」の入口に入った
近畿・東海で起きているのは、
単なる需要増ではありません。
- 中継拠点から
- 戦略拠点への格上げ
です。
特に東海は、
- 製造業との近接
- 広域配送の結節点
- 自動化・大型化に向いた用地
という条件が揃い、
「今後も使い続ける前提」の倉庫だけが
評価され始めている
フェーズに入っています。
賃料上昇は結果であり、
原因は長期利用前提の需要です。
5|中長期で見ると、倉庫は「借り替えできない資産」になる
ここが最も重要な視点です。
物流施設は、
- オフィスよりも
- 店舗よりも
借り替えコストが高い。
- システム移設
- 人員再配置
- 顧客影響
これらを考えると、
空室率が下がった市場では、
倉庫は“流動資産”ではなく
“固定戦略資産”になります。
CLOにとって問われるのは、
- 今の最適
ではなく - 5〜10年後の耐久性
です。
結論|このレポートは「穏やかな市場」ではなく「分岐点」を示している
CRE×estieのレポートは、
穏やかな数字を示しています。
しかし、その内側では、
- 倉庫の選別
- 賃料転嫁のタイミング
- 立地価値の再定義
が静かに進んでいます。
CLOにとっての問いは一つです。
その倉庫は、
将来の制約に耐えられるか。
空室率が低い市場では、
「選ばなかったこと」自体がリスクになります。
今はまだ、
考える時間があります。
それが、このレポートが示す
最大のメッセージです。