物流業界入門

物流業界の基礎から最新トレンドまで、現場経験を活かしてわかりやすく解説!

【数字は小幅減、構造は激変】──日本港がハブでなくなる日

日本発米国向けコンテナ輸送は「減った」のではない
── 直航が細り、TSが増えたという“質的変化”を読む

デカルト・データマインが公表した
2026年1月の日本発米国向け海上コンテナ貨物量の統計は、
一見すると地味な数字に見えます。

  • 荷受地ベース:5万343TEU(前年比▲2.7%)
  • 前月比:+2.0%

しかし、このデータの本質は
増えた・減ったではありません。

「どこから、どう運ばれなくなったのか」
「代わりに、どんな経路が増えたのか」

そこにこそ、今の日本発輸出物流の構造問題が現れています。


1|最大の変化は「TS率38.2%」という数字

今回、最も重要なのはここです。

  • 第3国トランシップ(TS):1万9225TEU
  • 前年比:+23.0%
  • TS率:38.2%(前年30.2% → +8.0pt)

つまり、

日本発米国向け貨物の4割近くが
もはや“日本港から直で米国に行っていない”

という事実です。

これは偶然ではありません。
構造的な必然です。


2|「母船直航」が2桁減という現実

日本発・母船直航分は、

  • 3万1545TEU
  • 前年比▲13.4%

明確な2桁減です。

これは単に需要が減ったという話ではありません。

  • 日本港発の直航便が減っている
  • 直航を成立させる貨物密度が確保できない
  • 船社が日本を「集荷拠点」として見なくなりつつある

つまり、

日本港の“幹線性”が静かに削られている

というサインです。


3|TSが増えた先はどこか

TS増加の内訳を見ると、さらに生々しい。

  • 韓国:+21.3%
  • 中国:+152.0%
  • 台湾:▲16.4%
  • シンガポール:▲65.0%

特に注目すべきは中国です。

中国経由で米国へ行く
“日本発貨物”が急増している

これは地政学ではなく、
純粋に物流効率の問題です。

  • 本船の本数
  • 接続の確実性
  • スケールメリット

それらが、日本港よりも
第3国ハブの方が勝っている。

それだけの話です。


4|品目別に見る「日本輸出の現在地」

荷受地ベースの品目動向も、示唆的です。

  • 電気類:▲20.1%
  • 自動車関連:▲10.2%
  • ゴム製品(タイヤ等):+11.5%

ここから見えるのは、

  • 高付加価値・精密系が落ちる
  • 体積・重量が読みやすい消耗品が伸びる

という傾向です。

これは、

「日本の輸出が弱くなった」のではなく、
「輸送設計に向いた貨物だけが生き残っている」

と読むべきです。


5|物流視点で見る、本当の問題

今回のデータが突きつけているのは、
次の問いです。

日本は、
米国向け輸出の“起点”であり続けるのか?

  • 直航が減る
  • TSが増える
  • ハブは国外

この流れが続けば、

  • 日本港は「通過点」に格下げされる
  • 港湾投資の回収が難しくなる
  • 輸出主導のSC設計が組めなくなる

これは輸出企業だけの話ではありません。
港湾・船社・フォワーダー・倉庫、
すべての前提が変わります。


結論|この数字は「警告」である

1月の日本発米国向け貨物量は、
確かに微減です。

しかし本質はそこではありません。

直航が減り、
トランシップに依存する構造へ
静かにシフトしている

この現実をどう受け止めるか。

  • 日本港をどう位置付け直すのか
  • 直航を維持するのか、諦めるのか
  • 日本発である意味をどこに置くのか

物流は「量」ではなく、
設計思想の勝負に入っています。

この数字は、
その分岐点を示しています。