物流改善は「積み方」ではなく「設計」から始まる ── ぼんちに見る、米菓物流の静かな構造転換
「パレット化を進めたら、積載効率が3割落ちた」 現場でよく耳にするこの絶望的な数字を前に、多くの企業は「人手不足だから仕方ない」と諦めてしまいます。
しかし、米菓・スナックメーカーの「ぼんち」は違いました。彼らが行ったのは、現場の頑張りに頼る「積み方の工夫」ではなく、物流の最小単位である「段ボールサイズの再設計」でした。
今回は、一見地味ながらも、インフレ下で利益を守り抜く「物流設計」の本質を解剖します。
1. なぜ今、物流の「構造」に手を入れるのか
原料米、フライ油、包材、そして人件費。食品メーカーを取り巻くコストは、現在、全方位で上昇しています。この状況で安易な価格転嫁だけに頼れば、ブランド力や棚割りの維持は困難を極めます。
そこで「ぼんち」が選んだ戦略は、「物流コストを構造から削り取る」という、最も地味で、かつ最も持続的な手段でした。
2. パレット化の落とし穴を「設計」で埋める
工場からの出荷を、手作業の「バラ積み」から「パレット積み」へ切り替える。これはドライバーの負荷軽減や荷役時間の短縮において、2024年問題への王道の一手です。
しかし、パレット化には「積載効率の悪化」という副作用がつきまといます。 パレット寸法と段ボール寸法が噛み合っていないと、どうしても「積めない空間」が発生します。 ぼんちにおいても、当初は約3割もの効率低下に直面しました。
多くの企業がここで「効率か、労働環境か」の二択に悩む中、ぼんちは「段ボールの寸法そのもの」を変更するという決断を下しました(2025年12月実施)。
- パレット上の隙間をミリ単位で削る
- トラック荷台で生じるパレット間のデッドスペースを潰す
これは、現場の「積み込み技術」で解決しようとするのではなく、「箱という物流の前提」を設計し直したことを意味します。
3. 物流はもはや「後工程」ではありません
この事例が私たちに突きつけているのは、物流がもはや「製造が終わった後の最後の工程」ではないという冷徹な事実です。
- 商品サイズ
- 包装仕様
- 段ボール寸法
これらはすべて、「物流効率を内包した商品設計要素」でなければなりません。「製造が先、物流は後」という古い発想は、今のコスト環境下ではすでに通用しなくなっています。
段ボール寸法の変更は、 製造ライン・包材調達・在庫管理すべてに影響します。 それでも踏み切った点に、この改善の本質があります。
4. パレット化の真価は「人を守り、空間を制する」こと
積載効率が多少落ちたとしても、パレット化には「作業事故の低減」や「ドライバーの身体的負担の解消」という、代えがたい価値があります。
ぼんちの凄みは、その価値を認めつつ、失われた積載効率を「設計(デザイン)」の力で奪還しに行った点にあります。これこそが、私たちが提唱する「回復を前提とした設計」の具体的な姿です。
結論:物流改善とは「空間を読む力」である
ぼんちの取り組みは、派手なAIや自動倉庫の導入ではありません。しかし、最も本質的な改善です。
- 空いている隙間は、すべてコストである
- 見えない「空間」こそが、利益を食いつぶす
- 人の努力で埋めるな、設計で消せ
物流は「気合」では回りません。寸法と前提を制した者だけが、コストを制するのです。
【軍師の壁打ち:あなたの「箱」は、最適ですか?】
「パレット化で効率が落ちた」と嘆く前に、一度その「箱」のサイズを疑ってみませんか? 現場が埋めているその「隙間」を、設計の力で利益に変える余地は必ずあります。
ぼんちのように、前提から疑い、構造を書き換えたい経営者・CLOの方へ。 X(旧Twitter)のDMにて、貴社の「無駄な空間」の悩みをお寄せください。
共に、利益を生む「設計図」を引き直しましょう。