――「入荷可視化」は完成形ではない。物流構造を動かせるかが本質です。
経済産業省のCLO事例集では、日本アクセスの取り組みが
「入荷データを軸に、社内外連携で進める物流改善」として紹介されています。
食品総合卸として
- 全国約500拠点
- 1日あたり約7,500台の配送ネットワーク
- ドライ/チルド/フローズンの全温度帯対応
- 取引先約2,000社
- 仕入先約10,000社
- 約70万SKU
まさに巨大サプライチェーンのハブです。
そして同社は2011年に「ロジスティクス管掌」を設置。
CLO義務化を待たず、2024年7月に明確化しました。
CLOは代表取締役副社長が担い、
社内外への発信と物流改善の統括を行っています。
私はこの事例を高く評価します。
しかし同時に、
ここからもう一段上の問いを投げる必要があります。
🧠 入荷可視化は“入口”に過ぎません
同社の改善の起点は「入荷情報の可視化」です。
- 自社開発の入荷管理システム(2017年度)
- N-Torus(2018年度)
- MOVO Berth(2022年度)
複数システムを組み合わせ、141拠点へ展開。
KPIとして「1時間以上の入荷待機」発生率を管理し、
その発生率を半減。
27年3月に0.5%以下、29年3月ゼロを目標としています。
これは確実に前進です。
しかし私は問いかけます。
可視化は目的でしょうか。
それとも構造転換のための手段でしょうか。
🚛 「見える待機」と「見えない待機」
同社も課題として挙げています。
受付前、敷地外で発生する
“見えない待機時間”。
ここに本質があります。
倉庫単体の改善では限界がある。
つまり、
問題は拠点内ではなく、
サプライチェーン全体設計にある
ということです。
入荷時間の分散、パレット化、発注曜日集約。
これらは重要です。
しかしそれはまだ
現行構造の中での最適化
に過ぎません。
🔍 本当の論点は「発注構造」です
可視化データを基に、
- 発注ロット見直し
- 入荷頻度見直し
- SKU削減
- パレット単位発注の徹底
を進めています。
ここが核心です。
私は以前から書いています。
物流問題の本質は“発注の自由度”にある
発注が営業主導で、
物流が後追い最適化する構造では限界があります。
CLOの役割は、
物流を“調整機能”から“設計機能”へ引き上げること
です。
📊 データは説得材料か、経営判断材料か
メーカー側の抵抗もある中で、
「お願いベース」で合意形成を進めている。
これは現実的です。
しかし私はもう一歩踏み込みたい。
データは交渉材料でしょうか。
それとも経営判断材料でしょうか。
本来CLOは、
- 不採算SKUの再定義
- 取引条件の再設計
- 納品頻度の制御
- 契約条件への反映
まで踏み込む権限が必要です。
もしそこまで到達できなければ、
CLOは“改善責任者”で止まります。
私は、CLOは改善責任者ではなく、
構造設計責任者であるべき
だと考えています。
🏗 真のテーマは「物流コストの内部化」
副社長自らが営業部門へ物流コスト意識を浸透させる。
ここは極めて重要です。
物流単価が上昇する中で、
- 積載効率改善
- 実車台数削減
- コスト増吸収
を目指す。
しかし、私はさらに踏み込みます。
コストを吸収する、のではなく
コストを設計段階で織り込むべきです。
営業が売上を追い、
物流が後から調整する。
この構図が残る限り、
見えない待機は消えません。
🔄 川上から川下までの“時間設計”
同社も述べています。
- リードタイム見直し
- 倉庫レイアウト
- 出荷時間設計
- 定時・定期配送化
ここに未来があります。
私はこれを
「時間の標準化戦略」
と呼んでいます。
物流とは距離ではなく、時間の制御です。
時間が制御できれば、
- 待機は消え
- トラックは減り
- 在庫は適正化され
- 人手不足は緩和されます。
🧭 日本アクセス事例の意義と次の段階
私はこの事例を、
CLOモデルの第一段階完成形
だと評価します。
しかし次の段階は明確です。
第1段階
入荷の可視化と待機削減
第2段階
発注構造の再設計
第3段階
営業・商品政策への統合
第4段階
企業戦略そのものへの組み込み
ここまで行って初めて、
CLOは経営機能になります。
🏁 結論
日本アクセスの取り組みは、
間違いなく業界の先行モデルです。
しかし私は、ここで満足しません。
可視化は武器です。
KPI管理は基盤です。
本質は、
物流を“改善対象”から
“経営設計の中心”へ引き上げられるか
です。
CLOはメッセンジャーで終わるのか。
それとも構造を動かすのか。
私は後者であるべきだと考えます。
物流は現場改善の話ではありません。
企業の時間設計そのものです。
ここからが、本当のCLO経営です。