2026年4月の法改正を前に、特定荷主における物流統括管理者(CLO)の設置が進んでいます。
株式会社Hacobuの調査によれば、特定荷主の76.2%が「選任済み」または「選任予定」と回答しました。
制度は動き始めました。 肩書も整い始めました。
しかし、私はここで一つ問いを投げかけたいと思います。
CLOは“機能”するのでしょうか。
■ 76.2%という数字の意味
「選任済み」30.7%
「選任予定」45.5%
合わせて76.2%。
この数字は確かに前向きです。
物流が経営課題として認識され始めていることの表れでもあります。
しかし私は、この数字を“安心材料”とは見ていません。
むしろ――
本当の分岐点はここからです。
■ 出自は多様。しかしそれは“設計”されているか
CLOの出自は以下の通りです。
- 従来の物流部門トップ:36.4%
- 経営企画など全社横断部門:26.0%
- 主力事業トップ:13.0%
- 社長・副社長:11.7%
ここから見えるのは、「物流の人」だけでなく、「経営の人」が担い始めているという事実です。
これは前進です。
しかし同時に、危うさも含んでいます。
物流実務を熟知していない経営層がCLOになる場合、 逆に物流部門の延長線上でCLOが置かれる場合、
どちらも起こり得るのは――
“名ばかりCLO”の誕生です。
肩書はできる。 だが構造が変わらない。
それでは意味がありません。
■ CLOに期待されているのは「専門性」ではなかった
調査で興味深いのは、CLO選任理由です。
- 経営視点を持つ:58.4%
- 全社横断で巻き込める:58.4%
- 専門性・実務知見:18.2%
ここに、現在の日本企業の課題が透けて見えます。
求められているのは「物流の専門家」ではなく、
組織を横断できる統括者
です。
つまりCLOは、
物流改善責任者ではなく、 構造再設計責任者なのです。
■ だが最大の課題は「人材不足」ではない
未選任企業の理由で最多だったのは、
「経営と物流の両方に精通した人材がいない」(47.4%)
しかし私は、これは本質ではないと考えます。
問題は“人”ではなく、
組織が構造的に分断されていること
です。
- 調達は調達
- 生産は生産
- 販売は販売
- 物流は物流
この縦割り構造のまま、 CLOだけを置いても機能は限定的です。
CLOとは人材ポジションではなく、 本来は
サプライチェーンの意思決定構造を再設計する役割
であるはずです。
■ 法令対応で終わるのか、経営再設計へ進むのか
CLOに期待される成果の上位は、
- 法規制対応
- 経営アジェンダ化
- データに基づく現状把握
ここで分岐が起きます。
法令対応で終わるのか。
それとも
物流を経営中枢へ組み込むのか。
もし前者に留まるなら、 2026年は「義務化元年」で終わります。
しかし後者へ進めば、 2026年は
物流経営元年
になります。
■ 物流はついに経営会議に上がった
約8割の企業が、物流を経営会議で取り上げている。
これは大きな変化です。
しかし私は問い続けます。
議題になっているだけで、 意思決定権は与えられているのか。
ここが核心です。
■ 私が見る次のステージ
CLOは誕生します。
約3000人。
しかし本当に問われるのは、
- 組織構造を横断できるか
- KPIを再設計できるか
- 在庫・輸送・拠点配置を経営戦略に接続できるか
つまり、
構造設計力
です。
私はこれから、
CLOを“制度上の存在”ではなく、 “機能する経営装置”へ進化させる議論が必要だと考えています。
■ 結論
CLOは増えます。
だが、機能するCLOはまだ少数でしょう。
肩書の時代は始まりました。
次は――
構造の時代です。
物流が本当に経営アジェンダになるかどうかは、 CLOというポジションの設計次第です。
制度は整いました。
設計は、これからです。