国土交通省が、給水人口100人以下となる地域に対し、「分散型水道システム」の導入を促す方針を示しました。
条件は二つ。
・将来的に給水人口が100人以下になる地域
・人口1人あたり水道管が30メートル以上ある地域
これは単なる水道行政の見直しではありません。
私はここに、日本インフラの“構造転換”を見ています。
■ なぜ今「分散型」なのか
これまでの水道は「集中型」でした。
巨大な浄水場をつくり、 広域に水道管を張り巡らせ、 一括供給する。
しかし人口減少が進む中で、
・管路は長い
・維持費は重い
・更新費用は膨大
という逆転現象が起きています。
人口が減るほど、
一人あたりのインフラ負担は増える。
これは物流でも同じ構造です。
荷量が減るのに配送網だけが残れば、 単価は跳ね上がります。
水道は今、まさにその状態にあります。
■ 「分散型」とは何を意味するのか
分散型水道とは、
・小規模浄水設備を集落単位で設置する
・トラックや船で水を運搬する「運搬送水」
つまり、
水を“流す”のではなく、“運ぶ”という発想
です。
ここで決定的な転換が起きます。
水道が、物流になる。
■ インフラの物流化という構造変化
これまで水道は「固定インフラ」でした。
しかし分散型は違います。
・輸送手段が必要
・在庫管理が必要
・配送計画が必要
・BCP設計が必要
完全に物流設計の世界です。
つまり、これは単なる水道政策ではなく、
社会インフラの物流化
なのです。
■ 物流業界にとっての意味
ここが重要です。
水の運搬が増えれば、
・専用タンクローリー需要
・小口分散配送モデル
・離島・山間部輸送設計
・自治体との連携物流
新たな公共物流市場が生まれます。
一方で、
水は「止められない商材」です。
食品より優先度が高い。
つまり、
公共インフラ物流という新カテゴリ
が形成される可能性があります。
■ しかし課題は山積している
水は重い。
1立方メートル=1トン。
大量輸送にはコストがかかります。
さらに、
・道路寸断時の対応
・災害時バックアップ
・輸送中の品質管理
・コスト負担の所在
ここが未整理のままでは、
分散型は“理論上の解決策”で終わります。
■ 本質は「縮小社会のインフラ再設計」
私はこの政策を、
「水道の話」ではなく、
縮小社会におけるインフラ再設計の実験
だと見ています。
これから日本は、
・電力
・ガス
・医療
・物流
あらゆるインフラで「集中型の維持」が困難になります。
そのとき必要なのは、
“巨大化”ではなく
適正規模化
です。
■ 物流構造設計の出番
分散型水道が機能するかどうかは、
輸送設計で決まります。
・どの頻度で
・どの容量で
・どの拠点から
・どのルートで
・どのコスト負担で
これは完全に物流設計領域です。
つまり水道改革は、
物流思考なしには成立しない。
■ 問い
水道はこれからも「管」で守るのか。
それとも
「ネットワーク」で守るのか。
人口減少社会では、
インフラは固定資産から 変動資産へと変わります。
そしてその中心に来るのが、
物流です。
■ 結論
分散型水道は、 コスト削減策ではありません。
これは、
インフラを物流化する宣言
です。
そして物流業界は、
単なるモノ運びから、
社会基盤設計者へと役割を広げる可能性があります。
水をどう運ぶか。
それは、
日本の縮小社会をどう設計するかという問いと 同義です。