――閣議決定された物流効率化法改正が描く、日本物流インフラの次の形
2026年3月6日、政府は
「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律案」
を閣議決定しました。
今回の改正の中心に据えられているのは、
「中継輸送の推進」
です。
長距離輸送を1人のドライバーが担うのではなく、
複数のドライバーが分担して輸送する。
政府はこれを
ドライバー不足時代の物流維持モデルとして位置付けています。
しかし、この政策を単なる働き方改革として捉えると
本質を見誤ります。
私は以前の記事でも指摘しましたが、
今回の政策の本当の意味は
長距離トラック輸送という旧モデルの構造的終了
にあります。
1|2024年問題が突きつけた「長距離輸送の限界」
物流危機の直接の引き金は
いわゆる 2024年問題 です。
ドライバーには
・時間外労働の上限規制
・拘束時間の厳格化
が適用されました。
その結果、これまで当たり前だった
1人のドライバーが長距離を一気に走りきる輸送
は、制度上も物理的にも維持が難しくなりました。
ここで政府が打ち出したのが
中継輸送モデル
です。
例えば
九州 → 関西 → 関東
といった幹線輸送を
- 九州ドライバー
- 関西ドライバー
- 関東ドライバー
が分担する形にする。
一見すると合理的な解決策に見えます。
しかし、ここにはもっと大きな意味があります。
2|中継輸送は「物流構造の書き換え」
今回の法改正の重要ポイントは
単なる推奨ではなく
制度として中継輸送を促進する
点にあります。
具体的には
- 国土交通大臣が基本方針を策定
- 国・自治体・事業者の協働を努力義務化
- 「貨物自動車中継輸送実施計画」の認定制度創設
つまり、
国家が中継型物流へ誘導する仕組み
が作られたのです。
これは単なる業務改善ではありません。
言い換えれば
物流ネットワークの構造転換
です。
これまでの日本物流は
1台のトラックが
出発地から目的地まで一気に走る
という「直行型モデル」が基本でした。
しかし中継輸送は
拠点を経由して
荷物を繋ぐネットワーク型モデル
へと転換させます。
つまりこれは
物流のOSを入れ替える改革
とも言えるでしょう。
3|中継拠点は「物流インフラ」になる
中継輸送が広がると
物流拠点の役割は大きく変わります。
これまでの物流施設は
・保管
・仕分け
・配送
が主な役割でした。
しかし中継型物流では
拠点は
輸送ネットワークのハブ
になります。
例えば
- ドライバー交代
- トラック乗り換え
- 積み替え
- ダイヤ管理
などを担う
運行プラットフォーム
として機能します。
つまり物流拠点は
倉庫
↓
輸送インフラ
へと進化します。
これは以前の記事で触れた
中継拠点税優遇政策とも完全に連動しています。
点だった政策が
一本の線で繋がり始めたと言えるでしょう。
4|見落とされがちな「物流コスト」の問題
ただし、中継輸送には
一つ大きな課題があります。
それは
コスト増加の可能性
です。
中継輸送では
・積み替え作業
・拠点運営
・運行調整
が発生します。
つまり
輸送の手間が増える
構造になります。
これを吸収できるかどうかは
- 荷主の理解
- 物流契約の見直し
- SCM設計
にかかっています。
もしここが変わらなければ、
中継輸送は現場の負担を増やすだけ
という結果にもなりかねません。
5|【CLO視点】本当に問われているもの
今回の法改正は
ドライバー不足対策のように見えます。
しかし本質は
物流構造の再設計
です。
CLOに求められるのは
単なる輸送改善ではなく
- 幹線輸送の再構築
- 在庫配置の再設計
- 拠点戦略の見直し
といった
サプライチェーン全体の設計変更
です。
つまり
物流部門の仕事が
「輸送手配」から
「物流インフラ設計」へ変わる
ということです。
結論|中継輸送は「物流時代の転換点」
今回の閣議決定は
一見すると地味な制度改正です。
しかしその裏側では
日本の物流モデルの転換
が始まっています。
長距離ドライバーが
1人で全国を走る時代は終わり、
拠点を繋ぎながら
輸送ネットワークを構築する時代へ。
そしてその中心にあるのが
中継拠点
です。
物流の未来を決めるのは
トラックの台数ではありません。
物流ネットワークをどう設計するか。
2026年は、その設計思想が
大きく書き換えられる年になるのかもしれません。
編集後記|物流改革は「点」ではなく「線」で進む
物流政策はこれまで
- 2024年問題
- 中継拠点税優遇
- 効率化法改正
と、個別の施策として語られてきました。
しかし今振り返ると、
すべては一つの方向を指しています。
それは
直行型物流から
ネットワーク型物流への転換
です。
荷物を一気に運ぶのではなく、
拠点で繋ぎながら輸送する。
この構造転換を先に理解した企業が、
これからの物流競争を制することになるでしょう。