物流改革という言葉を聞くと、多くの企業は次のような施策を思い浮かべます。
- 倉庫自動化
- AI需要予測
- 物流DXシステム導入
しかし実務の現場で利益構造を本当に変えるのは、
こうしたテクノロジーではありません。
物流改革の本質は
物流構造そのものを切り直すこと
です。
私はこれを
「動線設計の外科手術」
と呼んでいます。
なぜなら物流の問題の多くは、
- 商品構成
- 拠点配置
- 輸送動線
という構造が、長年の慣習によって複雑化していることにあるからです。
つまり物流改革とは、
余計な構造を削ぎ落とす作業
なのです。
しかしここで必ず立ちはだかるのが、
社内政治
です。
物流改革の最大の壁は「社内政治」
物流改革の障害は、
システムでも人材でもありません。
多くの場合、それは
社内の慣習
です。
企業の中では、次のような声が必ず上がります。
営業
「この商品は長年のお客様向けなので残したい」仕入先
「昔からこの流れで納品しています」拠点部門
「この拠点は地域の歴史がある」
つまり物流構造には、
数多くの“聖域”
が存在します。
そしてこの聖域を突破しない限り、
物流改革は前に進みません。
CLOの役割は単なる物流責任者ではありません。
CLOとは
物流構造を再設計する役割
です。
そのためには、
- 不採算SKUの整理
- 物流拠点の再配置
- 供給動線の再設計
といった構造改革を
数値を根拠に断行する必要があります。
不採算SKUの整理
── 「売れない商品」が物流を重くする
多くの企業の売上構造は、
次のような特徴を持っています。
| SKU構成 | 売上比率 |
|---|---|
| 上位20% | 売上80% |
| 下位80% | 売上20% |
これはいわゆる
パレート構造
です。
しかし物流コストはこの構造とは逆になります。
SKUが増えるほど、
- 在庫管理
- 保管スペース
- ピッキング
- 補充作業
が増加します。
つまり
売れていない商品ほど物流コストを押し上げる
という現象が起きます。
実務例:食品メーカーのSKU整理
ある食品メーカーでは、
約1200SKUの商品を扱っていました。
売上分析の結果、
- 上位200SKU → 売上78%
- 下位1000SKU → 売上22%
という構造でした。
しかし倉庫作業を分析すると、
下位SKUが作業の約60%
を占めていました。
そこで次の施策を実施しました。
- SKUを1200 → 600へ削減
- 低回転商品の廃番
- 類似商品の統合
結果として
- 在庫回転率改善
- 倉庫作業30%削減
- 在庫金額40%削減
が実現しました。
このとき重要なのは、
感覚ではなく数値で説明すること
です。
営業部門の反対を突破するためには、
「売上」ではなく
利益と物流コスト
のデータで示す必要があります。
物流拠点の再設計
── 歴史で作られた拠点構造を疑う
物流拠点の多くは、
合理的に設計されたものではありません。
多くの場合、
- 旧営業所
- M&Aで増えた倉庫
- 地域販売会社の名残
などの歴史的理由で存在しています。
しかし現代物流では
輸送ネットワーク
が効率を決めます。
重要なのは
- 需要地との距離
- 幹線輸送
- 高速道路アクセス
です。
拠点数が多いほど良いわけではありません。
むしろ
在庫分散
を引き起こすことが多いのです。
実務例:アパレル企業の拠点統合
あるアパレル企業では、
全国に6つの物流拠点が存在していました。
しかし分析すると、
- 在庫分散
- 店舗補充の重複輸送
- 在庫ロス
が発生していました。
そこで
- 6拠点 → 2拠点へ統合
- 幹線輸送導入
- 店舗配送ルート再設計
を実施しました。
結果として
- 在庫30%削減
- 物流費20%削減
- 欠品率改善
が実現しました。
拠点統合は必ず
組織的抵抗
が起きます。
だからこそ必要なのが
物流データによるエビデンス
です。
供給動線の再設計
── 物流コストは「通過回数」で決まる
物流構造を分析すると、
モノが何度も倉庫を通っているケースがよくあります。
例えばこのような構造です。
工場 ↓ 地域倉庫 ↓ 中央倉庫 ↓ 配送センター ↓ 店舗
この場合
- 荷役回数
- 保管コスト
- 輸送距離
が増加します。
つまり
倉庫通過回数が多いほどコストは上がります。
実務例:飲料メーカーの動線改革
ある飲料メーカーでは、
次のような供給動線でした。
工場 ↓ 地域DC ↓ 小売DC
しかし分析すると、
地域DCは
実質的な通過拠点
でした。
そこで
クロスドック化
を実施しました。
工場 ↓ クロスドック ↓ 小売DC
結果として
- 在庫削減
- 荷役削減
- リードタイム短縮
が実現しました。
動線設計とは、
モノの通過回数を減らす設計
でもあります。
数値的エビデンスの構築術
物流改革を進めるためには、
感覚ではなく数値
が必要です。
特に重要なのは次の三つです。
SKU別利益分析
- 商品別売上
- 商品別物流コスト
- 商品別利益
拠点コスト分析
- 拠点固定費
- 在庫分散コスト
- 輸送距離
動線分析
- 輸送回数
- 荷役回数
- リードタイム
これらのデータを揃えることで、
初めて
聖域にメスを入れる根拠
が生まれます。
まとめ
CLOの仕事は「構造にメスを入れること」
物流改革とは、
単なる効率化ではありません。
それは
構造改革
です。
見直すべきポイントは三つです。
- 不採算SKU
- 物流拠点
- 供給動線
そしてその改革を進めるうえで最大の壁は、
社内政治
です。
だからこそCLOに求められるのは、
数値的エビデンス
です。
データをもとに
- 商品を整理し
- 拠点を再設計し
- 動線を最適化する
この
動線設計の外科手術
こそが、
物流改革の本質なのです。