物流業界入門

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【CLO特集 外伝②】聖域なき「動線設計」の外科手術── 不採算SKU・物流拠点・供給動線をどう再設計するのか

物流改革という言葉を聞くと、多くの企業は次のような施策を思い浮かべます。

  • 倉庫自動化
  • AI需要予測
  • 物流DXシステム導入

しかし実務の現場で利益構造を本当に変えるのは、
こうしたテクノロジーではありません。

物流改革の本質は

物流構造そのものを切り直すこと

です。

私はこれを

「動線設計の外科手術」

と呼んでいます。

なぜなら物流の問題の多くは、

  • 商品構成
  • 拠点配置
  • 輸送動線

という構造が、長年の慣習によって複雑化していることにあるからです。

つまり物流改革とは、

余計な構造を削ぎ落とす作業

なのです。

しかしここで必ず立ちはだかるのが、

社内政治

です。


物流改革の最大の壁は「社内政治」

物流改革の障害は、
システムでも人材でもありません。

多くの場合、それは

社内の慣習

です。

企業の中では、次のような声が必ず上がります。

  • 営業
    「この商品は長年のお客様向けなので残したい」

  • 仕入先
    「昔からこの流れで納品しています」

  • 拠点部門
    「この拠点は地域の歴史がある」

つまり物流構造には、

数多くの“聖域”

が存在します。

そしてこの聖域を突破しない限り、

物流改革は前に進みません。

CLOの役割は単なる物流責任者ではありません。

CLOとは

物流構造を再設計する役割

です。

そのためには、

  • 不採算SKUの整理
  • 物流拠点の再配置
  • 供給動線の再設計

といった構造改革を

数値を根拠に断行する必要があります。


不採算SKUの整理

── 「売れない商品」が物流を重くする

多くの企業の売上構造は、

次のような特徴を持っています。

SKU構成 売上比率
上位20% 売上80%
下位80% 売上20%

これはいわゆる

パレート構造

です。

しかし物流コストはこの構造とは逆になります。

SKUが増えるほど、

  • 在庫管理
  • 保管スペース
  • ピッキング
  • 補充作業

が増加します。

つまり

売れていない商品ほど物流コストを押し上げる

という現象が起きます。


実務例:食品メーカーのSKU整理

ある食品メーカーでは、

約1200SKUの商品を扱っていました。

売上分析の結果、

  • 上位200SKU → 売上78%
  • 下位1000SKU → 売上22%

という構造でした。

しかし倉庫作業を分析すると、

下位SKUが作業の約60%

を占めていました。

そこで次の施策を実施しました。

  • SKUを1200 → 600へ削減
  • 低回転商品の廃番
  • 類似商品の統合

結果として

  • 在庫回転率改善
  • 倉庫作業30%削減
  • 在庫金額40%削減

が実現しました。

このとき重要なのは、

感覚ではなく数値で説明すること

です。

営業部門の反対を突破するためには、

「売上」ではなく

利益と物流コスト

のデータで示す必要があります。


物流拠点の再設計

── 歴史で作られた拠点構造を疑う

物流拠点の多くは、

合理的に設計されたものではありません。

多くの場合、

  • 旧営業所
  • M&Aで増えた倉庫
  • 地域販売会社の名残

などの歴史的理由で存在しています。

しかし現代物流では

輸送ネットワーク

が効率を決めます。

重要なのは

  • 需要地との距離
  • 幹線輸送
  • 高速道路アクセス

です。

拠点数が多いほど良いわけではありません。

むしろ

在庫分散

を引き起こすことが多いのです。


実務例:アパレル企業の拠点統合

あるアパレル企業では、

全国に6つの物流拠点が存在していました。

しかし分析すると、

  • 在庫分散
  • 店舗補充の重複輸送
  • 在庫ロス

が発生していました。

そこで

  • 6拠点 → 2拠点へ統合
  • 幹線輸送導入
  • 店舗配送ルート再設計

を実施しました。

結果として

  • 在庫30%削減
  • 物流費20%削減
  • 欠品率改善

が実現しました。

拠点統合は必ず

組織的抵抗

が起きます。

だからこそ必要なのが

物流データによるエビデンス

です。


供給動線の再設計

── 物流コストは「通過回数」で決まる

物流構造を分析すると、

モノが何度も倉庫を通っているケースがよくあります。

例えばこのような構造です。

工場
↓
地域倉庫
↓
中央倉庫
↓
配送センター
↓
店舗

この場合

  • 荷役回数
  • 保管コスト
  • 輸送距離

が増加します。

つまり

倉庫通過回数が多いほどコストは上がります。


実務例:飲料メーカーの動線改革

ある飲料メーカーでは、

次のような供給動線でした。

工場
↓
地域DC
↓
小売DC

しかし分析すると、

地域DCは

実質的な通過拠点

でした。

そこで

クロスドック化

を実施しました。

工場
↓
クロスドック
↓
小売DC

結果として

  • 在庫削減
  • 荷役削減
  • リードタイム短縮

が実現しました。

動線設計とは、

モノの通過回数を減らす設計

でもあります。


数値的エビデンスの構築術

物流改革を進めるためには、

感覚ではなく数値

が必要です。

特に重要なのは次の三つです。

SKU別利益分析

  • 商品別売上
  • 商品別物流コスト
  • 商品別利益

拠点コスト分析

  • 拠点固定費
  • 在庫分散コスト
  • 輸送距離

動線分析

  • 輸送回数
  • 荷役回数
  • リードタイム

これらのデータを揃えることで、

初めて

聖域にメスを入れる根拠

が生まれます。


まとめ

CLOの仕事は「構造にメスを入れること」

物流改革とは、

単なる効率化ではありません。

それは

構造改革

です。

見直すべきポイントは三つです。

  • 不採算SKU
  • 物流拠点
  • 供給動線

そしてその改革を進めるうえで最大の壁は、

社内政治

です。

だからこそCLOに求められるのは、

数値的エビデンス

です。

データをもとに

  • 商品を整理し
  • 拠点を再設計し
  • 動線を最適化する

この

動線設計の外科手術

こそが、

物流改革の本質なのです。