――物流現場に突きつけられた「制度の限界」と「設計責任」
2026年4月。
厚生労働省は、時間外労働を可能にする「36協定」について、
締結・改定の支援強化という方針を打ち出しました。
背景には、
- 上限規制で「現場が回らない」という声
- そもそも36協定未締結が42.3%という実態
があります。
一見すると、
「制度をもっと使いやすくする」
という話に見えます。
しかし物流の現場から見れば、これはもっと重い意味を持ちます。
■ 結論 ── 36協定は“解決策”ではない。“延命措置”である
まず断言します。
36協定は、
- 問題を解決する制度ではない
- 問題を先送りする制度です
時間を延ばしても、物流は改善しない
むしろ今、問われているのは、
「時間で解決するか」「構造で解決するか」
という選択です。
■ なぜ今「活用支援」なのか
今回の動きの背景は明確です。
① 上限規制の“現実”
働き方改革により、
- 時間外労働の上限
- 罰則付き規制
が導入されました。
結果として現場では、
- 配送が間に合わない
- シフトが組めない
- 人が足りない
“回らない”という現実が顕在化
② 制度が使われていない
厚労省の調査では、
36協定未締結:42.3%
つまり、
- 制度はある
- しかし使われていない
ここに対して、
「まず使わせる」方向に舵を切ったのが今回の施策です。
■ 物流視点での本質
ここが重要です。
物流はもともと、
時間に依存する産業
です。
- 納期
- 配送時間
- リードタイム
これらを守るために、
“人の時間を延ばす”ことで成立してきた
しかし上限規制によって、
この前提が崩れました。
■ 36協定が意味するもの
36協定とは何か。
「時間で調整する余地」
です。
これを使えば、
- 繁忙期対応
- 突発対応
は可能になります。
しかし同時に、
構造問題を温存する装置
でもあります。
■ 現場で起きる3つの誤解
今回の支援強化で、現場はこう動きます。
① 「これで乗り切れる」
短期的には正しい。
しかし、
問題は何も解決していない
② 「制度を使えば合法」
確かに合法です。
しかし、
持続可能ではない
③ 「人を増やせばいい」
現実は逆です。
- 人は増えない
- 採用コストは上昇
人に依存する設計自体が限界
■ 本当のボトルネック
物流の問題は、
時間ではありません。
▶ 非効率な積載
- 空気輸送
- 低積載率
▶ 待機時間
- 荷待ち
- バース不足
▶ 荷役構造
- 手積み
- 手降ろし
これらはすべて、
“時間を使って吸収してきたムダ”
36協定は、
このムダを隠すための装置に過ぎません。
■ 本質 ── 「時間管理」から「構造設計」へ
今、物流は転換点にいます。
これまで
- 時間を延ばす
- 人で吸収する
これから
- 積載を設計する
- 待機をなくす
- 標準化する
“時間”ではなく“構造”で解決する時代
■ 政策の読み方
今回の施策は失敗ではありません。
むしろ現実的です。
- いきなり構造改革はできない
- まずは制度活用で延命
しかし同時に、
「時間ではもう限界だ」というメッセージ
でもあります。
■ 結論
36協定の活用支援は、
物流の問題が“制度の問題ではない”ことを逆説的に示している
■ 最後に
物流構造設計士として断言します。
これからの分岐は明確です。
- 時間で回す企業
- 構造で回す企業
前者は、限界まで延命する。
後者は、最初に苦しみ、最後に残る。
問われているのは、
「あと何時間働けるか」ではない
「時間に依存しない設計を持っているか」
36協定は、その問いから逃げるための制度か、
それとも移行期間を稼ぐための制度か。
使い方で、企業の未来は決まります。と