――ガソリン170円維持の先で、日本経済は何を選ぶべきか
原油高が続いています。
ホルムズ海峡の緊張は、 エネルギー供給の不確実性を一段と高めました。
日本政府は現在、 ガソリン価格を1リットル170円程度に抑える補助金を継続しています。
家計や企業にとって、 この政策は確かに“痛み止め”です。
しかし、 日本経済新聞社と日本経済研究センターによる 「エコノミクスパネル」では、 経済学者の約9割が
補助金は縮小または撤廃すべき
と回答しました。
なぜか。
それは、 この問題が単なる価格問題ではないからです。
原油高の本質は、エネルギー価格ではなく、物流の不確実性にある。
そして今、日本経済が向き合っているのは、
供給制約型スタグフレーション
です。
■ スタグフレーションの正体は「物流の詰まり」
【構造考察】スタグフレーションは“経済問題”ではない ── 物流が止まると、成長も止まる - 物流業界入門
以前にも取り上げましたがスタグフレーションとは、
- 景気が停滞する
- それでも物価が上がる
という厄介な状態です。
通常なら、 景気が悪ければ物価は落ち着きます。
しかし今回は違います。
需要が強いから値上がりしているのではない。
供給が滞っているから、価格が上がっている。
つまり、
今回のスタグフレーションは金融現象ではなく、物流現象です。
■ なぜ補助金では解決できないのか
補助金は、 価格上昇のショックを和らげます。
しかし、 問題そのものを解決するわけではありません。
原油高が長期化すれば、 2~3カ月で約1兆円の財源が必要になるとも試算されています。
これは、
時間を買う政策
ではあっても、
構造を変える政策ではない
ということです。
原油価格を抑えても、
- 調達リスク
- 輸送リスク
- 供給不安
は残り続けます。
■ 物流が“コストの起点”になる時代
原油高の影響を最も強く受けるのが物流です。
- トラックの燃料費
- 海運の燃料コスト
- 航空貨物の燃油サーチャージ
- 倉庫の電力費
これらすべてが上昇します。
さらに厄介なのは、 単なる燃料高ではありません。
時間そのものがコスト化している
ことです。
- 港で滞留する
- 荷役が遅れる
- 配送が読めない
その結果、
モノはあるのに、届かない
という事態が起きます。
■ 「作れないから売れない」が景気を冷やす
企業活動も大きな影響を受けます。
- 原材料が届かない
- 納期が見えない
- コストが確定しない
この状態では、 企業は積極的に動けません。
つまり、
需要がないから生産しないのではない。
供給が不安定だから、生産できない。
これが、 成長鈍化の本質です。
■ 消費抑制策の本当の意味
IEAは、 在宅勤務や公共交通利用促進など、 石油消費を抑える施策を提言しています。
これは「我慢」ではありません。
本質は、
エネルギー効率の高い社会への移行
です。
物流で言えば、
- 配送ルート最適化
- 積載率向上
- モーダルシフト
- 共同配送
- 代替燃料導入
そのものです。
つまり、
消費を減らすのではなく、無駄を減らす。
ここに本質があります。
■ なぜ金融政策では解決できないのか
日銀は利上げ判断を迫られています。
しかし、 今回のインフレは
需要過熱型ではなく、供給制約型
です。
そのため、
- 利上げ → 景気をさらに冷やす
- 利下げ → インフレ圧力を高める
というジレンマに陥ります。
金利では物流は動かせない。
ここが最大のポイントです。
■ 日本が本当にやるべきこと
必要なのは、 ガソリン価格を抑え続けることではありません。
必要なのは、
原油高でも回る経済構造を作ること
です。
その中核にあるのが物流です。
▶ 輸送効率の最大化
- 積載率向上
- 共同配送
- AI配車
▶ エネルギー源の多様化
- EV
- 水素
- バイオ燃料
▶ サプライチェーンの再設計
- 地産地消化
- 輸送距離短縮
- ルート分散
▶ 在庫戦略の見直し
- JIT一辺倒から脱却
- 戦略的バッファ確保
▶ 時間の契約化
- リードタイム明確化
- 待機時間の有償化
■ 結論
原油高は、 単なるエネルギー価格の問題ではありません。
それは、
日本経済の物流依存構造を問い直す警鐘
です。
補助金は、 あくまで応急処置にすぎません。
本当に必要なのは、
「安い燃料」を前提にした経済から、 「高い燃料でも回る経済」への転換
です。
そして、 その鍵を握るのが物流です。
経済は、 価格で動いているのではありません。
流れで動いています。
だからこそ、
価格を見るな。流れを見ろ。
流れを制御できる企業、 流れを再設計できる国だけが、
この供給制約型スタグフレーションを 乗り越えることができるのです。