アルミ価格の見方が、いま根本から変わろうとしています。
これまで日本企業のアルミ調達は、
- LME(ロンドン金属取引所)価格
- MJP(対日プレミアム)
この2軸でほぼ説明できました。
しかし、 ホルムズ海峡危機によって、 その前提は崩れました。
いま新たに立ち上がっているのが、
物流という第3の価格軸
です。
しかもその規模は、
1トン当たり300ドル超
MJP平均351.5ドルに匹敵します。
これはもはや、 「輸送コストの上昇」というレベルではありません。
アルミの着地価格を左右する、新たな相場
です。
■ これまでのアルミ価格は「2軸」で決まっていた
従来の価格構造はシンプルでした。
▶ 第1軸:LME
金属そのものの国際価格
▶ 第2軸:MJP
中東など産地から日本までのプレミアム
調達部門は、
LMEをヘッジし、 MJPを四半期ごとに交渉する
この枠組みで価格管理を行ってきました。
しかし、 ホルムズ危機はこの設計の外側で 新たなコストを生み出しています。
■ 第3の価格軸とは何か
それは、
運賃・保険・時間
です。
これらは金属価格とは独立して動きます。
つまり、
LMEが下がっても、 調達コストが下がらない
という現象が起きるのです。
ここが最大のポイントです。
■ 1トン300ドル超、その内訳
▶ 海運運賃
SCFI中東航路は 1TEU=4,167ドル。
戦争前の約4倍です。
アルミ22トン積みで換算すると、
1トン当たり約189ドル
▶ 戦争リスクサーチャージ
- ハパックロイド:1TEU 1,500ドル
- マースク:20ft 1,800ドル
1トン換算では、
68~82ドル
▶ 合計
- ハパックロイド利用:257ドル/トン
- マースク利用:271ドル/トン
ここまでは、 まだ「見えるコスト」です。
■ 見えないコストがさらに重い
ここに加わるのが、
- 保管費
- 戦争リスク保険転嫁
- リードタイム延長
- 在庫金利負担
です。
特に重要なのは、
時間がコスト化していること
マースクでは 15日目以降、
1TEUあたり1日25ドル
の保管費が発生します。
アルミ換算では、
1トン1日あたり約1.1ドル
30日で33ドル、 60日で66ドル。
さらに運転資金コストを加えると、
時間コストだけで50~100ドル/トン
に達する可能性があります。
■ なぜこれは危険なのか
理由は明確です。
このコストはLMEでもMJPでもヘッジできない
からです。
つまり、
- LMEヘッジは効かない
- MJP交渉でも吸収できない
調達部が管理してきた価格設計の 「外側」でコストが膨らんでいるのです。
■ 問題の本質 ── 部門分断
多くの日本企業では、
- 調達部:LME・MJP
- 物流部:輸送契約
- 財務・総務:保険
と分かれています。
その結果、
第3の価格軸を誰も全体管理していない
という構造が生まれています。
これは非常に危険です。
なぜなら、
コストは一体で発生しているのに、 管理は分断されている
からです。
■ 物流危機は「価格」ではなく「設計」の問題
本質は、 運賃高騰そのものではありません。
価格変動を企業内部で統合管理できていないこと
です。
物流・保険・在庫・調達を 一つの経営変数として扱えていない。
これこそが最大のリスクです。
■ 企業が今すぐ取るべき対策
▶ ① 運賃指数連動契約
SCFI上昇分を船社と分担する
▶ ② サーチャージ上限条項
戦争リスク課金に天井を設定する
▶ ③ Cargo War保険の再点検
担保範囲・免責条件を確認する
▶ ④ 在庫戦略の再設計
安全在庫を積み増す
▶ ⑤ 部門横断管理
調達・物流・財務を統合する
■ 今後さらに高まるリスク
ホルムズ海峡では、
- 通航許可制
- 通行料徴収
の制度化が進んでいます。
これが本格化すれば、
第3の価格軸はさらに肥大化する
可能性があります。
しかも、 このコストは
- LME
- MJP
- SCFI
いずれにも完全には反映されません。
つまり、
見えにくいまま利益を侵食する
のです。
■ 結論
アルミ価格は、 もはやLMEとMJPだけでは読めません。
いま必要なのは、
金属を買う発想から、 物流込みで調達を設計する発想への転換
です。
価格は3つの軸で決まる時代に入りました。
- 金属価格
- プレミアム
- 物流コスト
そして最も変動しやすいのが、 この第3軸です。
価格を見るな。着地原価を見よ。
この視点を持てる企業だけが、 ホルムズ危機後の資源調達を 安定させることができます。
物流は、 もはや単なる輸送機能ではありません。
価格そのものを決める経営機能
になったのです。