📊 データ出所
本記事は、東京商工リサーチ「2025年 全国新設法人動向調査」(2026年5月12日公表)を基に分析しています。
2025年、全国の新設法人は15万7011社。
これは調査開始以降、最多の数字です。
一見すると、日本経済は活発化しているように見えます。
しかし、この数字を物流という視点で見たとき、
まったく違う景色が浮かび上がってきます。
増えているのに、楽になっていない
これが、いまの物流業界の現実です。
■ 運輸業は「増えている」
物流関連では、運輸業の新設法人が2660社。
前年比2.5%増と、増加に転じています。
背景として挙げられているのは、
- 運賃適正化の流れ
- 荷主との価格交渉の進展
- 2024年問題による市場の再編期待
一見すると、参入環境は改善しているように見えます。
「運賃が上がるなら参入できる」
この判断自体は、合理的です。
しかしここに、大きな落とし穴があります。
■ なぜ増えるのか ――「構造の誤解」
いま起きているのは、需要増ではありません。
“歪みの再分配”です
2024年問題によって、
- 長時間労働で吸収していた余白が消え
- 1社あたりの処理能力が実質的に低下した
結果として、
同じ荷物量でも「会社数が必要になる」構造
に変わっています。
つまり、
市場が伸びたのではなく、効率が落ちた
これが本質です。
■ 一方で「倒産」と「廃業」は過去最多
しかし現実は厳しいです。
- 倒産:1万300社(2年連続1万社超)
- 休廃業・解散:6万7210社(過去最多)
増えているのに、同時に消えている
これは明確に、
“入れ替わりが激化している”状態
です。
■ 生き残る会社と消える会社の違い
ここで分岐が起きています。
■ 生き残る側
- 荷主と対話できる
- 運賃交渉ができる
- 労務管理を守れる
- 業務設計ができる
■ 消える側
- 下請け構造から抜けられない
- 運賃を決められない
- 人材が確保できない
- 燃料・車両コストを吸収できない
つまり、
“運ぶ会社”から“設計する会社”へ
この転換ができるかどうかです。
■ なぜ地方はさらに厳しくなるのか
データでは、新設法人の約6割が東京都に集中しています。
これは偶然ではありません。
■ 都市部
- EC需要が集中
- 高単価配送が成立
- 人材確保が比較的容易
■ 地方
- 荷量が減少
- 長距離依存
- 人材不足が深刻
結果として、
「物流の空白地帯」が現実になりつつある
■ 見落とされている本質
多くの議論は、
- ドライバー不足
- 燃料高
- 価格転嫁
に集中しています。
しかし、それだけでは不十分です。
問題は“構造”です
寄稿記事でも触れましたが、
「トラックを休ませた代償がこれですか?」 残業960時間規制で露呈した、物流が止まる“もう一つの現場” | Merkmal(メルクマール)
物流2024年問題の本質は
「運べないこと」ではなく「滞留すること」です
■ 物流は「運ぶ産業」ではなくなった
いま起きている変化は明確です。
これまで
→ どれだけ運べるか
これから
→ どれだけ滞留を減らせるか
つまり、
ボトルネックは「輸送」から「接続」へ移行した
■ 新設法人増加の“本当の意味”
このデータをポジティブに捉えるのは危険です。
参入が増えているのではない
“余裕がなくなって分散している”だけ
■ 結論
物流業界はいま、
拡大ではなく「再編」のフェーズにある
そして問われているのは、
誰が運ぶか
ではなくどう繋ぐか
物流は“量の勝負”から“構造の勝負”へ
この変化を理解できない企業から、
静かに市場から消えていきます。
増えているのに、生き残れない時代
それが、いまの物流です。