物流業界入門

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【多業種物流儀⑨】酒類物流――「重い・割れる・回収する」 酒の物流が“想像以上に難しい”理由

酒類倉庫の現場担当者に話を聞きました。

最近は自動倉庫も増えていますが、

「しょっちゅう止まる」 「維持費が重い」 「導入したほど楽になった感じがしない」

という声も出ています。

物流DXと言えば聞こえは良いですが、 現場では、

「止まった瞬間、全部が詰まる」

という恐怖も同時に抱えています。

今回は、 意外と語られない

「酒類物流の特殊性」

を整理します。


■ 酒類物流は、実はかなり難易度が高い

一見すると、

  • ケースを積むだけ
  • パレット輸送だけ

に見えるかもしれません。

しかし実際は、 かなり複雑です。


■ ① とにかく重い

まず単純に、

「重量物」

です。

特に飲料系は、

  • ビール
  • 缶酎ハイ
  • 日本酒
  • 焼酎
  • ワイン

など、 液体そのものが重い。

つまり、

  • フォーク負荷
  • パレット重量
  • 床荷重
  • 作業負担

すべてが大きくなります。

しかも酒類は、 ケース単位の手作業も多い。

腰を壊す人も少なくありません。


■ ② 「割れる」

酒類物流は、

「破損リスク」

とも常に隣り合わせです。

特に瓶製品。

  • ワイン
  • 日本酒
  • 洋酒

などは、 破損した瞬間に、

  • 商品ロス
  • 清掃
  • 異臭
  • 滑り事故

まで発展します。

つまり単なる欠品ではなく、

「現場停止」

に繋がる。

これが酒物流の怖さです。


■ ③ 空容器回収がある

ここが非常に特殊です。

酒物流は、

「運んで終わり」

ではありません。

  • 空樽
  • 空瓶
  • ケース
  • P箱

などの回収が発生します。

つまり、

「往復物流」

です。

特にビール系は、 回収容器管理が物流そのものを複雑化させています。

納品だけ考えれば良い一般物流と違い、

  • 何を
  • どこで
  • 何枚
  • 何本
  • どれだけ回収したか

まで追わなければならない。

物流というより、

「循環管理」

に近い世界です。


■ ④ 温度管理も必要

酒は全部常温だと思われがちですが、 実際は違います。

例えば、

  • 生酒
  • 一部ワイン
  • クラフトビール
  • 発酵系商品

などは温度管理が必要。

つまり、

「飲料物流」 「食品物流」

両方の性格を持っています。

これが難しい。


■ ⑤ メーカー共同配送が非常に活発

酒類物流の特徴として、

「共同配送文化」

がかなり強いことも挙げられます。

理由は単純で、

  • 重い
  • 物量が大きい
  • 納品先が共通
  • 空容器回収もある

ためです。

例えば同じスーパーや飲食店に、

  • ビール
  • 清酒
  • 飲料
  • 調味料

を別々で運ぶのは非効率。

そのため酒業界では昔から、

「積み合わせ」

が発達してきました。

実は物流2024年問題より前から、

  • 共同配送
  • 幹線集約
  • エリア共同便

などをかなり進めてきた業界でもあります。

これは裏を返せば、

「単独配送では成立しにくい」

業界とも言えます。


■ ⑥ 自動倉庫との相性問題

最近は酒類倉庫でも、 自動倉庫導入が増えています。

しかし現場では、

  • エラー停止
  • メンテ負荷
  • システム依存
  • 復旧時間
  • 保守コスト

への不満も強い。

酒類物流は、

  • 重量
  • SKU数
  • 季節波動
  • 特売偏重

が激しいため、

理論通りに綺麗に回らない。

特売前に物量が爆発すれば、 結局最後は、

「人海戦術」

になります。


■ 酒物流は「波動」が極端

特に大変なのが、

  • 年末
  • お盆
  • GW
  • 花見
  • 父の日
  • イベント

です。

需要変動が極端。

しかも、

「欠品は絶対NG」

という圧力が強い。

結果、

  • 前倒し入庫
  • 大量在庫
  • 倉庫圧迫
  • 長時間荷待ち

が起きやすい。

つまり酒物流は、

「季節イベント物流」

でもあるのです。


■ 結論|酒物流は“運ぶ”ではなく「循環を維持する仕事」

酒物流は、 単純な輸送ではありません。

  • 重い
  • 割れる
  • 回収がある
  • 温度管理がある
  • 波動が激しい
  • 共同配送依存が強い

つまり、

「複数の難しさが同時発生する物流」

です。

そして現場では今も、

  • 我慢
  • 経験値

で支えている部分が大きい。

自動化が進んでも、 最後に現場を救うのは結局、

「異常時対応できる人」

だったりします。

酒物流とは、 単なる飲料輸送ではなく、

「循環型サプライチェーン」

そのものなのかもしれません。