2026年5月。
中部・北陸圏の青果物流で、 かなり重要な動きが出ました。
産地・輸送・市場関係など19組織が連携し、
「共同物流効率化推進協議会」
を発足。
青果物流の共同輸配送・中継輸送を本格化させる方針を打ち出しました。
これは単なる共同配送ニュースではありません。
むしろ、
「日本の青果物流が、単独最適ではもう維持できなくなった」
という現実が、 ついに表面化した動きだと私は見ています。
■ 何が始まったのか
今回の取り組みでは、
- 鹿児島
- 熊本
- 静岡
などの産地団体と、
- JA物流
- 卸売市場
- 流通センター
など19組織が連携。
中核になるのは、
「名古屋西流通センター」
です。
ここを、
「消費地ストックポイント」
として使い、
従来バラバラだった青果輸送を集約していく構想です。
■ これまでの青果物流は“根性輸送”だった
青果物流は、 物流業界の中でもかなり特殊です。
なぜなら、
- 鮮度制約
- 温度管理
- 小ロット多頻度
- 収穫タイミング変動
- 天候依存
- 長距離輸送
が全部重なるからです。
つまり、
「計画通りにいかない物流」
の代表格です。
しかも今までは、
- 深夜積込
- 長時間運行
- 市場荷待ち
- 手積み手降ろし
- 帰り荷なし
を、
ドライバーと現場の我慢で吸収していました。
しかし2024年問題以降。
その“無理”が、 物理的に維持できなくなり始めています。
■ なぜ「共同物流」なのか
ここが非常に重要です。
今回の協議会がやろうとしている本質は、
「輸送を共同化する」
ことではありません。
本当は、
「物流リスクを分散する」
ための動きです。
従来の青果物流は、
産地→市場
を個別輸送していました。
つまり、
- 荷量変動
- 空車
- 待機
- 積載率低下
を、 各社が単独で背負っていた。
しかしもう、 それでは回らない。
だから、
- 集約
- 中継
- 共同配送
- ストックポイント化
へ動き始めたわけです。
■ “名古屋”という場所が意味するもの
今回かなり面白いのは、
「名古屋西流通センター」
をハブ化している点です。
これは地理的に見ると非常に合理的です。
名古屋は、
- 関東
- 関西
- 北陸
の中間。
つまり、
「中継輸送」
に向いている。
これまでは、
鹿児島→関東
熊本→関西
を、 一気通貫で長距離輸送していました。
しかし今後は、
「途中で繋ぎ替える物流」
へ変わっていく。
これはまさに、
2024年問題以降の物流再設計です。
■ 青果物流は“日本物流の縮図”
私は青果物流を見ると、
日本物流の問題が全部見えると思っています。
例えば、
- 情報が直前まで確定しない
- 需要予測が荒れる
- 荷待ちが長い
- 時間集中が激しい
- 価格転嫁しづらい
- 「至急」が多い
- 現場依存が強い
全部あります。
つまり青果物流は、
「日本型物流の限界」
が最も濃く出る分野なのです。
■ 共同配送だけでは解決しない
ただし。
私は共同配送を万能視していません。
なぜなら、
「共同化すると調整コストが爆増する」
からです。
例えば、
- 誰が優先されるのか
- 温度帯をどう合わせるか
- 積込時間をどう調整するか
- 遅延責任を誰が持つか
- 荷傷みリスクをどう分担するか
共同化とは、
「ルール統一」
との戦いです。
ここを甘く見ると、 現場は逆に崩壊します。
■ 物流会社が“下請け”のままでは失敗する
ここはかなり重要です。
今回の動きは前進ですが、
もし物流会社が、
「ただ運ばされる側」
のままなら、 本質的解決にはなりません。
なぜなら、
実際に摩擦を知っているのは、
- ドライバー
- 配車
- 倉庫
- 運行管理
だからです。
つまり本来必要なのは、
「物流現場を含めた設計」
です。
荷主・市場だけで決めると、
また現場へ無理が落ちる。
これは日本物流が何十年も繰り返してきた失敗です。
■ これは“食料インフラ防衛”である
今回の話を、 単なる物流効率化だと思うと、 本質を見失います。
本当に起きているのは、
「食料供給網の防衛」
です。
もし青果物流が崩れれば、
- 地方産地は売れない
- 小ロット農家は消える
- 鮮度維持ができない
- スーパーへ届かない
となる。
つまり、
「農業問題」
ではなく、
「国家インフラ問題」
なのです。
■ 結論|物流は、“競争”だけでは維持できなくなった
これまで日本物流は、
- 安く
- 速く
- 個別最適で
- 我慢込みで
成立していました。
しかし今。
それが限界に来ています。
だから始まったのが、
- 共同配送
- 中継輸送
- ストックポイント
- ハブ集約
- 広域連携
です。
つまり物流は今、
「単独戦」から「連合戦」
へ移行し始めています。
青果物流のこの動きは、 その象徴だと私は感じています。
そして恐らくこれは、
青果だけでは終わりません。
酒類、 食品、 日用品、 医薬品。
日本物流全体が、 同じ方向へ向かい始めています。
物流は今、
“運ぶ競争”から、
「止めないために繋がる競争」
へ変わり始めているのです。