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【構造考察】なぜ鉄道貨物は減っているのか──「モーダルシフト推進」の裏で進む、“物流の余白消失”

2026年5月25日。

国土交通省が公表した「鉄道輸送統計月報」によると、2026年2月の鉄道貨物輸送量は前年同月比で減少しました。

  • 貨物数量総合計:318万6239トン(前年比4.2%減)
  • 貨物トンキロ総合計:13億2714万1000トンキロ(前年比6.5%減)

特にコンテナ輸送は、

  • 貨物数量:4.8%減
  • 貨物トンキロ:7.2%減

と落ち込みが目立っています。

一方で政府は今、

  • モーダルシフト
  • フィジカルインターネット
  • 脱炭素物流
  • 鉄道利用促進

を強く推進しています。

それなのに、なぜ鉄道貨物は減っているのか。

ここには単なる景気変動ではない、

「物流ネットワーク全体の余白消失」

という構造問題があります。


■ 鉄道貨物は「強い輸送」だった

まず前提として。

鉄道貨物は本来、 非常に優秀な輸送手段です。

特に強いのは、

  • 大量輸送
  • 長距離輸送
  • 定時性
  • CO2削減
  • ドライバー不足対策

です。

ダブル連結トラックよりも、 さらに大量輸送に向いている。

しかも、 1人のドライバー依存を減らせる。

だから政府は今、

「トラックから鉄道へ」

を本気で進めています。

しかし現実は、 そう単純ではありません。


■ 今回の減少、直接要因は「雪害」

JR貨物発表によると、 2026年2月は、

「強い冬型気圧配置による雪害」

の影響が大きかったとされています。

北日本では、

  • 長期運休
  • 大幅遅延

が発生。

これにより、

  • 北海道産玉ねぎ
  • 馬鈴薯
  • 飲料
  • ビール

などが減送しました。

さらに、

  • リニア工事関連土砂輸送減少
  • 暖冬による灯油需要減

も重なっています。

つまり表面的には、

「悪天候による一時的減少」

とも読めます。

しかし問題は、 そこだけではありません。


■ 本当の問題は「余裕が消えた」こと

昔の物流は、 多少遅れても回りました。

どこかで吸収できたからです。

  • ドライバー残業
  • 倉庫残業
  • 前倒し積込
  • 現場の属人調整

つまり、

「人間の無理」

がバッファだった。

しかし2024年問題以降。

この余白が急速に消えています。

すると何が起きるか。

今までなら吸収できた雪害や遅延が、

「物流停止」

へ直結する。

これが今です。


■ 鉄道貨物は「止まると弱い」

ここが重要です。

鉄道は大量輸送に強い。

しかし逆に、

「一点停止に極端に弱い」

特徴があります。

例えば高速道路なら、

  • 迂回
  • 配車変更
  • 緊急便

などが比較的柔軟にできます。

しかし鉄道は、

  • ダイヤ
  • 線路容量
  • ターミナル処理
  • 接続時間

が固定化されている。

つまり、

「平常運転前提」

なのです。

だから雪害や災害が起きると、 全体が連鎖停止しやすい。

しかも現在は、 その後ろで支えるトラック側にも余力がありません。

ここが昔との決定的違いです。


■ モーダルシフトの“理想”と“現実”

政府は現在、

  • 鉄道
  • 船舶
  • 共同輸送

への転換を進めています。

方向性自体は正しい。

しかし現場では、 簡単に移行できません。

なぜなら物流は、

「輸送だけ」

で成立していないからです。

例えば鉄道輸送には、

  • 発駅集荷
  • ターミナル搬入
  • コンテナ積替
  • 到着側配送

が必要。

つまり結局、

「ラストはトラック」

なのです。

ここが詰まれば、 鉄道も機能しない。

つまり今起きているのは、

「鉄道の問題」

ではなく、

「物流全体の接続問題」

です。


■ 物流は“部分最適”が崩れ始めた

これまで日本物流は、

  • 安い
  • 早い
  • 止まらない

を追求してきました。

しかしそれは、

  • 過剰サービス
  • 長時間労働
  • 現場我慢

で成立していた側面がある。

今、 その無理が限界を超えています。

すると何が起きるか。

今までなら局所問題だったものが、

「ネットワーク障害」

になる。

鉄道貨物減少は、 その象徴です。


■ 今後は「輸送力」より“復元力”

これから重要になるのは、

単純な輸送量ではありません。

重要なのは、

「止まった時に、どう戻すか」

です。

つまり、

  • 冗長性
  • 切替能力
  • 在庫余白
  • 接続設計
  • 情報共有

です。

物流は今、

「最速競争」

から、

「止まらない構造設計」

へ変わろうとしています。


■ 結論|減っているのは「鉄道貨物」ではない

本当に減っているのは、

「物流全体の余裕」

です。

雪害は、 単なるきっかけに過ぎません。

問題は、

  • ギリギリ運行
  • ギリギリ在庫
  • ギリギリ人員

で構築された物流が、

もう“有事”を吸収できなくなっていることです。

鉄道貨物減少は、 その現実を静かに映しています。

物流2024年問題は、 まだ始まったばかりです。


■参考・一次ソース

国土交通省
「鉄道輸送統計月報(2026年2月分)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/joho05_hh_000901.html

LNEWS
「JR貨物/2月の鉄道コンテナ輸送量4.9%減」 https://www.lnews.jp/2026/03/s0318507.html

LOGISTICS TODAY
「JR貨物2月輸送3.8%減、雪害で農産品など不振」 https://www.logi-today.com/926395