物流業界で近年よく聞く言葉があります。
「共同配送」
です。
2024年問題以降、
- ドライバー不足
- 輸送コスト上昇
- 燃料高
- CO₂削減
- 積載率改善
などを背景に、
共同配送は再び大きな注目を集めています。
しかし実際には、
「複数企業の荷物をまとめて運ぶ仕組み」
程度の理解で止まっているケースも少なくありません。
ですが共同配送は本来、
単なる効率化施策ではありません。
むしろ、
「物流という産業が抱える構造問題」
に対する解決策の一つとして発展してきた仕組みです。
そして現在は、
単なるコスト削減策から、
「物流ネットワーク再設計」
の段階へ入りつつあります。
■ 共同配送とは何か
共同配送とは、
複数の荷主企業が物流を共同化し、
同じトラックや物流網を共有して配送を行う仕組みです。
例えば、
メーカーA メーカーB メーカーC
が同じ納品先へ商品を届ける場合、
従来であれば、
それぞれ別々のトラックが走っていました。
しかし共同配送では、
それらをまとめて積載し、
1台で配送する。
非常にシンプルな考え方です。
■ 実は昔から存在していた
共同配送は最近生まれた考え方ではありません。
日本では高度経済成長期以降、
都市部への車両集中や交通渋滞対策として導入が進みました。
特に有名なのが、
1970年代の東京・大阪などで行われた
「百貨店共同配送」
です。
複数百貨店が物流を共同化し、
納品車両を削減する取り組みが進められました。
また、
大規模ニュータウンや商業施設向けでも、
共同配送センターが整備されていきました。
■ 世界的にはもっと古い
歴史を遡ると、
共同配送の原型はさらに古くなります。
欧州では19世紀後半から20世紀初頭にかけて、
都市部商店向け配送で、
複数商店の商品をまとめて配送する仕組みが存在していました。
鉄道貨物や港湾物流でも、
複数荷主の荷物を混載する考え方は古くから存在します。
つまり共同配送とは、
新しい物流技術ではありません。
むしろ、
「物流の原点に近い考え方」
とも言えます。
■ なぜ共同配送が再注目されているのか
理由は単純です。
物流が限界に近づいているからです。
現在の物流では、
積載率の低さが大きな課題になっています。
国土交通省調査でも、
営業用トラックの積載効率は必ずしも高くありません。
つまり、
トラックは走っている。
しかし荷物は満載ではない。
この状態が長年続いてきました。
そこへ、
- 2024年問題
- ドライバー不足
- 労働規制
- 燃料高
が重なった。
すると、
「空いている荷台」
そのものが無駄として見過ごせなくなったのです。
■ 共同配送の最大メリット
最大のメリットは、
「輸送力を増やさず輸送量を維持できる」
ことです。
これが非常に重要です。
通常、
荷物が増えれば、
- トラックを増やす
- ドライバーを増やす
必要があります。
しかし現在は、
その増員が難しい。
そこで共同配送が注目される。
積載率を高めれば、
同じ輸送力でより多く運べるからです。
■ 荷主側にもメリットがある
共同配送の恩恵は運送会社だけではありません。
荷主企業も、
- 輸送コスト削減
- CO₂削減
- 配送網維持
などのメリットがあります。
最近はESG対応やScope3対応もあり、
物流由来排出量削減は大きな経営課題になっています。
共同配送は、
その対応策としても注目されています。
■ 納品先も楽になる
意外と見落とされるのがここです。
共同配送は、
納品先の負担も減らします。
例えばスーパーや小売店舗。
メーカーごとに別々の車両が来るより、
まとめて納品された方が、
- 検品
- 荷受け
- バース利用
が効率化できます。
つまり共同配送は、
物流全体の接続効率改善にもつながるのです。
■ しかし現実は簡単ではない
共同配送が難しい理由もあります。
最大の壁は、
「企業同士の都合が一致しない」
ことです。
配送時間。
納品条件。
商品温度帯。
発注タイミング。
これらが全て違います。
例えば冷蔵食品。
温度管理が厳格です。
納品時間も細かい。
そのため、
単純に荷物を混ぜれば成立するわけではありません。
■ 実は共同配送は管理コストが増える
ここはあまり語られません。
共同配送は、
トラック台数は減ります。
しかし管理は複雑になります。
- 荷物仕分け
- 温度管理
- 納品順管理
- 遅延調整
- 情報共有
などが必要になる。
つまり、
「走るコストは減るが、管理コストは増える」
ケースも多いのです。
■ だから成功企業は少ない
共同配送は昔から理想論として語られてきました。
しかし実際に長期運用できる企業は多くありません。
なぜか。
共同配送の本質は、
トラック共有ではないからです。
本質は、
「ルール共有」
です。
各社が自社最適を少し譲る。
納品時間を調整する。
在庫運用を見直す。
こうした調整が必要になる。
つまり共同配送とは、
物流ではなく、
「企業間協調の仕組み」
でもあるのです。
■ 冷蔵物流ではさらに難しい
冷蔵共同配送は難易度が上がります。
なぜなら、
商品価値そのものが温度で決まるからです。
食品物流では、
数度の温度変化でも品質へ影響します。
そのため、
- 温度帯管理
- 積み合わせ管理
- 納品順設計
まで必要になります。
だからこそ、
冷蔵共同配送を成立させている企業は、
単なる配車技術だけではなく、
現場運営力そのものが高いケースが多いのです。
■ 最近の共同配送は「データ共有」が中心
現在の共同配送は、
昔と少し変わっています。
近年は、
- 配車システム
- 動態管理
- バース予約
- 物流データ連携
が進み始めています。
つまり、
共同配送のボトルネックだった
「情報共有」
をシステムで解決しようとしている。
ここが大きな変化です。
■ アマゾンも実質的には共同化を進めている
最近話題になった、
Amazonの新幹線物流も近い考え方があります。
新幹線という既存インフラへ、
複数商品の輸送を集約する。
これは形を変えた共同化です。
今後は、
鉄道 船舶 物流施設
まで含め、
物流全体で共同利用が増えていく可能性があります。
■ 国も共同配送を後押ししている
国土交通省も、
共同配送やモーダルシフトを物流効率化の柱に位置付けています。
背景には、
2030年問題があります。
このままでは、
将来的に輸送能力不足が深刻化すると予測されているためです。
つまり共同配送は、
単なる企業努力ではなく、
物流維持政策の一部にもなっています。
■ 本当に問われているのは「誰の荷物か」ではない
共同配送を見ていると、
物流の本質が見えてきます。
これまでの物流は、
「自社の荷物」
を中心に考えてきました。
しかし現在は違います。
限られた輸送力を、
社会全体でどう使うか。
その発想が求められています。
共同配送とは、
単に荷物をまとめる話ではありません。
本質は、
「輸送力を共有資源として扱う」
考え方です。
■ 物流は競争から“共存設計”へ向かうのか
共同配送は昔から存在していました。
しかし今ほど必要とされた時代はなかったかもしれません。
ドライバー不足。
燃料高。
労働規制。
環境対応。
こうした制約が重なるなかで、
物流は、
「どれだけ速く運ぶか」
だけではなく、
「どう分け合って運ぶか」
が問われ始めています。
共同配送とは、
単なる物流効率化ではない。
それは、
物流が限られた社会インフラへ変わり始めたことを示す、
象徴的な仕組みに他ならないのです。