物流業界では今、
- 人手不足
- 燃料高騰
- 資材価格上昇
- 脱炭素対応
といった課題が同時進行しています。
その中で、オイシックス・ラ・大地が運営する「らでぃっしゅぼーや」が興味深い取り組みを始めました。
一部商品の梱包資材をプラスチックから紙へ切り替え、さらに野菜を袋詰めせず箱へ直接入れる「バラ入れ配送」を開始したのです。
表面的には環境対策の話に見えます。
しかし物流構造の視点から見ると、この取り組みの本質は別の場所にあります。
彼らが削減しているのは、単なるプラスチックではありません。
物流そのものに存在していた「ムダ」なのです。
■ なぜ今、プラスチック削減なのか
近年、プラスチック資材の価格は上昇しています。
背景には、
- 原油価格高騰
- 中東情勢不安
- 為替変動
- 資源価格上昇
があります。
プラスチックは石油由来製品です。
つまり原油価格が上がれば、梱包資材コストも上昇します。
物流業界では燃料費ばかりが注目されますが、実際には梱包資材も石油価格の影響を強く受けています。
輸送コストだけでなく、
「包むコスト」
も同時に上がっているのです。
そのため企業側は、
- 輸送効率改善
- 積載効率改善
- 梱包資材削減
を同時に進める必要に迫られています。
今回の施策も、その流れの中にあります。
■ 本当に注目すべきは「バラ入れ」
今回の発表で最も興味深いのは、
「紙へ切り替えたこと」
ではありません。
むしろ、
「包まなくなったこと」
です。
玉ねぎ。
じゃがいも。
りんご。
柑橘類。
これらは袋詰めせず、そのまま箱へ入れる方式へ変更されました。
一見すると単純です。
しかし物流的には大きな意味があります。
なぜなら包装工程そのものが不要になるからです。
通常の食品物流では、
収穫 ↓ 選別 ↓ 包装 ↓ 梱包 ↓ 出荷
という工程を経ます。
ところがバラ入れでは、
包装
という工程が消えます。
つまり、
- 包装資材コスト削減
- 包装作業削減
- 資材在庫削減
- 廃棄物削減
が同時に実現できます。
物流改善とは、必ずしも新しい設備導入ではありません。
工程そのものを消すことも改善なのです。
■ 実は物流の理想形に近い
物流の世界には昔から、
「荷物は触るたびにコストが発生する」
という考え方があります。
包装する。
積み替える。
仕分ける。
保管する。
これらはすべてコストです。
つまり物流効率化の本質は、
荷物に触る回数を減らすこと
とも言えます。
今回のバラ入れ配送は、
包装工程を減らすことで、
荷物への接触回数そのものを削減している構造です。
これは物流現場の考え方として非常に合理的です。
■ この会社はなぜ実現できるのか
ここが最大のポイントです。
実は同じことを他社が簡単に真似できるわけではありません。
理由は配送ネットワークにあります。
らでぃっしゅぼーやは約30年間、
自社便配送
を続けてきました。
一般的な宅配物流は、
発送 ↓ 配送 ↓ 終了
です。
しかしらでぃっしゅぼーやは違います。
発送 ↓ 配送 ↓ 回収 ↓ 再利用
という循環構造を持っています。
配送員が商品を届けるだけでなく、
使用済み資材を回収する仕組みを持っているのです。
この違いは非常に大きい。
なぜなら、
「回収できる前提」
があるからこそ、
再利用設計が成立するからです。
■ 物流は運ぶだけではない
多くの人は物流を、
モノを運ぶ仕事
だと思っています。
しかし本来の物流は違います。
物流とは、
モノの流れを設計する仕事
です。
今回の事例では、
商品だけではなく、
梱包資材まで循環対象として設計されています。
卵パック。
トマトケース。
モールドケース。
フルーツキャップ。
これらは本来、
一度使ったら捨てられる資材です。
しかし回収網を持つことで、
資材そのものが循環資産へ変わります。
これは単なる環境対策ではありません。
物流ネットワーク設計の話です。
■ 実は環境対策より経済合理性が大きい
環境配慮という言葉は聞こえが良いです。
しかし企業が30年以上も継続する取り組みには、
必ず経済合理性があります。
回収して再利用することで、
- 新規資材購入費削減
- 廃棄コスト削減
- 原材料価格変動リスク低減
が可能になります。
実際に同社は、
資材コスト削減分を商品価格へ還元してきたと説明しています。
つまり、
環境に良いから続いているのではない。
利益にもなるから続いている。
ここが重要です。
持続可能性とは、
我慢ではなく仕組みです。
■ 今後の物流が向かう方向
物流業界は現在、
2024年問題以降の構造転換期にあります。
これまでのように、
人が頑張れば回る。
資材を使えば解決する。
コストを吸収すれば維持できる。
という時代ではなくなりました。
その中で重要になるのは、
輸送効率だけではありません。
梱包。
回収。
再利用。
在庫。
配送。
これらを一体で設計する発想です。
今回のらでぃっしゅぼーやの取り組みは、
単なるプラスチック削減ではありません。
物流を「片道」から「循環」へ変える試みでもあるのです。
■ まとめ
今回の発表を環境ニュースとして見ると、
「プラスチックを紙に変えた話」
で終わります。
しかし物流構造の視点で見ると、
見えてくる景色はまったく違います。
本質は、
梱包資材削減ではなく、
物流ネットワークそのものの再設計です。
運ぶだけではなく回収する。
使うだけではなく再利用する。
包むことを前提にしない。
そうした発想によって、
コストと環境負荷の両方を下げようとしているのです。
物流業界では今後、
「いかに効率よく運ぶか」だけでなく、
「いかに循環まで設計するか」
が競争力になっていくかもしれません。
らでぃっしゅぼーやの取り組みは、その未来を先取りする事例のひとつと言えそうです。