NIPPON EXPRESSホールディングスは、日本通運の2026年5月の鉄道コンテナ取扱実績を公表しました。
取扱個数は前年比7.5%減。
全国的に減少傾向が目立ち、
- 北海道:10.3%減
- 東北:8.5%減
- 首都圏:7.6%減
- 関西:8.1%減
- 中国・四国:20.8%減
となりました。
2024年問題以降、
物流業界では
「トラックから鉄道へ」
というモーダルシフトが期待されていました。
しかし現実には、
鉄道コンテナ輸送は大きく伸びていません。
なぜでしょうか。
■ 一見すると矛盾している
物流業界では長年、
鉄道輸送拡大が叫ばれてきました。
理由は明確です。
鉄道は
- 大量輸送が可能
- CO₂排出量が少ない
- ドライバー不足の影響を受けにくい
という強みを持つからです。
2024年問題によって
トラック輸送能力不足が懸念される中、
本来なら鉄道輸送は追い風を受けるはずでした。
しかし現実は逆でした。
■ 減少しているのは「生活物資」
今回のデータを見ると特徴があります。
減少しているのは
- 清涼飲料水
- ビール
- 米
- 食料工業品
- 農産品
- 書籍・雑誌
- 紙・パルプ
です。
つまり、
鉄道輸送の主力貨物が減っている。
これが大きいのです。
■ 米輸送減少が意味すること
東北地区では米輸送減少が影響しています。
鉄道コンテナは昔から
北海道・東北から首都圏への米輸送を支えてきました。
しかし近年は
地域内消費や物流ネットワーク変化によって、
長距離大量輸送そのものが減少しています。
鉄道は大量輸送に強い。
逆に言えば、
大量輸送が減ると弱い。
■ 飲料輸送減少も象徴的
首都圏や関西では
清涼飲料水やビールの減少が目立ちました。
ここには物流構造の変化があります。
飲料メーカーは近年、
製造拠点再編を進めています。
さらに配送拠点も細分化されています。
その結果、
かつてのような
「工場から全国へ大量輸送」
ではなく、
「地域内配送」
の比率が増えています。
鉄道が得意だった長距離大量輸送が減っているのです。
■ 紙・パルプ減少はもっと深い
中国・四国地区では
紙・パルプ輸送減少が続いています。
これは物流問題というより、
産業構造問題です。
電子化。
DX。
ペーパーレス化。
新聞発行部数減少。
出版市場縮小。
紙需要そのものが減っています。
つまり、
鉄道輸送の荷物自体が減っている。
■ 2024年問題でも鉄道が増えない理由
ここが本質です。
多くの人は
2024年問題=鉄道輸送増加
と考えていました。
しかし物流現場はそう単純ではありません。
理由① 鉄道は「駅」までしか運べない
鉄道は駅間輸送です。
荷主から見れば、
結局
- 集荷
- 配送
が必要になります。
つまり鉄道だけでは完結しません。
最後はトラックです。
理由② 倉庫処理能力が不足している
私は以前から書いていますが、
物流のボトルネックは
道路ではなく拠点です。
トラック輸送を減らしても、
倉庫で捌けなければ意味がありません。
鉄道貨物も同じです。
大量に到着しても、
拠点で処理できなければ流れません。
理由③ 荷主の発注構造が変わっていない
最も大きいのはこれです。
鉄道輸送は
計画輸送です。
一方で現在の物流は
- 即納
- 小口化
- 多頻度化
が進んでいます。
つまり荷主側が
鉄道向きではない発注をしている。
ここを変えない限り、
モーダルシフトは進みません。
■ 本当の問題は鉄道不足ではない
鉄道コンテナ減少を見ると、
「鉄道貨物が弱い」
と考えがちです。
しかし違います。
問題は
鉄道が使えないことではありません。
鉄道が使えるように物流全体が設計されていないことです。
■ 構造考察
2024年問題以降、
物流の課題は
「運ぶ手段」
ではなくなっています。
トラックが足りない。
鉄道が足りない。
そういう話ではありません。
本当の課題は、
荷主の発注構造と物流拠点の処理構造です。
鉄道コンテナ実績減少は、
モーダルシフト失敗を示しているのではありません。
むしろ、
物流のボトルネックが輸送から拠点へ移ったことを示している。
私はそう感じています。
物流を止めるのは道路ではありません。
これからは、
荷物を処理する拠点と、
それを設計する仕組みそのものが問われる時代なのです。