2026年6月10日、食品卸大手の国分グループと、子ども支援事業を展開するネッスーが、「未利用食品の活用推進コンソーシアム」を設立したと発表しました。
一見すると、
「食品ロス削減の良い話」
に見えます。
しかし物流の視点で見ると、このニュースの本質は別の場所にあります。
これは、
食品を救う話ではありません。
物流コストを社会価値へ変換する話です。
■ 本当に捨てられていたのは食品なのか
食品メーカーでは、
品質に問題はなく、 賞味期限も残っている。
それでも流通に乗れずに行き場を失う商品が存在します。
理由は様々です。
- 納品期限超過
- パッケージ変更
- 販売終了
- 需要予測のズレ
- 商慣習上の返品
品質ではなく、
流通条件から外れた
という理由だけで市場から消える商品です。
つまり、
食品ロスの一部は製造問題ではなく、
物流・商流問題なのです。
■ 日本の食品ロスは年間464万トン
消費者庁・農林水産省・環境省の公表によると、
2023年度の食品ロスは464万トン。
そのうち事業系食品ロスは231万トンに達しています。
数字だけを見ると改善は進んでいます。
しかし現場では別の問題があります。
食品ロスは減っても、
物流費は上がり続けている。
2024年問題以降、
輸送コスト 保管コスト 人件費
すべてが上昇しています。
結果として、
「捨てるより運ぶ方が高い」
という逆転現象が起き始めています。
■ 国分が持っていた最大の武器
今回の取り組みで重要なのは、
国分が食品卸であることです。
国分は単なる商社ではありません。
全国に物流センターと配送網を持っています。
つまり、
新しい物流網を作らなくても、
既存物流の空きスペースへ未利用食品を流し込める。
これが圧倒的に大きい。
今回の仕組みも、
既存物流網を活用した混載輸送と在庫保管が前提になっています。
物流業界で最も高いコストは、
車両ではありません。
人でもありません。
空気です。
空いているトラック。
空いている倉庫。
空いているパレット。
空いている積載スペース。
この空気を埋めることが利益になります。
国分はそこに未利用食品を流し込もうとしているのです。
■ 私が面白いと思ったのは「寄付」ではない点
今回の仕組みは、
一般的なフードバンクと少し違います。
特徴は、
「ソーシャル・プライシング」
という有償提供モデルです。
つまり、
タダで配る前提ではない。
物流費 保管費 管理費
を含めて価格を設定する。
これが重要です。
寄付モデルは美しい。
しかし続かない。
物流は慈善事業ではありません。
倉庫もトラックも人件費も発生します。
だからこそ、
少額でも対価が発生する仕組みを作る。
この発想は非常に物流的です。
善意ではなく、
構造で回そうとしている。
私はここに大きな可能性を感じます。
■ 実は物流業界が抱える共通課題
このニュースは食品業界の話に見えます。
しかし本質は物流全体に共通しています。
現在物流業界では、
- 帰り便の空車
- 倉庫の空きスペース
- 余剰在庫
- 低稼働設備
が大量に存在しています。
一方で、
別の場所では
- 人手不足
- コスト上昇
- 輸送能力不足
が起きています。
つまり、
不足しているのではありません。
繋がっていないのです。
■ farmOは物流システムでもある
坂ノ途中が展開するfarmOも同じ構造です。
生産者情報
受注情報
出荷情報
を可視化し、
共同物流を成立させています。
これは農業DXと言われていますが、
実際には物流DXです。
受注情報が見えるから共同配送できる。
荷量が見えるから積載率が上がる。
結果として物流費が下がる。
物流はトラックで効率化されるのではありません。
情報で効率化されます。
■ 私が見ているのは「第四の物流」
ここからは少し構造の話です。
物流は長年、
第一段階
運ぶ物流
↓
第二段階
保管する物流
↓
第三段階
情報を管理する物流
へ進化してきました。
そして今、
第四段階へ入っています。
それは、
社会課題を運ぶ物流
です。
食品ロス
子どもの貧困
地方過疎
環境問題
有機農業
これらを解決する主役は、
実は物流かもしれません。
なぜなら、
どんな社会課題も最終的には
「モノを誰に届けるか」
という問題に行き着くからです。
■ 結局、物流とは何なのか
物流は昔から
「運ぶ仕事」
と言われてきました。
しかし私は違うと思っています。
物流とは、
社会の分断を繋ぐ仕事です。
今回のコンソーシアムも、
食品メーカーと支援家庭を繋ぐ。
余剰と不足を繋ぐ。
善意と事業性を繋ぐ。
そして、
物流コストと社会価値を繋ぐ。
そんな挑戦に見えます。
食品ロス問題を解決するのは、
食品メーカーかもしれません。
福祉団体かもしれません。
行政かもしれません。
しかし、
それらを実際に機能させる最後の接着剤は物流です。
私はこのニュースを見て、
「食品ロス削減の話」
ではなく、
物流が社会インフラから社会設計インフラへ進化し始めた瞬間
として見ています。