日本通運が2026年9月末までに、輸入通関時の関税・消費税などの立替払いを全国で終了し、輸入者自身が納税する「直接納税方式」へ移行すると発表しました。
一見すると地味なニュースです。
しかし物流の構造という視点で見ると、このニュースは非常に重要です。
むしろ私は、
「物流会社が本来やるべきではなかった仕事を手放し始めた」
というニュースだと捉えています。
■ そもそもなぜ物流会社が税金を立て替えていたのか
冷静に考えると不思議な話です。
輸入時に発生する関税や輸入消費税の納税義務者は本来輸入者です。
ところが現実には、
- 荷主
- 商社
- メーカー
に代わって、
通関業者やフォワーダーが立替払いを行う商慣行が長年続いてきました。
つまり物流会社は、
本業である「運ぶ仕事」だけでなく、
実質的には
金融機能まで肩代わりしていた
のです。
■ 私が感じた違和感
今回の記事を読んで真っ先に感じたのは、
「なぜ今まで続いていたのか」
ということでした。
なぜなら、
関税も消費税も物流会社のコストではないからです。
本来は荷主が納めるべき税金です。
ところが現場では、
- 荷主の代わりに立替える
- 後日回収する
- 回収できないリスクも負う
という構造が存在していました。
これを別の言い方をすると、
物流会社が荷主へ無担保融資していたとも言えます。
■ 物流業界は「運送業」ではなくなっていた
私は以前から感じていました。
物流業界には本業以外の負担が多すぎます。
例えば、
- 荷待ち
- 付帯作業
- 在庫管理
- 検品
- 返品処理
- 請求代行
- 資金立替
です。
本来は別の機能なのに、
物流会社が吸収してきました。
そして今回の日通の決断は、
その一つを切り離す動きです。
■ DXではなく「責任の正常化」
記事では、
- 電子納付
- ダイレクト納付
- マルチペイメントネットワーク
などが紹介されています。
多くの人は、
「DX化ですね」
で終わると思います。
しかし私は違うと思っています。
本質はDXではありません。
本質は、
責任の所在を本来あるべき場所へ戻すこと
です。
税金を払う責任は輸入者。
物流会社は運ぶ責任。
この切り分けです。
■ 意外な視点
これは物流2024年問題の延長線上にある
2024年問題以降、
物流業界では
「適正運賃」
ばかりが注目されました。
しかし実際には、
適正化されるべきなのは運賃だけではありません。
- 待機時間
- 荷役作業
- 多重下請け
- 立替払い
こうした慣行も同じです。
つまり今回の日通の動きは、
運賃交渉とは別の角度から進む
物流適正化の第二幕
とも言えます。
■ 中小フォワーダーへの波及は大きい
さらに注目すべきはここです。
日本通運は業界最大手です。
業界最大手がやるということは、
今後、
他の通関業者やフォワーダーも追随する可能性があります。
そうなれば、
国際物流業界全体の商慣行が変わります。
今まで当たり前だった
「とりあえず物流会社が立替える」
という文化が消えていくかもしれません。
■ 荷主側は資金管理能力が問われる
もちろん荷主側には負担も生じます。
これまでは、
物流会社が立替えてくれていたため、
実質的な支払い猶予がありました。
しかし今後は、
輸入申告とほぼ同時に納税資金を準備する必要があります。
つまり、
物流会社の資金繰りではなく、
荷主自身の資金繰り能力が問われる時代になります。
■ 本当に注目すべきポイント
今回のニュースで最も重要なのは、
電子納付ではありません。
通関でもありません。
私が見ているのは、
物流会社が「便利屋」から脱却し始めたこと
です。
物流業界は長年、
運ぶ以外の機能まで引き受けてきました。
その結果、
利益率は低下し、
現場への負荷ばかりが増えました。
今回の日通の判断は、
そうした構造への小さな反旗とも見えます。
■ まとめ
今回のニュースは、
単なる通関実務の変更ではありません。
物流会社が税金の立替という金融機能から手を引き、
本来の役割へ戻ろうとする動きです。
物流業界では今、
運賃だけでなく、
あらゆる「当たり前」が見直されています。
荷待ちもそう。
付帯作業もそう。
そして今回の関税立替もそうです。
私はこのニュースを、
「通関DX」
ではなく、
物流の正常化がまた一歩進んだ象徴的な出来事
として見ています。
そしてその先にあるのは、
物流会社が金融機関でも便利屋でもなく、
本来の物流サービスに対して適正な対価を得る社会への転換なのかもしれません。