中東情勢の緊迫化。
ニュースでは原油価格やガソリン価格ばかりが注目されています。
しかし実際には、影響はもっと身近な場所まで入り込んでいます。
それが、
食品包装資材です。
農林水産省は現在、農業・食品関連資材57項目について流通実態調査を進めています。
食品トレー。 業務用ラップ。 豆腐容器。 冷凍食品袋。 アルミ箔。
私たちが毎日当たり前に見ているものばかりです。 そして鈴木農水相は6月12日、
「調査済み47項目については全体として供給に問題はない」
との認識を示しました。
■ だから安心なのか?
私は少し違う見方をしています。
物流の世界では、
「今ある」と「これからもある」は全く別物
だからです。
今回の調査は、
- 今どこに在庫があるか
- 現時点で供給できるか
を確認するものです。
一方で物流は、
- 原料
- 製造
- 包装
- 保管
- 輸送
- 小売
という長いサプライチェーンで成立しています。
つまり、
今日問題がなくても、
上流で何か起きれば数週間後に現場へ波及します。
物流現場ではこれを
「遅れてやってくる障害」
として常に警戒しています。
■ 本当の主役は食品ではなく「包装」
今回の調査対象を見ると面白いことが分かります。
対象になっているのは、
- 食品そのもの
ではありません。
多くは
- 容器
- フィルム
- ラップ
- トレー
- 袋
です。
つまり政府が警戒しているのは、
食品不足ではなく包装不足
なのです。
■ 現代物流は「包めないと運べない」
例えば冷凍食品。
中身があっても袋が無い。
出荷できません。
カット野菜。
野菜はある。
しかし包装資材が無い。
店頭に並びません。
豆腐。
製造できる。
でも容器が無い。
販売できません。
物流業界では昔から、
モノが無いから止まる
ではなく
容器が無いから止まる
というケースが存在します。
サプライチェーンの弱点は意外と地味な場所にあります。
■ 物流視点で最も重要なのは「標準化」
ここで面白い視点があります。
今回の問題。
実は物流改善のチャンスでもあります。
なぜなら、
包装資材不足は企業に
標準化
を迫るからです。
例えば、
メーカーごとに違う
- 容器
- トレー
- 袋
を使うより、
共通規格を使った方が強い。
物流も同じです。
パレット標準化。
コンテナ標準化。
伝票標準化。
物流は標準化するほど強くなります。
包装資材も同じです。
■ 消費者が気付いていない変化
もし今後さらに資材が逼迫した場合。
最初に起きるのは欠品ではありません。
起きるのは、
見た目の変化
です。
例えば、
- 印刷色数削減
- 容器簡素化
- ラベル統一
- デザイン変更
こうした変化が先に現れます。
実際、
企業は商品の中身より先に包装を見直します。
なぜなら、
供給を止めないためです。
つまり消費者が
「最近パッケージ変わったな」
と思ったとき、
裏側では物流が必死にバランスを取っている可能性があります。
■ 私が注目しているのは別の場所
今回のニュースで私が最も注目したのは、
供給問題ではありません。
農水省が57項目を追跡していること自体
です。
なぜなら、
これは国が
「モノ」ではなく
「サプライチェーン」
を見始めた証拠だからです。
昔なら、
不足したら対応する。
でした。
今は違います。
不足する前に、
どこが詰まるかを監視している。
物流の考え方そのものです。
■ 結局、物流とは何なのか
物流というと、
多くの人はトラックを想像します。
しかし実際には違います。
物流とは、
モノを運ぶことではありません。
必要なモノを、必要な形で、必要な場所に届け続ける仕組み
です。
食品があっても容器が無ければ届かない。
容器があっても輸送できなければ届かない。
輸送できても保管できなければ届かない。
だから物流は、
トラックの問題ではなく、
サプライチェーン全体の接続設計なのです。
今回の57項目調査は、
その接続が今も機能しているかを確認するための健康診断だと私は見ています。
そして本当に見るべきなのは、
「供給に問題なし」
という結論ではありません。
その裏側で、
誰がどの資材を、 どこから調達し、 どのように流し続けているのか。
そこにこそ、
物流の本質があります。