物流業界入門

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【亀田製菓は物流を改善しているのではない】――「お菓子の形」から物流を変える企業の本気

6月14日食品新聞に興味深い内容が取り上げられていました。

トラックドライバーの人手不足などに対応 亀田製菓がパレット輸送拡大やパッケージの改善を推進(食品新聞) - Yahoo!ニュース

亀田製菓は、トラックドライバー不足への対応としてパレット輸送の拡大を進めています。

現在41%となっているパレット輸送比率を50%まで引き上げる方針を掲げるほか、商品のパッケージや段ボール設計の見直し、共通パレットへの切り替え、共同配送拠点の活用などを推進しています。

パレット輸送というと「荷役作業の効率化」というイメージがありますが、今回の取り組みを詳しく見ると、それだけではありません。

商品設計から輸送方法、在庫配置、配送ネットワークまでを一体で見直すことで、将来の物流能力そのものを確保しようとする動きが見えてきます。

私は今回の事例を見ていて、

亀田製菓は物流を改善しているのではなく、サプライチェーン全体を再設計しているのではないか

と感じました。

物流2024年問題以降、多くの企業が運賃や人手不足への対応に追われています。

しかし本当に問われているのは、運送会社の努力ではなく、荷主企業自身が物流をどう設計するかです。

今回は亀田製菓の取り組みから、その構造を考察してみたいと思います。


■ パレット輸送は「積み方の改善」ではない

記事では、

現在41%となっているパレット輸送比率を50%まで引き上げる方針が紹介されています。

一般的にパレット輸送というと、

フォークリフトで積み降ろしを行い、作業時間を短縮する施策として語られます。

もちろんそれも重要です。

しかし本質はそこではありません。

パレット輸送とは、

物流の標準化

です。

バラ積みでは、

作業者の経験や体力によって作業品質や時間が変わります。

一方でパレット輸送は、

誰が作業しても一定品質で処理できます。

つまり、

人の頑張りに依存していた物流を、

仕組みで回る物流へ変える取り組みなのです。


■ 本当に注目すべきはパッケージ改善

私が特に興味深いと感じたのは、

パレット輸送そのものではなく、

その前段階であるパッケージ改善です。

亀田製菓は、

  • トレーの削減
  • 空間率の低減
  • 段ボールのモジュール化

を進めています。

ある商品では、

1パレットあたりの積載ケース数が

65ケースから80ケースへ増加しました。

10トントラック換算では5,760袋分の積載量増加につながっています。

ここで重要なのは、

これは単なる包装変更ではないということです。

物流業界ではよく

「運びにくい商品」

という言葉があります。

実は物流コストの多くは、

倉庫や運送会社ではなく、

商品設計の段階で決まっています。

つまり亀田製菓は、

物流センターで改善するのではなく、

商品開発段階から物流効率を高めているのです。


■ 「積載効率が落ちるから反対」は本当に正しいのか

パレット輸送には課題があります。

積載効率が低下することです。

そのため物流業界では長年、

「バラ積みの方が効率的」

と言われてきました。

確かにトラック1台あたりの積載量だけを見ると、その考え方は正しいでしょう。

しかし今の物流業界が不足しているのは、

トラックではありません。

人です。

今回のコンテナ輸送テストでは、

積込で40分、

荷降ろしで35分、

合計75分の作業時間短縮が実現しています。

もしこれが毎日発生するならどうでしょう。

削減されるのは作業時間だけではありません。

  • ドライバー拘束時間
  • 荷待ち時間
  • 倉庫作業時間
  • 労務負荷

すべてが削減されます。

つまり、

これからの物流は

「何個積めるか」

ではなく、

「何時間削減できるか」

の時代に入っているのです。


■ 物流業界は「積載率競争」から「労働生産性競争」へ

私は物流業界が今まさに転換点にあると感じています。

これまでの物流は、

積載率を最大化することが正義でした。

しかし人手不足が深刻化した現在、

本当に重要なのは

労働生産性

です。

例えば、

積載率95%で3時間かかる輸送と、

積載率85%でも1時間で終わる輸送。

将来の人手不足を考えたとき、

どちらが持続可能でしょうか。

これからの物流は、

積載率よりも人の時間をどう使うかが重要になります。

亀田製菓の取り組みは、

まさにその方向を示しているように見えます。


■ 実は本命は共同配送かもしれない

記事後半では、

群馬県板倉町に開設された共同物流センターについても紹介されています。

亀田製菓グループの新潟輸送と、

三菱食品グループが連携し、

共同物流センターを稼働させています。

私はここに大きな意味があると思います。

これまで物流業界は、

各社がそれぞれ倉庫を持ち、

それぞれトラックを走らせる構造でした。

しかし人口減少社会では、

このモデルは限界を迎えます。

だからこそ、

物流を競争領域ではなく共有領域として考える動きが重要になるのです。

競争は商品で行う。

物流は共同で行う。

そんな発想がこれからの時代には必要なのかもしれません。


■ 私が最も重要だと思った視点

今回の記事を読んでいて、

私が最も重要だと感じたのは別の部分です。

それは、

亀田製菓が物流会社を助けようとしているのではない

ということです。

よく物流改善というと、

「ドライバーのため」

「運送会社のため」

という話になりがちです。

しかし企業経営として考えれば本質は違います。

亀田製菓が守ろうとしているのは、

将来の出荷能力です。

どれだけ商品が売れても、

運べなければ売上にはなりません。

つまり物流改善とは、

コスト削減活動ではなく、

未来の輸送枠を確保するための投資

なのです。

物流会社の人手不足は、

荷主企業にとっても販売機会損失のリスクになります。

だから今、

先進的な企業ほど物流を経営課題として捉え始めています。


■ おわりに

今回の亀田製菓の取り組みは、

単なるパレット輸送拡大の話ではありません。

そこに見えるのは、

「運び方を変える」のではなく、

「運ばれ方そのものを変える」

という発想です。

商品設計も、

包装設計も、

発注方法も、

物流拠点も、

共同配送も、

すべてが一つのサプライチェーンとして再設計されています。

物流問題は運送会社だけでは解決できません。

そして物流改善は物流部門だけの仕事でもありません。

亀田製菓の事例は、

これからの物流改革とは、

現場改善ではなく経営そのものの再設計であることを示しているように感じました。