日経平均株価が史上初めて6万9000円台を記録しました。
背景にあるのは、アメリカのトランプ大統領が発表したイランとの戦闘停止合意です。
ホルムズ海峡の通航再開への期待から原油価格が下落し、市場ではリスク後退として株式が買われました。
しかし物流の視点で見ると、私は少し違う見方をしています。
むしろ今は、
「危機が終わった」のではなく、「危機の後始末が始まった」段階
だからです。
■ 株価と物流は見ている景色が違う
株式市場は未来を先読みします。
停戦期待が出れば買う。
原油が下がれば買う。
景気回復が見えれば買う。
それが市場です。
一方で物流は違います。
物流は現実世界です。
実際に船が動き、 実際に荷物が流れ、 実際に倉庫が機能して初めて正常化します。
つまり、
市場が回復する速度と
物流が回復する速度は一致しません。
■ ホルムズ海峡が開けば終わりではない
報道では
「ホルムズ海峡再開」
ばかりが注目されています。
しかし物流現場はもっと冷静です。
仮に通航が再開されたとしても、
- 船会社の運航計画
- 海上保険料
- 危険海域加算
- 船腹配置
- 港湾混雑
はすぐには元に戻りません。
物流は蛇口ではありません。
閉めたら止まり、 開けたら流れる。
そんな単純な仕組みではないのです。
■ 原油価格より怖いのは「価格変動」
物流企業が本当に困るのは、
原油高そのものではありません。
急激な変動です。
例えば、
1か月前に見積もった運賃。
契約した燃料費。
荷主との年間契約。
これらはすぐには変更できません。
原油が上がれば苦しくなる。
原油が急落しても調整が追いつかない。
物流会社は常に後追いです。
つまり今回の問題は、
「原油が下がって良かった」
ではなく、
「異常な変動が続いている」
ことにあります。
■ 日本物流への本当の影響
今回の中東情勢で最も大きな影響を受けたのは、
実は海運だけではありません。
航空貨物です。
世界の物流ネットワークは相互接続されています。
欧州向け貨物。
中東経由貨物。
アジア発着貨物。
これらが同じ機材や輸送ネットワークを共有しています。
一部が止まるだけで、
全体が歪みます。
物流は道路の渋滞と同じです。
事故が起きるのは一か所でも、
渋滞は何十キロ先まで伸びます。
■ 私が気になっていること
今回のニュースで市場は歓喜しました。
しかし私は別の数字を見ています。
それは、
「物流コストが本当に下がるのか」
です。
株価は期待で上がります。
しかし物流費は期待では下がりません。
- 燃料価格
- 船舶保険
- 人件費
- 車両費
- 金利
これらが同時に下がらなければ物流コストは下がりません。
そして現実には、
人件費は上昇基調です。
設備投資コストも上昇しています。
つまり原油が一時的に下がったとしても、
物流企業の経営環境が急激に改善するわけではありません。
■ 株価は期待を買うが、物流は現実を運ぶ
今回の株高を見ていると、
市場は「危機の終了」を買っています。
しかし物流の視点で見ると、
まだ危機の検証が始まった段階です。
本当に重要なのは、
ホルムズ海峡が開くことではありません。
再び閉じても耐えられる供給網を持っているかです。
物流とは輸送ではありません。
物流とは、
止まらない仕組みを作ること
です。
今回の中東情勢で見えたのは、
世界経済が依然として一つの海峡に大きく依存しているという現実です。
株価は最高値を更新しました。
しかしサプライチェーンの脆弱性は消えていません。
むしろ今回の混乱は、
「物流をコストとして扱う時代の終わり」
を改めて示したのかもしれません。
これから企業に問われるのは、
安い物流ではなく、
止まらない物流をどう設計するか。
その視点こそが、これからの物流経営に必要な考え方だと私は考えています。