帝国データバンクの調査によると、主要食品メーカー195社における2026年の飲食料品値上げは、6月1日時点で累計11,157品目となりました。
調査開始以来、5年連続で年間1万品目を超えることが確実となり、年間では1万5,000〜2万品目規模となる可能性があります。
最も多かったのは、
- 加工食品
- 冷凍食品
- パックご飯
などを含む「加工食品」で4,179品目。
背景には、
食品そのものではなく、
包装資材であるフィルムやトレー、紙パックなどの価格上昇があります。
■ 食品が高くなっているのではない
多くの報道では、
「食品が値上げ」
と表現されます。
もちろん結果としては正しい。
しかし私は少し違う見方をしています。
値上げしているのは食品ではありません。
サプライチェーンです。
食品価格は、
農産物だけで決まりません。
原材料。
包装資材。
電力。
ガス。
物流。
人件費。
為替。
燃料。
その全てが積み重なって、
初めてスーパーの価格になります。
つまり、
スーパーで見る価格は、
サプライチェーン全体の通信簿なのです。
■ なぜ包装資材が高くなるのか
今回特徴的なのは、
包装資材価格の上昇です。
背景には、
中東情勢の影響を受けたナフサ価格の上昇があります。
ナフサは、
食品トレーや食品フィルムなど、
多くの包装資材の原料です。
原料価格が上がれば、
包装メーカーのコストが上がる。
包装メーカーが値上げする。
食品メーカーのコストが上がる。
結果として、
食品価格へ反映されます。
つまり今回の値上げは、
食品会社だけの問題ではありません。
石油化学産業から始まったコスト上昇が、
食品売場まで伝わってきた結果なのです。
■ なぜ前年も値上げが多かったのか
ここが重要です。
前年(2025年)も、
食品値上げは約2万品目となり、
2年ぶりに2万品目を超えました。
その理由は一つではありません。
複数のコストが、
同時に積み上がったからです。
例えば、
- 原材料価格の高止まり
- 円安による輸入コスト増
- エネルギー価格の上昇
- 人件費の上昇
- 物流費の上昇
- 包装資材価格の上昇
これらが重なり、
「一時的な値上げ」ではなく、
「値上げの常態化」が進みました。
以前であれば、
企業はコストを自社努力で吸収していました。
しかし、
吸収できる余地はすでに限界に近づいています。
だから価格へ転嫁する。
それが当たり前になった一年だったと言えます。
■ なぜ今年は前年並みになりそうなのか
多くの人は、
こう考えます。
「去年たくさん値上げしたのだから、
今年は落ち着くのでは?」
しかし、
現実はそう単純ではありません。
値上げは、
原材料だけで決まるものではないからです。
今年は、
包装資材価格が再び上昇しています。
ナフサ価格だけではなく、
人件費も、
物流費も、
エネルギーコストも、
依然として高い水準が続いています。
つまり、
昨年とは原因が少し違う。
しかし、
コスト全体は下がっていない。
だから、
前年並みの値上げ規模になる可能性があるのです。
■ 物流は値上げの原因ではない
物流業界では、
よく言われます。
「物流費が高いから値上げした。」
確かに一因ではあります。
しかし、
物流だけを悪者にするのは正確ではありません。
物流は、
コストを発生させているだけではありません。
原材料を運ぶ。
包装資材を運ぶ。
工場へ運ぶ。
スーパーへ届ける。
物流が止まれば、
食品は一つも店頭に並びません。
つまり物流は、
値上げ要因でもあり、
社会インフラでもあります。
だから私は、
物流費だけを切り取って議論することには違和感があります。
■ 私の考察
今回のニュースは、
食品価格の話ではありません。
私は、
物流の話だと考えています。
物流は、
価格を決める産業ではありません。
しかし、
価格を社会へ伝える産業です。
原材料価格が上がる。
包装資材が上がる。
エネルギー価格が上がる。
その変化は、
物流を通じて工場へ、
物流を通じて小売へ、
そして物流を通じて消費者へ届きます。
つまり物流は、
モノだけを運んでいるのではありません。
コストの変化も運んでいるのです。
物流業界では、
「物流費が上がるから値上げになる」
と言われることがあります。
しかし実際には、
物流だけが価格を押し上げているわけではありません。
物流は、
サプライチェーン全体で発生したコストをつなぐ役割を担っています。
だから私は、
スーパーの値札を見るとき、
商品の価格だけを見ません。
その価格に至るまで、
どれだけ多くの企業が関わり、
どれだけ多くの物流が支えてきたのかを考えます。
値上げとは、
誰か一社の問題ではありません。
サプライチェーン全体で積み上がったコストが、
物流というネットワークを通じて、
最終的に価格として社会へ届いた結果です。
私は以前、
「物流問題は存在しない。存在するのは接続の問題だ」と書きました。
今回のニュースも同じです。
値上げの原因は一つではありません。
世界情勢、エネルギー、原材料、包装資材、人件費…。
それぞれが複雑につながり、その変化が物流を介して価格へ反映されています。
だからこそ物流は、
単なる輸送業ではなく、
社会の変化を最も早く映し出すインフラなのだと私は考えています。