X(旧Twitter)のフォロワーさんの投稿で、「技人国(技術・人文知識・国際業務)」について非常に興味深い内容を拝見しました。
物流業界でも耳にする機会が増えていますが、「何となく外国人が働ける在留資格」という程度の認識で捉えてしまうと、大きな誤解につながります。
そこで今回は、出入国在留管理庁が公表している制度を確認しながら、「技人国」とは何か、そしてなぜ物流業界で様々なミスマッチが起こりやすいのかを深掘りしてみました。
■ 「技人国」とは何か
「技人国」とは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の業界略称です。
この在留資格は、
理学・工学などの専門技術、
法律・経済・経営などの人文知識、
外国の文化や言語を活用する国際業務など、
専門的な知識や技能を必要とする業務に従事する外国人を対象としています。
代表例として、
・システムエンジニア
・機械設計
・マーケティング
・経理
・海外営業
・通訳・翻訳
・語学講師
などが挙げられています。
つまり、
制度の設計思想そのものが、
「専門性を活かして働く人材」を想定しています。
■ 「物流会社で働ける」のではなく、「どの業務に従事するか」が重要です
ここで誤解されやすい点があります。
物流会社で働くこと自体が問題なのではありません。
例えば、
国際物流の営業、
海外顧客との折衝、
輸出入業務、
物流システムの設計、
サプライチェーンの分析、
物流DXの企画、
こうした専門業務であれば、「技人国」の対象となり得ます。
つまり、
重要なのは会社名ではなく、
実際に従事する業務内容です。
■ 接続不良は「人」ではなく「制度理解」にあります
物流業界では慢性的な人手不足が続いています。
そのため、
「外国人材を採用したい」
というニーズは年々高まっています。
しかし、
ここで制度への理解が曖昧なまま採用を進めると、
現場との間に大きな接続不良が生まれます。
例えば、
採用時は物流企画や貿易事務として採用したにもかかわらず、
慢性的な人手不足を理由に、
倉庫での仕分け、
ピッキング、
荷役作業、
現場作業が業務の中心になってしまう。
このような状態になると、
在留資格で認められた活動内容との整合性が問題になる可能性があります。
在留資格は、
「どの会社で働くか」ではなく、「どの業務を行うか」
によって判断される制度だからです。
■ 本当に起きているのは「制度」と「現場」のズレ
ここで見えてくるのは、
外国人材の問題ではありません。
物流会社の問題だけでもありません。
本質は、
制度設計と現場運営の接続不良です。
制度は、
専門人材として働くことを前提にしています。
一方、
現場は人手不足です。
結果として、
専門職として採用した人材に、
現場作業まで期待してしまう。
この瞬間、
制度が想定する役割と、
現場が求める役割が一致しなくなります。
つまり、
ズレているのは人材ではなく、
制度と運用です。
■ 特定技能との違いを理解することが重要です
この点で混同されやすいのが「特定技能」です。
特定技能制度は、
人手不足が深刻な産業分野で、
一定の技能を持つ外国人が現場業務に従事できるよう設計された制度です。
現在では、自動車運送業や物流倉庫分野も対象となっています。
つまり、
制度の目的そのものが異なります。
技人国は、
専門知識を活かす人材。
特定技能は、
現場を支える技能人材。
両者は似ているようで、
制度設計は全く異なります。
■ 物流改革で本当に必要なのは「制度理解」です
物流改革というと、
DXやAI、
自動化設備、
共同配送などに目が向きがちです。
しかし、
人材制度もまた、
物流を支える重要なインフラです。
制度を理解せずに採用を進めれば、
企業も、
働く外国人も、
期待と現実のギャップに苦しむことになります。
逆に、
制度の目的を理解し、
適切な役割で活躍できる環境を整えれば、
企業にとっても、
外国人材にとっても、
持続可能な雇用につながります。
■ まとめ
今回調べて改めて感じたのは、
問題は「外国人材」ではないということです。
本質は、
制度の設計思想と、現場の運用が一致しているかどうかにあります。
物流はモノを運ぶ仕事ですが、
その前提には、
制度、
人材、
教育、
ガバナンス、
こうした様々な仕組みが正しく接続されていることが必要です。
私は物流を考えるとき、
単なる人手不足や採用の問題としてではなく、
制度・経営・現場がどれだけ正しく接続されているかという視点で見ることが重要だと考えています。
そして「技人国」の制度は、その接続の重要性を改めて教えてくれる事例なのではないでしょうか。