段ボール最大手のレンゴーが、これまで進めてきた海外事業の拡大路線を見直し、採算重視へと大きく舵を切ります。
2026年3月期は、欧州における自動車部品向け段ボール需要の低迷などが影響し、海外事業が11期ぶりの営業赤字となりました。これを受け、同社は海外売上高比率の目標を従来より引き下げ、利益を重視した経営へ転換する方針を示しています。
一見すると「段ボールメーカーの経営判断」に見えるニュースですが、物流業界の視点で見ると、その意味は決して小さくありません。
物流の現場にも通じる「量より質」の時代が、さらに鮮明になってきたと言えるでしょう。
海外拡大路線の見直し
レンゴーはこれまで、海外企業の買収を積極的に進め、事業規模の拡大を図ってきました。
しかし近年は、
- 欧州経済の減速
- 自動車産業の生産調整
- 地政学リスクの高まり
- 海外子会社のガバナンス強化
といった課題が重なり、海外事業の収益性が悪化しました。
同社は今後について、
「地政学リスクやガバナンスを考慮し、拡大ペースを抑えて質の改善に当面は注力する」
との方針を示しています。
つまり、「売上を追う経営」から「利益を残す経営」へと経営の軸足を移したことになります。
段ボールは物流そのものを映す業界
段ボールは単なる包装資材ではありません。
物流では、
- 製造
- 保管
- 輸送
- EC配送
- 輸出入
あらゆる場面で使われています。
つまり段ボール需要は、そのまま物流需要や製造業の動きを映す"景気の鏡"とも言える存在です。
今回、欧州で自動車部品向け段ボールの需要が落ち込んだということは、自動車物流そのものが弱含んでいることを示しているとも読み取れます。
包装資材メーカーの業績は、物流業界全体の温度感を知る重要な指標でもあるのです。
地政学リスクは物流コストそのもの
レンゴーが言及した「地政学リスク」。
これは物流業界にとっても無関係ではありません。
世界では現在も、
- 紅海情勢
- ウクライナ情勢
- 米中対立
- エネルギー価格の変動
などが物流ネットワークへ影響を与えています。
これらは、
- 海上運賃
- コンテナ不足
- リードタイム
- 原材料価格
すべてに影響を及ぼします。
海外展開を進めるほど、こうしたリスクを避けることは難しくなります。
だからこそ、規模より利益を優先する経営判断は、物流業界にも共通する考え方と言えるでしょう。
「売上が伸びれば成功」はもう通用しない
物流会社でも近年は、
「売上は増えているのに利益が残らない」
というケースが珍しくありません。
燃料価格の上昇、人件費の増加、車両価格の高騰、2024年問題への対応など、コストが大きく膨らんでいるためです。
荷物を多く運んでも利益が出なければ、会社は持続できません。
レンゴーの今回の判断は、まさにその現実を映しています。
売上だけを追い続ける経営ではなく、
「利益を確保できる仕事を選ぶ」
という考え方が、これからの物流業界でもますます重要になるでしょう。
物流業界への示唆
今回のニュースから見えてくるのは、「成長=拡大」ではないということです。
これからは、
- 利益率
- 生産性
- リスク管理
- ガバナンス
- 安定した事業基盤
こうした"質"が企業価値を左右する時代になっています。
物流業界も同じです。
人手不足が続く中で、無理に仕事量だけを増やす経営には限界があります。
利益を確保しながら持続可能な物流を築くことこそが、これから企業に求められる競争力になるでしょう。
編集後記
レンゴーの戦略転換は、一企業だけの話ではありません。
物流、製造業、包装資材。
サプライチェーン全体が、「量の時代」から「質の時代」へと移行していることを象徴する出来事と言えます。
市場が不透明な時代だからこそ、重要なのは売上規模ではなく、利益を生み続けられる体質づくりです。
物流業界もまた、荷物を運ぶ量ではなく、持続可能な経営を実現できる企業が選ばれる時代へと入っていくのではないでしょうか。