大阪メトロは2026年6月26日、大阪市内で保管していた100台以上のEV(電気自動車)バスの搬出を完了しました。
搬出された車両は、2025年大阪・関西万博に合わせて導入された190台の一部です。
一連のニュースを見ると「中国製EVバスが廃棄された」という話題だけが注目されがちですが、本質はそこではありません。
物流や公共交通の視点から見ると、この問題は設備投資・品質管理・ライフサイクルマネジメントの重要性を示す事例と言えます。
まず何のために190台も導入したのか
大阪メトロは、2025年大阪・関西万博の来場者輸送を担うため、EVモーターズ・ジャパン(EVMJ)からEVバス190台を導入しました。
内訳は、
- 大型バス115台
- 小型バス35台
- 超小型バス40台
です。
大型・小型合わせて150台は、万博会場へのシャトルバスなどとして運行されました。
超小型40台は、大阪市内でオンデマンドバスとして活用されていました。
万博が終われば役目は終わりではなかった
この190台は、万博だけのために購入した車両ではありませんでした。
大阪メトロは当初から、
- 万博終了後は路線バスへ転用
- 自動運転バスの実証実験への活用
を計画していました。
つまり、万博は「導入のきっかけ」であり、その後も長期間にわたって公共交通で活用することが前提だったのです。
しかし運行中に事故や不具合が相次ぐ
万博期間中には、車両が壁や縁石へ接触する事故が発生しました。
さらに、ブレーキ系統などを含む不具合が確認され、大阪メトロは独自点検や国土交通省の対応を踏まえて車両の安全性を検証しました。
その結果、
大阪メトロが求める安全性を確保することは困難
と判断し、2026年3月31日に190台すべてについて今後使用しない方針を正式に発表しました。
その後、メーカーは民事再生へ
大阪メトロはEVモーターズ・ジャパンに対し、
- 車両の引き取り
- 購入代金の返還
などを求めました。
しかし、EVモーターズ・ジャパンは2026年4月に民事再生手続きへ入りました。
そのため車両は大阪メトロ敷地内で保管される状況となり、多くの車両が並ぶ様子は「EVバスの墓場」とも報じられました。
そして2026年6月、保管車両の搬出が完了
2026年6月26日、大阪メトロは保管していた100台以上のEVバスの撤去を完了しました。
搬出先は富山県内で、今後の取り扱いが決まるまで保管される予定です。
本来は万博後も路線バスや自動運転実証で活躍するはずだった190台は、その役割を果たすことなく運用を終えることになりました。
私が注目したポイント
物流業界では設備投資は「購入した瞬間」がゴールではありません。
車両であれば、
- 安全に運行できること
- 継続して保守できること
- 部品供給が維持されること
- 長期間にわたり稼働できること
まで含めて初めて投資が成功したと言えます。
今回の190台も、本来は万博終了後に路線バスや自動運転実証へ転用することで投資を回収する計画でした。
しかし、安全性の問題によってその前提が崩れました。
その結果、輸送という「動脈物流」ではなく、保管・搬出・管理という「静脈物流」が新たに発生することになりました。
物流は「運ぶ産業」ですが、設備が計画どおり長期間稼働して初めて価値を生みます。
今回の事例は、価格や導入スピードだけでなく、品質保証・保守体制・メーカーの事業継続性まで含めたライフサイクル全体で設備投資を評価することの重要性を示した事例として、物流業界にとっても大きな教訓と言えるでしょう。