置き配を巡る相談件数が年々増えています。
報道によれば、東京都内で寄せられた置き配に関する相談は2025年度に550件となり、6年前の約5倍に増加しました。
盗難。
誤配。
指定していない置き配。
そして荷物の紛失。
一方で政府は、再配達削減と物流効率化の切り札として置き配の普及を進めています。
しかし今回のニュースを見て私が感じたのは、
「置き配そのものが問題なのではない。」
むしろ、
安心して置き配できる環境が整っていないこと
こそが本当の課題ではないでしょうか。
■ 私が以前指摘した「置き配標準化」の限界
以前私は、
置き配を標準化する前に、
配送の信頼性を回復すべきではないかという記事を書きました。
【政策のズレ】置き配「標準化」は本当に効くのか──佐川・ヤマトの遅延と合わせて考える物流の現場リアリティ - 物流業界入門
その理由は単純です。
物流は
「早く届ける」
だけではありません。
「安心して受け取れる」
ことまで含めて物流品質だからです。
配送遅延が続き、
配送品質への不安が広がる中で、
さらに盗難リスクまで加われば、
消費者は置き配を選びにくくなります。
つまり、
置き配を普及させようとするほど、
安心して置ける環境整備が重要になるのです。
■ 自治体の動きが変わり始めた
今回注目したいのは、
自治体の政策です。
横浜市では2026年6月から、
宅配ボックスを共同調達し、
市民へ市場価格より安価で提供する取り組みを始めました。
また、
東京都でも
新宿区、
品川区、
江東区、
世田谷区などが、
宅配ボックス設置支援を進めています。
ここで重要なのは、
補助金だけではありません。
行政の考え方が変わっています。
以前は、
「置き配を利用してください」
という啓発でした。
しかし現在は、
「安全に置き配できる環境を整備します」
という方向へ変わり始めています。
これは大きな違いです。
■ 宅配ボックスは防犯設備でもある
宅配ボックスは、
物流設備として語られることが多くあります。
しかし私は、
防犯設備として見るべきだと思っています。
宅配ボックスがあれば、
荷物が玄関前に放置される時間はなくなります。
盗難リスクも減ります。
再配達も減ります。
ドライバーの負担も軽くなります。
つまり、
宅配ボックスは
物流政策、
住宅政策、
防犯政策、
脱炭素政策を同時に実現できる数少ない設備なのです。
■ 本当に足りないのは「受取インフラ」
日本の物流は、
配送ネットワークばかり発展してきました。
しかし、
受け取る側のインフラ整備は、
十分だったとは言えません。
配送センターは増え、
物流施設は大型化し、
輸送効率は向上しました。
一方で、
玄関には何も変化がありません。
だからこそ、
最後の数メートルで問題が起きます。
ラストワンマイルと言われますが、
実際には
ラスト1メートル
の課題なのです。
■ EC時代に住宅も変わる必要がある
住宅は、
「住む場所」
として設計されてきました。
しかし、
EC利用が当たり前になった現在では、
「荷物を受け取る場所」
という役割も持っています。
それにもかかわらず、
宅配ボックスが設置されていない住宅はまだ少なくありません。
私は、
これからの住宅には、
駐車場や郵便受けと同じように、
宅配ボックスが標準設備になっていく可能性が高いと考えています。
■ 「置き配標準化」より「受取環境標準化」
政策の方向性も見直す時期ではないでしょうか。
置き配を標準にする。
これでは、
受け取り側に負担を求める政策になります。
しかし、
宅配ボックス、
オートロック対応、
共同受取拠点、
コンビニ受取、
駅受取、
PUDOなど、
受取方法そのものを充実させれば、
消費者は自然に置き配を選択できるようになります。
つまり、
必要なのは
置き配の標準化ではなく、受取環境の標準化
なのです。
■ 物流インフラとして
物流2024年問題以降、
私たちは
「運ぶこと」
ばかり議論してきました。
しかし、
今回のニュースが示しているのは、
物流は運ぶだけでは完結しないということです。
受け取る仕組み。
住宅設備。
防犯。
地域インフラ。
行政支援。
これらが揃って初めて、
物流は完成します。
置き配トラブルの増加は、
単なる盗難事件ではありません。
配送インフラは進化した一方で、受取インフラの整備が追いついていなかったことを私たちに突き付けた出来事とも言えるでしょう。
物流の未来は、
トラックだけでは変わりません。
玄関もまた、
物流インフラの一部として考える時代が始まっています。