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【日本郵便とトナミが「一つの物流網」へ】――共同物流拠点の本当の意味は「倉庫の統合」ではない。「物流会社」という概念そのものが変わり始めた

日本郵便が7月1日、横浜市金沢区に新たな物流拠点を報道公開しました。

この施設は、2025年に日本郵便グループ入りしたJPトナミグループ(旧トナミホールディングス)との初めての共同物流拠点となります。

表面的には「新しい物流センターができた」というニュースです。

しかし、物流の構造から見ると、このニュースの意味はそれほど単純ではありません。

私は、この共同拠点を見て一つの時代の転換点を感じました。

物流会社同士が競争する時代から、物流ネットワーク同士が競争する時代へ。

その象徴が、この横浜共同拠点なのです。


新拠点の概要

新拠点は横浜市金沢区に開設され、2026年6月22日に稼働を開始しました。

延床面積は約4万3,700平方メートル。

首都高速湾岸線・幸浦ICから約2.7km、横浜港にも近い立地で、幹線輸送と港湾物流の双方に優れたアクセスを備えています。

施設内には、

・JPロジスティクス横浜支店 ・トナミ運輸横浜営業所 ・トナミ運輸横浜流通センター

が集約され、特別積合せ輸送(特積み)と3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)の両機能を備えた複合拠点として運用されます。


注目すべきは「共同利用」ではない

今回、多くの報道では

「共同拠点」

という言葉が使われています。

しかし、本質はそこではありません。

重要なのは、

物流ネットワークそのものを共同運営し始めたことです。

例えば、

横浜から北陸方面へ向かう荷物はトナミ運輸。

九州方面へ向かう荷物はJPロジスティクス。

さらに、

横浜市内でも担当エリアを分担し、

一人のドライバーが両社の荷物を配達する仕組みが導入されます。

これは単なる施設共有ではありません。

配送網そのものの再設計です。


「特積み」と郵便ネットワークが融合する意味

トナミ運輸最大の強みは、

企業間物流(BtoB)の特別積合せ輸送です。

全国の荷物を方面別に集約し、

幹線輸送で大量輸送する仕組みを長年築いてきました。

一方、日本郵便グループには、

全国に張り巡らされた配送網があります。

これまで、

両社は似た地域を別々のトラックが走っていました。

今回の共同拠点では、

その重複を取り除きます。

つまり、

同じ道路を、

同じ時間に、

二台のトラックが走る必要がなくなるのです。


本当の狙いは「ドライバー不足対策」

物流2024年問題以降、

業界最大の課題は

車両不足ではありません。

ドライバー不足です。

だからこそ、

今回の取り組みで最も重要なのは

「一人で二社分を運ぶ」

という考え方です。

物流会社を増やすことはできません。

ドライバーも急には増えません。

ならば、

一人当たりの生産性を高めるしかない。

今回の共同配送は、

その最も現実的な解決策の一つと言えます。


倉庫より価値が高いのは「ネットワーク」

物流施設は巨大化しています。

しかし、

物流会社が本当に持つ競争力は、

建物ではありません。

ネットワークです。

ネットワークとは、

・輸送ルート

・配達エリア

・荷物量

・積載率

・配送頻度

・人材配置

これら全体を最適化する仕組みです。

今回統合されたのは、

まさにこの部分です。


物流会社という概念が変わり始めた

従来、

物流会社は

「自社の荷物を自社で運ぶ」

ことが基本でした。

しかし現在は違います。

これからは、

他社の荷物も運び、

他社のネットワークも活用し、

必要なら共同配送する。

競争するのは会社ではなく、

物流プラットフォームになります。

今回の共同拠点は、

その第一歩と言えるでしょう。


実は一番大きいのは「CO₂削減効果」

一人で二社分を配達できれば、

当然ながら

・走行距離

・燃料使用量

・車両台数

が減少します。

つまり、

今回の共同配送は

環境対策でもあります。

最近はESGやGXが注目されていますが、

物流で最も効果的な脱炭素は、

トラックをEVに替えることだけではありません。

トラックそのものを減らすことです。

共同配送は、

極めて実効性の高い脱炭素施策でもあります。


このモデルは全国へ広がる可能性が高い

日本郵便は、

今回を第一号拠点と位置付けています。

つまり、

横浜だけで終わる話ではありません。

今後、

各地域でも

・共同物流拠点

・共同配送

・共同幹線輸送

が順次進められる可能性があります。

特に、

人口減少が進む地方では、

このモデルの効果はさらに大きくなるでしょう。


行政が考えるべきこと

共同配送は、

企業努力だけでは限界があります。

行政には、

・物流施設用地の確保

・共同物流拠点への支援

・都市計画との連携

・大型車動線の整備

・高速道路アクセス改善

など、

共同物流を前提としたインフラ整備が求められます。

物流効率化は、

企業だけで完結する課題ではありません。


荷主企業も発想を変える時代

今回の共同拠点は、

荷主にも重要な問いを投げかけています。

これまでは、

「どの物流会社に任せるか」

が重要でした。

しかし今後は、

どの物流ネットワークに乗せるか

が競争力になります。

荷主も、

共同配送を前提とした物流設計を考える時代に入りました。


終わりに

日本郵便とJPトナミグループの共同物流拠点は、

新しい物流センターの完成というニュースではありません。

本当に始まったのは、

物流ネットワークそのものの再編です。

物流会社同士が競争していた時代から、

ネットワークを共有し、

リソースを最適化し、

一人のドライバーが複数企業の物流を支える時代へ。

これは物流2024年問題への対応策であると同時に、日本の物流構造そのものを変える挑戦でもあります。

私は、この横浜の共同拠点を「一つの物流施設」ではなく、

"物流会社"という概念が"物流プラットフォーム"へ進化する第一歩として捉えています。

これから物流業界で競争力を持つのは、車両を多く持つ企業ではありません。

荷物・人・拠点・情報を最も効率よく結び付けられる企業です。

横浜で始まったこの挑戦は、その未来を象徴する重要な一歩になるのではないでしょうか。