物流ニュースでは毎月のように、
「宅配便○%減」 「取扱個数○%増」
という数字が報じられます。
しかし、物流の構造を見る立場から言えば、
個数だけを見ても、本当の変化は見えてきません。
いま大手物流会社が競争しているのは、
「何個運んだか」ではなく、
限られた輸送力を、どれだけ利益へ変えられるか。
そこに競争軸が移っています。
最新データが示したもの
7月に入り、大手各社から最新の取扱実績が公表されました。
例えば、
ヤマト運輸では2026年6月、
- 宅急便・宅急便コンパクト・EAZY 1億5564万9034個(前年同月比4.3%減)
- ネコポス・クロネコゆうパケット 4460万1197個(16.6%増)
- クロネコゆうメール 740万892冊(10.0%減)
となりました。
宅配便本体は減少しましたが、
薄物配送は大きく伸びています。
これはEC市場の変化や荷物の小型化を反映した結果と考えられます。
大手5社を見ると競争の形が変わっている
国内物流を代表する大手を見ると、
それぞれ役割が明確になっています。
ヤマト運輸
BtoC宅配最大手。
近年は
- 宅急便
- EAZY
- ネコポス
- クロネコゆうパケット
など、
EC向け配送へ経営資源を集中しています。
佐川急便
BtoB比率が高く、
法人物流に強みがあります。
EC需要も取り込みながら、
企業間輸送とのバランスを維持しています。
日本郵便
郵便物減少が続く一方、
ゆうパックや法人物流を拡大。
さらにJPはトナミHDをグループ化し、企業物流の強化を進めています。
西濃運輸
特積み輸送の代表企業。
宅配便ではなく、
企業間混載輸送を強みとし、
近年は共同配送や幹線輸送改革を加速しています。
NXグループ(日本通運)
宅配会社ではありません。
しかし、
国内最大級の総合物流企業として
- フォワーディング
- 倉庫
- 国際物流
- 重量品輸送
まで含め、
物流全体を支えています。
数字以上に重要なのは「荷物の質」
昔は、
荷物が増えるほど利益が増えました。
しかし現在は違います。
例えば同じ1個でも、
- 大型家具
- 冷蔵食品
- 医薬品
- ネコポス
では、
必要な人員も設備もコストも全く異なります。
つまり、
重要なのは
何個運んだかではなく、どんな荷物を運んだか。
ここが物流経営の本質になっています。
「宅配便減少=悪いニュース」ではない
ヤマトの宅急便が減少すると、
一見すると需要減少にも見えます。
しかし、
ネコポスやクロネコゆうパケットは大幅増となっています。
これは
EC事業者が
より安価で、
郵便受け配送可能な商品へ移行していることを示しています。
つまり、
物流需要が消えたわけではありません。
配送形態が変わっただけなのです。
各社は「量」ではなく「最適化」を競っている
2024年問題以降、
輸送力は無限ではなくなりました。
だから各社は、
- 再配達削減
- 積載率向上
- 幹線共同輸送
- AI配車
- 置き配
- 小型配送
へ投資しています。
目的は一つ。
同じドライバーで、より高い付加価値を生み出すこと。
宅配会社と総合物流会社ではKPIが違う
ここを混同すると、
物流は理解できません。
例えば、
ヤマトや佐川、日本郵便は
配送個数が重要指標になります。
一方、
西濃運輸やNXでは
重要なのは
- トン数
- 車両稼働率
- 積載率
- 幹線効率
- 倉庫回転率
- 国際輸送量
です。
つまり、
同じ物流会社でも
見ている数字は全く違います。
本当の競争は「物流ネットワーク」
昔は
会社同士が競争していました。
しかし現在は違います。
競争しているのは
物流ネットワーク同士です。
例えば
ヤマトは
EC配送網。
日本郵便は
郵便ネットワークと企業物流。
佐川は
法人物流。
西濃は
特積み。
NXは
グローバル物流。
それぞれ違う武器で市場を支えています。
今後の示唆
今後、
毎月公表される配送個数を見る際、
注目すべきなのは
「増えた・減った」
ではありません。
見るべきなのは
- どの商品が増えたか
- BtoBかBtoCか
- 小型化しているか
- 単価は改善しているか
- 幹線輸送はどう変化したか
です。
物流は
数量競争から、収益構造競争へ。
さらに、
収益構造競争から、ネットワーク競争へ。
その転換点にあります。
考察後記
私は今回の各社データを見て、宅配業界は「荷物を奪い合う時代」から、「運べる荷物を選ぶ時代」に入ったと感じました。
ドライバー不足、2024年問題、人件費や燃料費の上昇により、輸送力はもはや無限ではありません。だからこそ物流企業は、すべての荷物を引き受けるのではなく、自社ネットワークに最も適した荷物へ経営資源を集中させています。
ヤマトは薄物配送とEC、日本郵便は郵便網を生かした法人物流、佐川はBtoB、西濃は特積み、NXは総合物流。それぞれが異なる強みを磨き、「運ぶ量」ではなく「運び方」で競争する時代が始まっています。
物流の未来を読み解く上で重要なのは、月次の個数の増減ではありません。
その数字の裏で、物流ネットワークがどう再設計されているのか。
そこに、日本の物流の次の姿が映し出されているのです。