日本郵便は8月3日から、国際宅配サービス「UGX(ゆうグローバルエクスプレス)」の新オプションサービスとして「UGXプライム」を開始します。
さらに、今年3月から提供している「UGX越境EC配送サービス」についても、これまでの米国・カナダに加え、
- 英国
- ドイツ
- フランス
- オランダ
- ベルギー
へ対象地域を拡大します。
一見すると、
「国際配送サービスが増えた」
というニュースに見えるかもしれません。
しかし物流の視点で見ると、この発表の意味はもっと大きなところにあります。
日本郵便は、従来の国際郵便に加え、越境EC物流を成長分野として本格的に強化し始めた。
そこが今回の最大のポイントです。
まず「UGX」とは何か
UGX(ゆうグローバルエクスプレス)は、日本郵便が海外の物流事業者と連携して提供する法人向け国際宅配サービスです。
従来のEMSを補完する位置付けで、
- EMSでは対応しにくい大型貨物
- 30kg超の貨物
- Amazon FBA向け納品
- BtoB輸送
- 越境EC
まで対応しています。
つまり、
「郵便」
ではなく、
ロジスティクスサービスとして設計されたサービスです。
今回何が新しくなったのか
今回の発表には大きく2つのポイントがあります。
① UGXプライムの新設
最大の特徴は、
EMSと同等以上の配送スピード
を目指したサービスであることです。
さらに、
- 全国の郵便局から発送可能
- 全国集荷対応
- BtoB・BtoC双方に対応
- 関税元払い(DDP)・着払い(DDU)に対応
- 燃料割増金を別建てで徴収しない料金体系
といった特徴を備えています。
これにより、日本郵便は従来よりも幅広い国際エクスプレス物流のニーズに対応できる体制を整えようとしています。
② 越境EC配送サービスを欧州へ拡大
今年3月に始まったUGX越境EC配送サービスは、
当初は
- 米国
- カナダ
のみが対象でした。
今回、
欧州主要5か国へサービスエリアを拡大しました。
特徴は、
- 個人宛配送専用
- 関税元払い対応
- 置き配対応
- EMSより利用しやすい特約運賃
- API連携による送り状作成
などです。
サービス設計を見ると、
越境EC事業者の利用を強く意識したサービス
であることが分かります。
本当の狙いは「越境EC」
ここが最も重要です。
以前の国際郵便では、
企業同士の書類や貨物が中心でした。
しかし現在、大きく伸びているのは
海外の消費者へ商品を販売する越境EC物流
です。
例えば、
- Amazon
- eBay
- Etsy
- Shopify
などを利用して海外へ販売する日本企業や個人事業者は年々増えています。
そのため物流会社には、
- 通関
- API連携
- 関税元払い
- ラストワンマイル配送
- 返品物流
まで含めたサービスが求められるようになりました。
つまり、
単に荷物を運ぶだけではなく、
ECを支える物流インフラ
としての役割が重要になっています。
EMSとの差別化が進み始めた
今回の発表で注目したいのは、
日本郵便自身がUGXのサービス領域をさらに広げたことです。
UGXプライムは、
EMSと同等以上の配送スピード
を掲げています。
一方、
UGX越境EC配送サービスでは、
EMSとは異なる料金体系やEC向け機能が用意されています。
これは、
EMSだけでは対応しにくい市場ニーズに応えるため、サービスの役割分担が進んでいることを示していると言えるでしょう。
「郵便」から「物流」へ
私は今回、
ここが最も大きな変化だと感じました。
従来の郵便は、
「送る」
ことが中心でした。
しかし現在、企業が求めるのは、
- API連携
- 在庫管理
- Amazon FBA納品
- 関税処理
- 配送状況の可視化
- 返品物流
まで含めた物流サービスです。
配送そのものだけでは、
十分な付加価値になりにくくなっています。
物流全体をどう支えるか。
そこが競争の軸へ変わりつつあります。
なぜ今なのか
背景には、
世界的な越境EC市場の拡大があります。
日本でも、
中小企業や地方企業が海外へ直接販売するケースは増えています。
一方で、
地方では国際エクスプレスサービスの営業拠点まで距離があるケースも少なくありません。
UGXプライムは、
全国約2万4千局の郵便局ネットワークや集荷体制を活用できるため、
地方の事業者にとっても利用しやすい選択肢となる可能性があります。
これは、日本郵便ならではの大きな強みと言えるでしょう。
物流競争は「国内」から「世界」へ
近年、日本郵便は、
- JPトナミグループとの連携強化
- 企業物流の拡充
- 3PL事業の強化
- 国際物流サービスの拡充
などを進めています。
今回のUGX強化も、
その流れの中に位置付けられます。
つまり、
国内宅配だけではなく、
越境物流や国際サプライチェーンまで含めた物流サービスの強化を進めていると見ることができます。
考察後記
私は今回の発表を、「新しい配送サービスが始まった」というニュースではなく、日本郵便が国際物流サービスのあり方を見直し、越境ECへの対応を本格的に強化し始めた象徴だと受け止めました。
UGXプライムは、単にEMSより速い配送を目指すサービスではありません。
UGX越境EC配送サービスも、配送先を増やしただけではありません。
APIによる送り状作成、関税元払い、置き配対応、全国集荷、EC事業者向け料金設計──これらはすべて、越境EC事業者が求める機能です。
そして、この動きは日本郵便だけのものではありません。
世界の物流会社は今、「運ぶ競争」から、「ECを支える物流プラットフォームを提供する競争」へと軸足を移しつつあります。
今回のUGX強化は、日本郵便がその流れを一段と加速させる取り組みとして位置付けられるでしょう。
物流の主役は、もはや単なる「郵便」ではありません。
世界中の消費者へ商品を届ける越境ECサプライチェーンそのものが、新しい物流インフラとして重要性を増しているのです。